つかれやすい殿下のために掃除婦として就くことになりました

樹里

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第25話 真の紳士、ジェラルド・コンスタント

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 授業が終わってクラスメート達に挨拶を告げて門へと向かうと、既にお迎えの馬車が到着していた。
 もちろん王家御用達の馬車だ。今日はこの馬車で自宅へと戻ることになる。
 私の姿を見つけたらしいジェラルドさんは、私の元へやって来た。

「お疲れ様でした、ロザンヌ様。お迎えに上がりました。本日はこのままロザンヌ様のご自宅へと向かいます」
「はい。ありがとうございます」

 これまで町中でお見かけした騎士様方は威圧感しか抱かなかったけれど、ジェラルドさんの雰囲気は柔らかく、話しかけるとちゃんと丁寧に答えてくださる。自宅までの道のりは長いことだし、私は積極的に話しかけることにした。

「失礼ですが、ジェラルド様のお年はおいくつですか」
「今年25歳になりました」
「25歳ですか。お若くして官長様になられたのですね!」
「私の元上司が諸事情で急遽引退されましたので、それで私にお声がかかっただけなのですよ」

 目を輝かせた私に対し、彼はあくまでも謙虚にそう言って笑った。
 けれど冷静沈着であり、質実剛健であり、どこか人を安心させるようなお人柄もあって抜擢されたのは明白だ。

「あの。少し疑問なのですが、護衛官様と街でお見かけする騎士様では違うのですか」
「そうですね。王族の方々をお守りするという意味では同じですが、役割としまして、私どもはすぐお側に控えてお守りする直属の護衛騎士となっております。ロザンヌ様がよくお目にしていた騎士は主に王族の方々が御座します宮殿、時に国を守り、またお出かけになられる際に周りを警戒しながら随行する者となります。もちろんその時、我々もすぐ側でお守りするため同行しております」

 なるほど。つまり簡単に言うと、護衛官は宮殿内で直接王家の方々を守り、一般騎士は宮殿外を守るということになるのかな。
 ……ん? 待って。だとしたら、王家の方々直属の護衛を担うジェラルド様は騎士団長よりも凄いお偉い方ということでは!? そんな凄いお方が私のお側に付いているの!?

 動揺して思わず口にしていたらしい、ジェラルドさんは否定の言葉を口にする。

「いえ。どちらが偉いかと、そういうものではありません。ただ、配属場所が違うといったところでしょうか」
「い、いえ。もう何をおっしゃられたところで十分にお偉い方というのは否定できません。ええ。わたくし、もうお腹いっぱいいっぱいでございます」

 お腹に両手を当てると、ジェラルドさんは一瞬目を見開いた後、すぐに目を細めて微笑まれた。


 終始和やかな雰囲気の中、馬車は自宅に到着した。
 すでに日は沈み、わずかばかりの夕陽の名残りが空を遠い所で照らすのみだ。
 私の到着を受けて、家族と侍女のユリアが玄関先で出迎えてくれた。

「お父様、こちら、エルベルト殿下の直属の護衛官長様、ジェラルド・コンスタント様です」
「それはそれは。本日は娘をお送りいただき、誠にありがとうございました」
「いえ。では確かにロザンヌ様をお送りいたしました。また明日お迎えに上がります」
「あの。今から王宮へお戻りになられるのですか」

 軽く礼を取り、そのまま引き返そうとされるので私は慌てて声をかけた。

「はい。そうです」
「今からお帰りになるだなんて、王宮へ到着する頃には夜半過ぎになってしまいます。それにまた明日のわたくしの登校に合わせて朝早く王宮を出発されるとなると、お休みになられる時間が無くなってしまうではありませんか」
「そうですな。護衛官長様、本日はどうぞ、うちにお泊まりくださいませ」
「ええ。すぐにお部屋の準備をさせます」

 父と母がお引き留めしようとするが、ジェラルドさんはいいえと固辞する。

「お気遣いありがとうございます。ですが、護衛官の長として王宮を留守にするわけには参りませんので」

 そう言われてしまっては、こちらもお引き留めすることはできない。

「では、せめて明日は我が家の馬車で参りますので、お迎えは結構でございます」
「いえ。今はロザンヌ様がご同乗されておりましたので、ゆっくりと馬車を走らせておりましたが、本来は足の速い馬なのです。すぐに到着することでしょう。馬車も王家御用達で作りがしっかりしておりますので、多少飛ばしても問題ありませんのでお気遣いなきよう」

 馬車にとんと手を置きながら説明なさった。
 それにジェラルドさんの一存で決められないことかもしれない。これ以上提案しても、ご迷惑だろうと思い、父とアイコンタクトを取った後、引き下がることにした。

「そうですか。分かりました。それではまた明日よろしくお願いいたします」
「承知いたしました。ロザンヌ様におかれましては、どうぞご自宅でごゆっくりお休みくださいませ。それではまた明日。失礼いたします」

 ご丁寧にご丁寧を重ねた真の紳士なるジェラルドさんはそれだけ残して去って行った。
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