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第118話 実はユリアは
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ああ、そうだわ。
ジェラルドさんばかり情報を引き出して、こちらの情報を出さないのは不公平感がある。まさかジェラルドさんから女性に対して同じ事を聞けるはずもないのだから。
ということで、こちらからもちゃんとお伝えしましょう。
「わたくしの同級生にはご婚約者様がおられる方もいらっしゃるのですが、わたくしにはまだそういったお話は入って来ておりません」
言葉にすると、貰い手がないアピールで痛々しいですね……。
「そうなのですか。ですがロザンヌ様は今年、社交界デビューされたばかりだとお聞きしました。ロザンヌ様は聡明ですし、お可愛らしいですので、お相手にはお困りにならないかと」
「まあ。ジェラルド様はお優しいのですね」
ほろりと来ます。本当に。
「いえいえ。本当の事です」
「ありがとうございます。そう言ってくださるのはジェラルド様だけですわ。――ユリアもね」
そう言ってユリアに視線を移す。
「ユリアもこの通り、無表情で人を近寄らせがたい雰囲気なので恋人もいないのですが、実はユリア」
自分の棚上げはさておき、私は内緒話するようにジェラルドさんの方へと身を乗り出すと口元に笑みを浮かべ、手をかざしてみせた。
「ユリア、とても人嫌いで言葉選びが辛辣で偏屈な所があるのですよ」
「え?」
逆接の後には美辞麗句が並べられると予想されていたジェラルドさんは面食らったようだ。一方、ユリアもなぜかご不満のようで。
「ロザンヌ様、今、何一つ良い所をおっしゃっていませんよね」
思わず口出ししてしまったユリアに、私はにこっと笑ってみせた。
「あら。だったら自分で良い所をジェラルド様にアピールしなさいな」
「――っ!?」
ぐっと息を詰まらせたユリアは見物だ。滅多に見られない彼女の姿だから。
すると。
「ユリアさんは勤勉で情に厚く、心もお美しい方です」
「え?」
顔を見合わせていた私とユリアは、ジェラルドさんの言葉に彼の方へと視線をやった。しかし、ジェラルドさん自身も自分の口から飛び出した言葉に動揺しているようだ。
「心も?」
あら。心と何でしょうか?
「――あ。い、いえ。申し訳ありません。私は何を言っているのでしょうか」
「それは今のお言葉を完全に撤回するということでしょうか」
小悪魔な私はジェラルドさんにあえて尋ねてみた。
「そ、そんなことはありません! 本心です!」
「そうですか」
私はにっこりと笑ってユリアを見た。
「ですってよ、ユリア」
だから何で話を振るのかと、ユリアの顔がわずかに歪む。
何言っているの、振るに決まっているでしょうよ。
「そうおっしゃってくださっているわ、ユリア。良かったわね」
「……はい。あり、がとうございます」
ユリアは少し口ごもりながら礼を述べた。
ふむ。なかなか良い感触ね。
しかし私がいなくなった後で、二人が気まずくなってはいけないので、話を切り替えることにする。
「ところでジェラルド様。お話は変わりますが、クラウディア・ベルモンテ侯爵令嬢様をご存知ですか?」
「ええ。存じ上げております」
「最近、よくお見かけするのですが、頻繁に殿下の執務室にご訪問されているのでしょうか」
「確かにご訪問はありますが、頻繁というほどでもないかと」
あ、そっか。香水の残り香から考えたらそんなに無かったかも。
「そうですか……」
「何かお困りが?」
思い込んだような表情にジェラルドさんはすぐに反応してくれた。
本当はクラウディア嬢の性格を暴露したいところだけれど、陰口みたいで印象は良くないので止めておこう。
「実はですね。クラウディア様がユリアを侍女にとおっしゃったのですが、ユリアはその場で素っ気なく断ったのです。すると、必ず私の元に来ることになるなどと強い口調でおっしゃって、わたくし恐ろしくなりまして」
私は頬に手を当ててため息をついた。
ベルモンテ侯爵家が呪術師として公言しているのかどうかは分からないけれど、少なくとも貴族としての力はある。私が恐ろしいと思っていてもおかしくはないだろう。
「そうでしたか。私は護衛官室から離れられない身ですが、クラウディア様とかち合わないように、護衛につくよう他の騎士に頼みましょうか」
「いえ。全く必要ありません」
ユリアはすっぱりきっぱり断った。
だから言い方よ、ユリア!
