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第14話 続く嫌がらせ
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「よいしょっと」
移動教室から戻ってきた私は、机を持ち上げて少し斜めになっていた位置を正した。
こういう細かいのが意外と気になる繊細な人間なのよね、私って。……母曰く、大ざっぱな部分の方が多いけれど。
さてさて次の授業の用意はっと。
続々とクラスメートが教室へ戻ってくる中、私は机の中から教科書を取り出してページを開き、軽く予習してみる。
この先生は日付の数字で指名してくれるので、今日は当てられそうなのだ。一応家でも予習はしてきたけれど、私は勉強に関して優秀ではない。なお、どこが優秀なのかと聞くような愚かな事はしない方が身のためだ。
ともかく、私は授業を聞くだけで内容が頭に入るような天才型ではない。予習に復習を重ねてようやく並みとなる類い希なる非凡型なのである。……と、自分を慰める術しかありません。
はあぁぁ。
今まで分からない所はお兄様に教わっていたけれど、これからどうしよう。まさか殿下に教わる訳にもいかないし。誰か先生を紹介していただけたりしないかな。
これからの事を思いやって、うんうん唸っていると。
「きゃあああっ!?」
すぐお隣の席の女子生徒、サンドラ・バルト子爵令嬢から叫び声が上がった。
本日は叫び声がよく聞こえる日だ。一応、お隣に視線をやってみると、ご友人のカトリーヌ様ご一行が駆けつけてきたのが見えた。
「どうなさったの!?」
「きょ、教科書が。わたくしの教科書が!」
目の端に映った教科書だったらしいそれは、今やズタズタに切り裂かれて見る影も無い。一体何の嫌がらせだろうか。まったく酷い事をする人がいるものだ。
「あなた! あなたね、ロザンヌ・ダングルベール!」
「え? わたくしですか?」
サントラ嬢からの怒気を多分に含んだご指名があって、私は視線を彼女に合わせた。
「よくも! あなた、よくもやってくれたわね!」
「一体何の事でしょうか」
「白々しい! これよ!」
ズタボロになった教科書を見せつけてくるが、私はもちろん彼女の教科書に一切手など触れていない。……ええ。教科書にはね。念のためにと机ごと交換したけれど。
「なぜわたくしがこの様な酷い真似をしたとおっしゃるのでしょう」
犯人にされるなどとは悲しいですわと目を半ば伏せると、何だ何だとクラスメートが寄ってきた。
「うわぁ。すげえ、ボロボロにされてるな」
「え? 何? ロザンヌ様が犯人だろって詰め寄っているの?」
「ここまで今日の授業分の教科書を切り裂かれているとなると、誰に見られるか分からない休み時間の合間を縫っての犯行は無理だと思うけど」
「ロザンヌ様は確かにさっきの授業に遅れることなく出席されていました。私は後ろの席だったからよく覚えておりますわ。ロザンヌ様に犯行は不可能です」
彼らの言う通り、短い休み時間の間にできることじゃない。他のクラスにも仲間がいるのだろう。まったく手が込んだことをする。
「でもなぜロザンヌ様を犯人扱いするの? 今朝の事もあるし、むしろロザンヌ様と席を間違えられたのでは?」
「そんなはずありませんわ! わたくしはちゃんと」
サンドラ嬢はそこまで言ってはっと我に返ったらしい。
「ちゃんと何ですか?」
「な、何でもありません!」
疑わしそうに一人の女子生徒が続けたが、サンドラ嬢は話を打ち切きろうとするので、私は彼女に声をかける。
「サンドラ様」
「は、はい!?」
「今朝は場を収めるために、先生にあのような事を申しましたが、わたくしが間違っておりました。今朝のことといい、この教科書のことといい、どうやら看過できない事件だったようです。先生にあらためて犯人捜しをしていただくよう一緒にお願いいたしましょう」
「そ、それは」
サンドラ嬢は恐い顏をしたカトリーヌ嬢をちらっと見ると、すぐに首を振った。
「た、大した事ではないから。わたくしは先生に相談しないわ」
「ですが」
「いいの! この話はここで終わり」
「それではわたくしたちはサンドラのために、隣のクラスの友人に教科書を借りに行きますからこれで失礼するわ」
カトリーヌ嬢の言葉を合図にサンドラ嬢は頷いて立ち上がると、カトリーヌ様ご一行と共に教室を後にした。
私に手を出しても無駄だと言うこと分からせようとしたのだけれど、急ぐあまり刺激し過ぎたかもしれない。でも、うちは教科書を楽々新調できる程の余裕ある経済状態ではないし、理由を話せば両親に心配もされるだろう。何よりも予想される嫌がらせをむざむざと黙って見ているのも癪だった。
