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第163話 お友達になって
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「あの、マリアンジェラ様。どうして大事なドレスを汚してまでわたくしたちを助けてくださったのですか」
どうしても尋ねずにはいられなかった私はマリアンジェラ様に問いかける。
無視しておいても良かったはずだ。事実、大多数の人は見て見ぬ振り、いや、それどころか面白可笑しく野次馬化していた。
「そうね。以前、散らばったわたくしの私物を拾ってくださったかしら」
「……え?」
私物を拾うのを手伝ったから?
ぽかんとする私に、マリアンジェラ様はくすりと小さく笑う。
「わたくしは公爵家の娘であるせいか、あるいはこの少しつり上がった目のせいで常に不機嫌でいると思われているのか、避けられることが多いのです。ですが、あなた方はわたくしに寄って来てくださってご親切にしていただいたから」
でもそれは普通のことで……。
私は目を瞬かせた。
「それだけでと思われるかもしれませんが、普通に接してくださるということがわたくしにはとても嬉しく、ありがたいことなのです」
マリアンジェラ様もまた人から憧れられるお立場の人だ。けれど、殿下と同じように特別であることがご負担になっていることがあるのだろうか。
「それにね。あなたがお友達を庇って戦うお姿がとても気高く思えたの。わたくしは助けられる力を持っているのになぜ前に出て戦わないのかと、自分を恥じました。ですからこれは自分のためでもあったのですよ」
マリアンジェラ様は少し照れたような微笑みを浮かべた。
本心が半分、私たちに気を遣わせまいと考えた気持ちが半分なのだろう。
「ありがとうございます、マリアンジェラ様」
「ええ」
するとそれまで黙っていたマリエル嬢が暗い表情で口を開いた。
「ロザンヌ様、申し訳ございませんでした。わたくしの失態でしたのに、ロザンヌ様に押しつけるような形になってしまいまして」
「いいの。それこそわたくしが勝手にやったことですから」
「いえ。……本当に申し訳ございません」
「マリエル様、本当にいいのよ。体が勝手に動いてしまっただけですから」
むしろ、私の無謀さがマリエル嬢を追い込むことになってしまったかもしれない。反省すべき点だ。
「でも……」
まだ冴えない表情でいるマリエル嬢に、マリアンジェラ様が、ああそういえばと切り出し。
「あなた方は、ロザンヌ様、マリエル様とおっしゃるのね」
とおっしゃった。
私とマリエル嬢ははっと顔を見合わせると、慌てて礼を取る。
「――っ! し、失礼いたしました。わたくし、ロザンヌ・ダングルベールと申します」
「わ、わたくしはマリエル・ロイドと申します」
「ええ。ロザンヌ様に、マリエル様ね。よろしく」
穏やかに笑みを浮かべるマリアンジェラ様は収拾のつかない私たちのために、わざと話を切り替えてくださったのだと分かった。
「あ、あの。マリアンジェラ様」
マリエル嬢が恐る恐る口を開いた。
「そのドレスですが、染み抜きされないといけないのではありませんか?」
「あ。そ、そうだわ!」
時間が経つと落ちなくなってしまうかもしれない。
「必ずお洗濯の代金はお支払いいたしますので」
マリエル嬢に言われて気付いた。
高級なドレスの染み抜きにはどれくらいお金がかかるのだろう。範囲もクラウディア嬢にかかった染みよりもはるかに大きいし、手間暇かかるに違いない。私たち二人で賄いきれるだろうか。
「そんな事をしていただかなくていいの。わたくしが自分でかけたのですから。あなた方には何の責任もないわ」
「ですが」
さすがに、そういうわけにも。
私とマリエル嬢はまた顔を見合わせた。
「そうね。だったら、一つお願いがあるのですが」
「は、はい。何でしょうか」
「わたくしとお友達になっていただけないでしょうか」
「え?」
マリアンジェラ様は気恥ずかしそうに身を小さくする。
「わたくし、お友達がとても少なく……い、いませんの。ですから、お友達になっていただければと」
「そ、そんな事でしたら、もちろんです」
「は、はい。喜んで」
私たちはそれぞれ大きく頷いた。するとマリアンジェラ様は頬を染めて嬉しそうにふわりと微笑む。
その姿がとてもお可愛らしくて目を離せなかった。気品ある女性というのは、こういう人のことを言うのだろう。殿下と並んでも決して見劣りのしない女性。
「ありがとうございます。とても嬉しいわ」
「こちらこそお近づきになれてとても嬉しいです」
「――あ。ど、どうぞよろしくお願いいたします」
見惚れていた私はマリエル嬢の返答に続いて、慌てて返事をした。
どうしても尋ねずにはいられなかった私はマリアンジェラ様に問いかける。
無視しておいても良かったはずだ。事実、大多数の人は見て見ぬ振り、いや、それどころか面白可笑しく野次馬化していた。
「そうね。以前、散らばったわたくしの私物を拾ってくださったかしら」
「……え?」
私物を拾うのを手伝ったから?
