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第225話 いつもと変わらぬ日常は安心
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あらためてジェラルドさんにお礼を告げると私たちは馬車へと乗り込んだ。
「ロザンヌ様、お体は大丈夫でしょうか。一昨日は寝込まれる程のお体の不調に気付かず、大変申し訳ございませんでした」
「いえ、とんでもないことでございます。昨日は念の為に一日お休みを取っただけの、ただの……疲労? でしたので。本日はこの通り、もう完全に復活しております」
「そうですか。それならば良かったです」
ジェラルドさんはほっとした様子で微笑まれた。
「こちらこそお気遣いいただき、ありがとうございます」
馬車の中ではいつも私とジェラルドさんの会話がほとんどだが、いつに増してユリアがむっつりと黙り込んでいるような気がする。やっぱりさっきのお話は図星だったかしら。
私が降りた後の帰りは大丈夫だろうか。ジェラルドさんに悪いことをしてしまったかもしれない。それに先ほどの事だけじゃなくて、彼らも二人になるのはあの会話以来なのよね。
大丈夫かな。私が去った後、二人は一体どういう会話をするのだろう。馬車から降りるのが心配だわ。自分のことではないのにもかかわらず、緊張する。
とりあえずユリアにも話を振って少しでも場を和ませておこう。
「ユリアもね」
「はい?」
「ユリアもありがとう。心配とお手間をかけてごめんね。いつもありがとう」
「いいえ」
わずかだが微笑むユリアに私は笑みを返した。
「では行って参ります」
「はい」
「行ってらっしゃいませ」
二人に見送られて私は校舎へと足を進める。少し歩いた所で振り返ると、いつものようにジェラルドさんの手を取って馬車へと乗り込むユリアの姿が見えた。
まあ、ジェラルドさんは公私混同するような方ではないから大丈夫でしょう。さて私は私で頑張ろうっと。
私は踵を返して再び校舎へと向かった。
「あーら、ロザンヌ様。昨日お休みだったから驚きましたわ。あなたがご病気だなんて天変地異でも起こるのかしら?」
うん。カトリーヌ様ったら、本当に私のことが大好きね。教室に入るなり声をかけてくるのだもの。私、まだ席にも着いていませんよ?
「まあ! おはようございます、カトリーヌ様。昨日、わたくしがお休みだったことを気付いてくださったのですね。わたくしは地味なものですから、いなくても気付かれないかと思っておりました」
頬に手を当てて微笑んでみせると、ふんと笑いを鼻で返された。
「地味とかよくおっしゃるわ。減らず口のあなたがいなければ、誰だって気付くでしょうよ。でも、おかげで昨日の教室は何とも平穏無事な一日で快適に過ごせたわよ。ね、皆さん」
カトリーヌ嬢がふふんと笑って髪を背中へと流すと、取り巻きのお友達もその通りですわと答える。
「まあ、そうですか。カトリーヌ様はわたくしがおらず、退屈な一日を過ごされましたか。それはそれは大変申し訳ございませんでした」
「どういう耳をしているのよ!」
「わたくしがいなかったため、お寂しかったとおっしゃりたいのですよね?」
「誰がよ!」
がおぉっと吠えるカトリーヌ嬢に、私はうんうん分かっておりますよと頷いた。
「ちょっと。その態度止めてくださら」
「――あ、そうだわ。ご挨拶が遅くなりましたが、カトリーヌ様」
「な、何よ」
身構えるカトリーヌ嬢に私は軽く礼を取る。
「ご心配いただき、誠にありがとうございます」
「だからっ! あなたのことなんて心配していないと言っているでしょう」
「まあ、ご冗談を。うふふ。カトリーヌ様は本当に照れ屋さんですね」
「あのねー!」
クラスメートも私たちのやり取りにはすっかり慣れたもので、またいつものをやっているよと生暖かい目で見守っている。
それに気付いたカトリーヌ嬢ははっと口を閉ざす。
「あ、あなたに構っているとわたくしまで同類と思われてしまうわ。ではね」
身を翻し、お友達と共にご自分の席に戻った。
考えてみれば、カトリーヌ嬢はいつも私より先に登校している。意外と真面目なんだなぁ。まあ、色々意地悪もされたけれど、本人が反省から私に構おうとしているのならば許すこともやぶさかではないよ、うん。
大人な目で見ていると、それに気付いたようで彼女は何よと言いたげな顔でツンと背ける。
ああぁぁ。
彼女はいつもと変わらぬ態度で落ち着く。落ち着くわー。変わらぬ日常って、こんなにも素敵なものとは……。
感動しながら自分の席に着くと、丁度、教室にマリエル嬢が入って来るのが見えた。
途端にどきりとする。
マリエル嬢が伯爵子息と密会していたことを聞かされて以来だ。
どういう態度を取ればいいのだろうと考えていたら、こちらに気付いたマリエル嬢がやって来て、彼女はいつもと変わらぬ笑顔を見せた。
「ロザンヌ様、おはようございます。お休みになられたので、心配いたしました。もうお体は大丈夫なのですか?」
