つかれやすい殿下のために掃除婦として就くことになりました

樹里

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第155話 マリエル嬢と再会

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 両親と別れてダンス会場に足を踏み入れた時には、もう既にダンスパーティーが始まっていた。

 私はマリエル嬢を探しながら歩き回っていると、ダンスホールにふと視線が行く。そこには殿下がご令嬢の手を取ってダンスをしている姿があった。

 どくりと胸が鳴る。

 もちろんこういう場では、殿下がご令嬢のお相手をするのは通例のことなのだろうと思う。それでも咄嗟に目を逸らしてしまう。
 ホールを見ないようにして、平静を装いながらしばらく歩いていると席に座っているマリエル嬢を見つけることができた。

「マリエル様」
「あ。ロザンヌ様!」

 マリエル嬢は笑顔で立ち上がって私を迎えてくれた。
 何だか日常が戻ってきた気がして、ほっとする。

「ロザンヌ様、ご両親はどうされました?」
「お誘いを受けてサロンに行きました」
「そうですか。うちもなのです。ここでお茶しましょうか」
「はい」

 ダンス会場には美味しそうなお菓子やお茶が用意されている。もちろんお菓子は別腹だ。
 ビュッフェスタイルになっているので、食べたいお菓子やお茶を自由に取ることができる。

 一口サイズのお菓子は二十種類以上、お茶も十種類以上はありそうだ。お菓子は全制覇したいところである。ひとまずお皿に上品そうに見える量だけ載せて、複数回通うことにしよう。

「学校でもお話をしますが、やはり王宮での談話は雰囲気が違いますね」
「そうですね。ドキドキしてしまいます」

 私たちは椅子に座るとお菓子とお茶をテーブルに並べる。
 本来ならここで男性とお近づきになれるよう、女性陣は頑張るのだろうけれども、私たちはお茶を楽しむことを一番にしてしまう。

 マリエル様はご婚約者様もいらっしゃることだし。私は……。うん。まあ、まずはお茶を楽しもう。

「皆さん、とても素敵なドレスですね」
「本当ですね」
「……あら。カトリーヌ様がいらっしゃるわ」

 マリエル嬢に言われて視線をやると、華やかに着飾ったカトリーヌ嬢が立って談話している姿が見えた。
 ドレスに負けていない顔立ちとは言え、赤色のドレスでスカートを大きく膨らませており、なかなかのド派手姿だ。他の上級貴族の方に目を付けられないといいけれどもと思う。まあ、そこまで心が狭い方はいらっしゃらないかもしれない。

 関わって来られてはかなわないし、視線を早々に逸らさねば。
 ああ、でも王宮では話しかけて来ないでねとおっしゃっていたぐらいだし、こちらに来ることはな――って、こっちに来ているし!

「あーら。ロザンヌ様。マリエル様。いらっしゃったの」

 ええ。いらっしゃいましたとも。それにしても、近寄るなと言っておいて自ら近付くとは何なのよ。
 私は苦笑いしながら立ち上がった。

「ごきげんよう、カトリーヌ様」
「ご、ごきげんよう」
「ええ。ごきげんよう」

 カトリーヌ嬢はまず遅れて返事をしたマリエル嬢のお姿をじろじろと無遠慮に眺めてみるも、マリエル嬢にはとても似合っていたし、品質も良いと判断したのだろう。特に文句を付けるところはなかったらしい。視線をすっと逸らした。
 次に私に視線を移すとじろじろ眺めるまでもなく、一瞥だけするとふっと唇に笑みを浮かべた。

「まあ。そのドレス姿、とてもお似合いね・・・・・・・・、ロザンヌ様」

 決して派手ではない控えめなドレスが私にぴったりだと皮肉を言いたいらしい。絡まれたらそう言われるだろうと予想していたし、自分もそう思っていたし、今さら腹も立たない。
 カトリーヌ嬢の取り巻きからくすくすと笑いが上がっているのは、ちょっとむかつきますが。言いたい事があるのならば、カトリーヌ嬢のようにはっきり物申せと。

「ありがとうございます。カトリーヌ様も鮮血のような・・・・・・真っ赤なドレスがとてもお似合いですわ」
「何ですって!?」

 噛みついてくるカトリーヌ嬢に周りから何だ何だと視線が集まった。
 私はにっこりと笑う。

「ですから、真っ赤なドレスがお綺麗なカトリーヌ様にはとてもよくお似合いだと申しました」

 すると周りの人間は褒められて何で怒っているんだとカトリーヌ嬢に不審な目が行った。
 それに気付いた彼女は強ばらせていた表情を何とか和らげる。

「あ、あなたと関わると碌な事がないわ。わたくしに話しかけないでちょうだい」

 私はカトリーヌ嬢に一歩たりとも近付いた覚えはありませんがね。

「まあ! わたくしからカトリーヌ様にお声をかけに行くことなど、とんでもないことですわ。だってカトリーヌ様がわたくしに、王宮では話しかけて来ないでとおっしゃったのですもの」

 ほほほと笑うと、カトリーヌ嬢は悔しそうにぐっと言葉を詰まらせて、取り巻きに行くわよ! と声をかけると身を翻して去って行った。

 本当に私のことが大好きよね、彼女……。
 私はまた苦笑しながら息をついた。
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