「申し訳ございません。ユリアはこの通り、口下手でしょう。ですからクラウディア様に再会した折り、またお怒りを買うのではと余計に心配で」
本当にね。そっちの方が心配なんだからね。
おほほほと私は苦笑いする。
「でも確かにわたくしとしましても、護衛をお願いしたいわけではないのです。ただ、ジェラルド様にも事情を知っていただいていると安心だと考えた次第です」
「そうですか。分かりました。心にしっかりと留めておきます」
「ありがとうございます。ユリアのことをどうぞよろしくお願いいたします」
「承知いたしました」
流れでついユリアをよろしくと言ってしまったけれど、笑顔で快諾してくださったジェラルドさんだった。
ジェラルドさんばかり情報を引き出して、こちらの情報を出さないのは不公平感がある。まさかジェラルドさんから女性に対して同じ事を聞けるはずもないのだから。
ということで、こちらからもちゃんとお伝えしましょう。
「わたくしの同級生にはご婚約者様がおられる方もいらっしゃるのですが、わたくしにはまだそういったお話は入って来ておりません」
言葉にすると、貰い手がないアピールで痛々しいですね……。
「そうなのですか。ですがロザンヌ様は今年、社交界デビューされたばかりだとお聞きしました。ロザンヌ様は聡明ですし、お可愛らしいですので、お相手にはお困りにならないかと」
「まあ。ジェラルド様はお優しいのですね」
ほろりと来ます。本当に。
「いえいえ。本当の事です」
「ありがとうございます。そう言ってくださるのはジェラルド様だけですわ。――ユリアもね」
そう言ってユリアに視線を移す。
「ユリアもこの通り、無表情で人を近寄らせがたい雰囲気なので恋人もいないのですが、実はユリア」
自分の棚上げはさておき、私は内緒話するようにジェラルドさんの方へと身を乗り出すと口元に笑みを浮かべ、手をかざしてみせた。
「ユリア、とても人嫌いで言葉選びが辛辣で偏屈な所があるのですよ」
「え?」
逆接の後には美辞麗句が並べられると予想されていたジェラルドさんは面食らったようだ。一方、ユリアもなぜかご不満のようで。
「ロザンヌ様、今、何一つ良い所をおっしゃっていませんよね」
思わず口出ししてしまったユリアに、私はにこっと笑ってみせた。
「あら。だったら自分で良い所をジェラルド様にアピールしなさいな」
「――っ!?」
ぐっと息を詰まらせたユリアは見物だ。滅多に見られない彼女の姿だから。
すると。
「ユリアさんは勤勉で情に厚く、心もお美しい方です」
「え?」
顔を見合わせていた私とユリアは、ジェラルドさんの言葉に彼の方へと視線をやった。しかし、ジェラルドさん自身も自分の口から飛び出した言葉に動揺しているようだ。
「心も?」
あら。心と何でしょうか?
「――あ。い、いえ。申し訳ありません。私は何を言っているのでしょうか」
「それは今のお言葉を完全に撤回するということでしょうか」
小悪魔な私はジェラルドさんにあえて尋ねてみた。
「そ、そんなことはありません! 本心です!」
「そうですか」
私はにっこりと笑ってユリアを見た。
「ですってよ、ユリア」
だから何で話を振るのかと、ユリアの顔がわずかに歪む。
何言っているの、振るに決まっているでしょうよ。
「そうおっしゃってくださっているわ、ユリア。良かったわね」
「……はい。あり、がとうございます」
ユリアは少し口ごもりながら礼を述べた。
ふむ。なかなか良い感触ね。
しかし私がいなくなった後で、二人が気まずくなってはいけないので、話を切り替えることにする。
「ところでジェラルド様。お話は変わりますが、クラウディア・ベルモンテ侯爵令嬢様をご存知ですか?」
「ええ。存じ上げております」
「最近、よくお見かけするのですが、頻繁に殿下の執務室にご訪問されているのでしょうか」
「確かにご訪問はありますが、頻繁というほどでもないかと」
あ、そっか。香水の残り香から考えたらそんなに無かったかも。
「そうですか……」
「何かお困りが?」
思い込んだような表情にジェラルドさんはすぐに反応してくれた。
本当はクラウディア嬢の性格を暴露したいところだけれど、陰口みたいで印象は良くないので止めておこう。
「実はですね。クラウディア様がユリアを侍女にとおっしゃったのですが、ユリアはその場で素っ気なく断ったのです。すると、必ず私の元に来ることになるなどと強い口調でおっしゃって、わたくし恐ろしくなりまして」
私は頬に手を当ててため息をついた。
ベルモンテ侯爵家が呪術師として公言しているのかどうかは分からないけれど、少なくとも貴族としての力はある。私が恐ろしいと思っていてもおかしくはないだろう。
「そうでしたか。私は護衛官室から離れられない身ですが、クラウディア様とかち合わないように、護衛につくよう他の騎士に頼みましょうか」
「いえ。全く必要ありません」
ユリアはすっぱりきっぱり断った。
だから言い方よ、ユリア!
「申し訳ございません。ユリアはこの通り、口下手でしょう。ですからクラウディア様に再会した折り、またお怒りを買うのではと余計に心配で」
本当にね。そっちの方が心配なんだからね。
おほほほと私は苦笑いする。
「でも確かにわたくしとしましても、護衛をお願いしたいわけではないのです。ただ、ジェラルド様にも事情を知っていただいていると安心だと考えた次第です」
「そうですか。分かりました。心にしっかりと留めておきます」
「ありがとうございます。ユリアのことをどうぞよろしくお願いいたします」
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流れでついユリアをよろしくと言ってしまったけれど、笑顔で快諾してくださったジェラルドさんだった。
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