宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙

文字の大きさ
183 / 237
第3章 宿敵の家と宿敵でなくなってから

第183話 シアが勝てないたった一人

しおりを挟む
 心地良いまどろみからゆっくりと目を覚まします。太陽の光が差し込むのを感じて、もう朝かと思うと同時に体に鈍い痛みが走りました。けれどそれを感じて真っ先に思ったのは苦しさではなく幸せで。

 ベッドの中でぼーっとしていると、次第に意識が覚醒してきます。どうやら今回もヘッドから起き上がれるまで回復するには時間がかかりそうです。
 怠く、そして特定の体の部分の重さが消えないことに内心で苦笑いしながら天井を見上げます。続けて首だけを動かして横を見れば、私をこんな風にした原因さんがスヤスヤと穏やかな寝息を立てていました。

「ん……」

 まだ夢の中なのか、少しだけ声を出して身じろぎをする最愛の人。昨日はよくもやってくれましたね、と心の中で微笑みながら腕を持ち上げて彼の頬をつつきます。
 仰向けの体勢で腕だけを動かしたので変な風に力を入れてしまい、攣りそうになるのを感じてすぐに止めましたが、ノヴァさんは起きる気配は全くありません。

 その寝顔に愛おしさを感じて、小さく微笑みます。

「本当……ノヴァさんだけですよ。私をこんな風にできるのは」

 正直、この世界でノヴァさん以外に負ける気はしません。ただ彼だけは別。彼相手では私の魔法は一切通じずに負けてしまいますからね。
 けれどまさか夜のベッドの戦いでも手も足も出ずに完敗するとは思っていませんでした。

 昨日の夜の出来事を思い出してしまいます。ノヴァさんは私に比べて体が大きいです。いや、私が少し小柄というのもあるのですが。
 加えて幼いころから一日も欠かさず剣の訓練をした体は引き締まっていて、力強さを感じさせます。さらに体力も無尽蔵。私も最低限の運動はしますが、剣を扱うノヴァさんに抵抗できるだけの力はありません。まあ、抵抗するつもりもないのですが。

 そんなノヴァさんに上から押さえつけられてしまえば、降り注ぐ快楽からは当然逃げられないわけで、こんな風に次の日に満足に動けなくなるくらい愛されてしまうわけです。

「……最初は主導権を持っていたような気がするのですが」

 隣で眠る夫に対して、小声で文句を言います。ノヴァさんはフォルス家の中で将来を期待されていなかったこともあり、そうした教育をあまり受けてこなかったそうです。一方で私はノヴァさん以外とはそういった経験はもちろんありませんが、知識としては持っていました。

 もちろん愛し合う前には念入りに調べたこともあり、最初という事で不慣れなノヴァさんに対して優位に立てていた筈。それが気づいた頃にはこんなことに。昨日なんて最後の方は記憶があまりないというよりも、頭が真っ白で何も考えられませんでしたからね。

 一度だけ朝のベッドの中で不貞腐れて小さく文句を言ったことがあったのですが。

『その……回数を重ねていくにつれてシアの事がよく分かるようになってきたから……というか』

 困ったようにそう言われて、私の方が顔を真っ赤にしてしまいました。ま、まあ体内の魔力が服従している以上、ノヴァさんなら私の事は分かるのかもしれませんし、それはそれで嬉しいから別に今のままでいいと言うか、むしろ今のままの方が幸せというか。

「……全くもうノヴァさんは……仕方ない人ですね」

 なにが仕方ないのかよく分かりませんし、声を出すだけで口角が上がるのが止まらないのですが、細かいことは良いんです。幸せな気持ちで隣で眠る人を見ているだけで良いんですから。

「ん……」

 そんな幸せに浸っていると、先ほどの小さな囁きで起こしてしまったのか、ノヴァさんが小さな声を上げてゆっくりと目を開けました。眠気眼だった彼は次第に覚醒し、腕に力を入れて少しだけ上半身を起こします。鍛えられた肉体が目に入り、昨日の事を少しだけ思い出してしまいました。

「おはようシア」

「おはようございます、ノヴァさん」

 朝の挨拶を交わした後に、ノヴァさんはすぐに心配するような目を向けてくれます。

「だ、大丈夫?」

「えへへ……今日も起き上がるまで時間がかかりそうです」

 苦笑いで返すとノヴァさんは申し訳なさそうな表情を浮かべました。愛し合った次の日は、彼はいつもこんな風に私を心配してくれます。

「しばらくゆっくりしていようか」

 ただ、最初の方は『昨日は激しくしてごめん』みたいなことを言ってくれたのですが、途中からは言わなくなりました。きっと抑えることが出来ないと自分でも気づいたんだと思います。私としては愛し合うのは休日の前日だと二人で決めていますし、こういう風にされて嬉しく感じているので全く問題はありません。むしろ謝られるよりは一緒の時間を過ごすことを提案してくれる方が嬉しいです。

「ノヴァさん、私思ったことがあるのですが」

「ん?」

 ベッドの中でノヴァさんに話しかけます。少なくとも日が登り切るまでは動けないと思うので、それまではこうして話をして時間を過ごすのがいつもの流れになりつつあります。

「フォルスの覇気とアークゲートの魔力の反発がなくなったじゃないですか? 今まで両家が共同で何かをするという事は出来なかったわけですけど、これで出来るようになった、ということで、何かしてみるのもいいかなと思ったりするのですが……」

「確かにそうだね。両家が共同でやったのってレイさんとベルさんの結婚式典の警備くらいだし……ただ具体的に何をやるかは考える必要があるかも……っと」

 不意にノヴァさんは手を伸ばし、私の二の腕付近までかかっていたシーツの端を掴むと、少し引っ張って私の首まで掛けてくれました。小さな気遣いを感じて、どうしても口元が緩んでしまいます。

「ありがとうございます……そうですね……もしなにか思いついたら相談しますね」

「うん、俺もそうするよ」

 二人して笑い合い、その後も他愛ない話は続いていきます。私やノヴァさん自身のこと、ユティやオーラを始めとするアークゲート家の事、あるいはターニャさんやソニアちゃんを始めとするこの屋敷でのこと。

 誰も入ってこない二人だけの夫婦の寝室で、日が高く上り私が動けるようになるまで、私達は幸せな午前の時間を共有しました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語

石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。 本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。 『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。 「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。 カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。 大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...