「……あ、はい。おはようございます、マリエル様。ありがとうございます。もうすっかり」
私もまたいつもと同じように、いや、少々引きつった笑みで返した。
「ロザンヌ様、お体は大丈夫でしょうか。一昨日は寝込まれる程のお体の不調に気付かず、大変申し訳ございませんでした」
「いえ、とんでもないことでございます。昨日は念の為に一日お休みを取っただけの、ただの……疲労? でしたので。本日はこの通り、もう完全に復活しております」
「そうですか。それならば良かったです」
ジェラルドさんはほっとした様子で微笑まれた。
「こちらこそお気遣いいただき、ありがとうございます」
馬車の中ではいつも私とジェラルドさんの会話がほとんどだが、いつに増してユリアがむっつりと黙り込んでいるような気がする。やっぱりさっきのお話は図星だったかしら。
私が降りた後の帰りは大丈夫だろうか。ジェラルドさんに悪いことをしてしまったかもしれない。それに先ほどの事だけじゃなくて、彼らも二人になるのはあの会話以来なのよね。
大丈夫かな。私が去った後、二人は一体どういう会話をするのだろう。馬車から降りるのが心配だわ。自分のことではないのにもかかわらず、緊張する。
とりあえずユリアにも話を振って少しでも場を和ませておこう。
「ユリアもね」
「はい?」
「ユリアもありがとう。心配とお手間をかけてごめんね。いつもありがとう」
「いいえ」
わずかだが微笑むユリアに私は笑みを返した。
「では行って参ります」
「はい」
「行ってらっしゃいませ」
二人に見送られて私は校舎へと足を進める。少し歩いた所で振り返ると、いつものようにジェラルドさんの手を取って馬車へと乗り込むユリアの姿が見えた。
まあ、ジェラルドさんは公私混同するような方ではないから大丈夫でしょう。さて私は私で頑張ろうっと。
私は踵を返して再び校舎へと向かった。
「あーら、ロザンヌ様。昨日お休みだったから驚きましたわ。あなたがご病気だなんて天変地異でも起こるのかしら?」
うん。カトリーヌ様ったら、本当に私のことが大好きね。教室に入るなり声をかけてくるのだもの。私、まだ席にも着いていませんよ?
「まあ! おはようございます、カトリーヌ様。昨日、わたくしがお休みだったことを気付いてくださったのですね。わたくしは地味なものですから、いなくても気付かれないかと思っておりました」
頬に手を当てて微笑んでみせると、ふんと笑いを鼻で返された。
「地味とかよくおっしゃるわ。減らず口のあなたがいなければ、誰だって気付くでしょうよ。でも、おかげで昨日の教室は何とも平穏無事な一日で快適に過ごせたわよ。ね、皆さん」
カトリーヌ嬢がふふんと笑って髪を背中へと流すと、取り巻きのお友達もその通りですわと答える。
「まあ、そうですか。カトリーヌ様はわたくしがおらず、退屈な一日を過ごされましたか。それはそれは大変申し訳ございませんでした」
「どういう耳をしているのよ!」
「わたくしがいなかったため、お寂しかったとおっしゃりたいのですよね?」
「誰がよ!」
がおぉっと吠えるカトリーヌ嬢に、私はうんうん分かっておりますよと頷いた。
「ちょっと。その態度止めてくださら」
「――あ、そうだわ。ご挨拶が遅くなりましたが、カトリーヌ様」
「な、何よ」
身構えるカトリーヌ嬢に私は軽く礼を取る。
「ご心配いただき、誠にありがとうございます」
「だからっ! あなたのことなんて心配していないと言っているでしょう」
「まあ、ご冗談を。うふふ。カトリーヌ様は本当に照れ屋さんですね」
「あのねー!」
クラスメートも私たちのやり取りにはすっかり慣れたもので、またいつものをやっているよと生暖かい目で見守っている。
それに気付いたカトリーヌ嬢ははっと口を閉ざす。
「あ、あなたに構っているとわたくしまで同類と思われてしまうわ。ではね」
身を翻し、お友達と共にご自分の席に戻った。
考えてみれば、カトリーヌ嬢はいつも私より先に登校している。意外と真面目なんだなぁ。まあ、色々意地悪もされたけれど、本人が反省から私に構おうとしているのならば許すこともやぶさかではないよ、うん。
大人な目で見ていると、それに気付いたようで彼女は何よと言いたげな顔でツンと背ける。
ああぁぁ。
彼女はいつもと変わらぬ態度で落ち着く。落ち着くわー。変わらぬ日常って、こんなにも素敵なものとは……。
感動しながら自分の席に着くと、丁度、教室にマリエル嬢が入って来るのが見えた。
途端にどきりとする。
マリエル嬢が伯爵子息と密会していたことを聞かされて以来だ。
どういう態度を取ればいいのだろうと考えていたら、こちらに気付いたマリエル嬢がやって来て、彼女はいつもと変わらぬ笑顔を見せた。
「ロザンヌ様、おはようございます。お休みになられたので、心配いたしました。もうお体は大丈夫なのですか?」
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