……相手もムキにならないといいけど。
私は両腕で頬杖をついて大きくため息をついた。
移動教室から戻ってきた私は、机を持ち上げて少し斜めになっていた位置を正した。
こういう細かいのが意外と気になる繊細な人間なのよね、私って。……母曰く、大ざっぱな部分の方が多いけれど。
さてさて次の授業の用意はっと。
続々とクラスメートが教室へ戻ってくる中、私は机の中から教科書を取り出してページを開き、軽く予習してみる。
この先生は日付の数字で指名してくれるので、今日は当てられそうなのだ。一応家でも予習はしてきたけれど、私は勉強に関して優秀ではない。なお、どこが優秀なのかと聞くような愚かな事はしない方が身のためだ。
ともかく、私は授業を聞くだけで内容が頭に入るような天才型ではない。予習に復習を重ねてようやく並みとなる類い希なる非凡型なのである。……と、自分を慰める術しかありません。
はあぁぁ。
今まで分からない所はお兄様に教わっていたけれど、これからどうしよう。まさか殿下に教わる訳にもいかないし。誰か先生を紹介していただけたりしないかな。
これからの事を思いやって、うんうん唸っていると。
「きゃあああっ!?」
すぐお隣の席の女子生徒、サンドラ・バルト子爵令嬢から叫び声が上がった。
本日は叫び声がよく聞こえる日だ。一応、お隣に視線をやってみると、ご友人のカトリーヌ様ご一行が駆けつけてきたのが見えた。
「どうなさったの!?」
「きょ、教科書が。わたくしの教科書が!」
目の端に映った教科書だったらしいそれは、今やズタズタに切り裂かれて見る影も無い。一体何の嫌がらせだろうか。まったく酷い事をする人がいるものだ。
「あなた! あなたね、ロザンヌ・ダングルベール!」
「え? わたくしですか?」
サントラ嬢からの怒気を多分に含んだご指名があって、私は視線を彼女に合わせた。
「よくも! あなた、よくもやってくれたわね!」
「一体何の事でしょうか」
「白々しい! これよ!」
ズタボロになった教科書を見せつけてくるが、私はもちろん彼女の教科書に一切手など触れていない。……ええ。教科書にはね。念のためにと机ごと交換したけれど。
「なぜわたくしがこの様な酷い真似をしたとおっしゃるのでしょう」
犯人にされるなどとは悲しいですわと目を半ば伏せると、何だ何だとクラスメートが寄ってきた。
「うわぁ。すげえ、ボロボロにされてるな」
「え? 何? ロザンヌ様が犯人だろって詰め寄っているの?」
「ここまで今日の授業分の教科書を切り裂かれているとなると、誰に見られるか分からない休み時間の合間を縫っての犯行は無理だと思うけど」
「ロザンヌ様は確かにさっきの授業に遅れることなく出席されていました。私は後ろの席だったからよく覚えておりますわ。ロザンヌ様に犯行は不可能です」
彼らの言う通り、短い休み時間の間にできることじゃない。他のクラスにも仲間がいるのだろう。まったく手が込んだことをする。
「でもなぜロザンヌ様を犯人扱いするの? 今朝の事もあるし、むしろロザンヌ様と席を間違えられたのでは?」
「そんなはずありませんわ! わたくしはちゃんと」
サンドラ嬢はそこまで言ってはっと我に返ったらしい。
「ちゃんと何ですか?」
「な、何でもありません!」
疑わしそうに一人の女子生徒が続けたが、サンドラ嬢は話を打ち切きろうとするので、私は彼女に声をかける。
「サンドラ様」
「は、はい!?」
「今朝は場を収めるために、先生にあのような事を申しましたが、わたくしが間違っておりました。今朝のことといい、この教科書のことといい、どうやら看過できない事件だったようです。先生にあらためて犯人捜しをしていただくよう一緒にお願いいたしましょう」
「そ、それは」
サンドラ嬢は恐い顏をしたカトリーヌ嬢をちらっと見ると、すぐに首を振った。
「た、大した事ではないから。わたくしは先生に相談しないわ」
「ですが」
「いいの! この話はここで終わり」
「それではわたくしたちはサンドラのために、隣のクラスの友人に教科書を借りに行きますからこれで失礼するわ」
カトリーヌ嬢の言葉を合図にサンドラ嬢は頷いて立ち上がると、カトリーヌ様ご一行と共に教室を後にした。
私に手を出しても無駄だと言うこと分からせようとしたのだけれど、急ぐあまり刺激し過ぎたかもしれない。でも、うちは教科書を楽々新調できる程の余裕ある経済状態ではないし、理由を話せば両親に心配もされるだろう。何よりも予想される嫌がらせをむざむざと黙って見ているのも癪だった。
……相手もムキにならないといいけど。
私は両腕で頬杖をついて大きくため息をついた。
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