ぽかんとする私に、マリアンジェラ様はくすりと小さく笑う。
「わたくしは公爵家の娘であるせいか、あるいはこの少しつり上がった目のせいで常に不機嫌でいると思われているのか、避けられることが多いのです。ですが、あなた方はわたくしに寄って来てくださってご親切にしていただいたから」
でもそれは普通のことで……。
私は目を瞬かせた。
「それだけでと思われるかもしれませんが、普通に接してくださるということがわたくしにはとても嬉しく、ありがたいことなのです」
マリアンジェラ様もまた人から憧れられるお立場の人だ。けれど、殿下と同じように特別であることがご負担になっていることがあるのだろうか。
「それにね。あなたがお友達を庇って戦うお姿がとても気高く思えたの。わたくしは助けられる力を持っているのになぜ前に出て戦わないのかと、自分を恥じました。ですからこれは自分のためでもあったのですよ」
マリアンジェラ様は少し照れたような微笑みを浮かべた。
本心が半分、私たちに気を遣わせまいと考えた気持ちが半分なのだろう。
「ありがとうございます、マリアンジェラ様」
「ええ」
するとそれまで黙っていたマリエル嬢が暗い表情で口を開いた。
「ロザンヌ様、申し訳ございませんでした。わたくしの失態でしたのに、ロザンヌ様に押しつけるような形になってしまいまして」
「いいの。それこそわたくしが勝手にやったことですから」
「いえ。……本当に申し訳ございません」
「マリエル様、本当にいいのよ。体が勝手に動いてしまっただけですから」
むしろ、私の無謀さがマリエル嬢を追い込むことになってしまったかもしれない。反省すべき点だ。
「でも……」
まだ冴えない表情でいるマリエル嬢に、マリアンジェラ様が、ああそういえばと切り出し。
「あなた方は、ロザンヌ様、マリエル様とおっしゃるのね」
とおっしゃった。
私とマリエル嬢ははっと顔を見合わせると、慌てて礼を取る。
「――っ! し、失礼いたしました。わたくし、ロザンヌ・ダングルベールと申します」
「わ、わたくしはマリエル・ロイドと申します」
「ええ。ロザンヌ様に、マリエル様ね。よろしく」
穏やかに笑みを浮かべるマリアンジェラ様は収拾のつかない私たちのために、わざと話を切り替えてくださったのだと分かった。
「あ、あの。マリアンジェラ様」
マリエル嬢が恐る恐る口を開いた。
「そのドレスですが、染み抜きされないといけないのではありませんか?」
「あ。そ、そうだわ!」
時間が経つと落ちなくなってしまうかもしれない。
「必ずお洗濯の代金はお支払いいたしますので」
マリエル嬢に言われて気付いた。
高級なドレスの染み抜きにはどれくらいお金がかかるのだろう。範囲もクラウディア嬢にかかった染みよりもはるかに大きいし、手間暇かかるに違いない。私たち二人で賄いきれるだろうか。
「そんな事をしていただかなくていいの。わたくしが自分でかけたのですから。あなた方には何の責任もないわ」
「ですが」
さすがに、そういうわけにも。
私とマリエル嬢はまた顔を見合わせた。
「そうね。だったら、一つお願いがあるのですが」
「は、はい。何でしょうか」
「わたくしとお友達になっていただけないでしょうか」
「え?」
マリアンジェラ様は気恥ずかしそうに身を小さくする。
「わたくし、お友達がとても少なく……い、いませんの。ですから、お友達になっていただければと」
「そ、そんな事でしたら、もちろんです」
「は、はい。喜んで」
私たちはそれぞれ大きく頷いた。するとマリアンジェラ様は頬を染めて嬉しそうにふわりと微笑む。
その姿がとてもお可愛らしくて目を離せなかった。気品ある女性というのは、こういう人のことを言うのだろう。殿下と並んでも決して見劣りのしない女性。
「ありがとうございます。とても嬉しいわ」
「こちらこそお近づきになれてとても嬉しいです」
「――あ。ど、どうぞよろしくお願いいたします」
見惚れていた私はマリエル嬢の返答に続いて、慌てて返事をした。
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