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8話
最終話<1>
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希美が寝込んでから数日経ったある日、すっかり風邪の治った希美に聞かれた。
「ところでさ、私たちの写真はどこにやったの?」
今日は僕の家に希美が来ていて、僕はキッチンに立ち、夕食のナス丼を作っていた。
「結婚式の写真も見当たらなかったし、涼くんが持っていったんでしょ?」
希美の話を聞きながら、電子レンジで加熱したナスを包丁で観音開きにするが難しい。
「そうだよ。僕が持っていった。希美に僕の顔を知られない方がいいと思ってね」
「写真返してよ。大事な思い出なんだから。私のスマホとパソコンからも持っていったでしょ?」
隣に立つ希美がちょっと怒った声で言う。
「その話は後にしてくれる?」
料理になれていないので、話し掛けられると困る。
「もう涼くん、不器用ね。貸して」
希美が僕の手から包丁を奪い、手際よくナスを観音開きにする。
「さすが主婦」
「毎日二人分のご飯作っていたからね。次はどうするの?」
僕はフライパンを火にかけ、油を敷く。
「なるほど」と言って、希美が観音開きにしたナスをフライパンに並べる。ナスを焼いている間に、砂糖、醤油、みりん、酒をボウルに入れ、合わせる。
「焼けたらナス取り出していいよ」
「了解」
希美が焼けたナスを皿に取り出す。
空になったフライパンに合わせ調味料を入れると、香ばしい匂いが鼻先を撫でる。
「いい匂い」
希美が笑みを浮かべる。
タレがいい感じに煮詰まると、再び焼いたナスを戻し、タレと絡ませ、火を止める。
あとは炊き立てのホカホカご飯の上にナスを盛り付け、最後に刻んだ小口ネギをかければ出来上がり。
「ナス丼の完成」
二人分のナス丼と、希美が作ったハマグリの味噌汁と自家製の胡瓜で作ったピクルスを卓袱台の上に並べた。
「美味しそう! 涼くんの手料理が食べられるとは思わなかった」
卓袱台の前に腰を下ろした希美が珍しいものを見るような目でナス丼を見る。
「こっちに来てするようになったんだよ。簡単なものしか作らないけど」
「いただきます」
希美と一緒に手を合わせて食事をいただく。
希美が手伝ってくれたので、ナス丼はいつもより上手に出来ていた。味噌汁はハマグリの出汁が美味い。一昨日漬けたキュウリのピクルスは丁度いい塩梅になっている。目の前には愛しい希美がいる。今日は百点満点の夕食だ。
「ナス丼美味しいね」
「だろう。ネットで調べて作るようになったんだ」
「胡瓜のピクルスもいいね」
「胡瓜が沢山取れてさ。そのまま食べるのも飽きたからピクルスにしたんだ」
「庭で胡瓜を育てるなんて、涼くんはスローライフを満喫しているね」
クスッと希美が笑う。
「いいだろう。田舎暮らし。二十四時間営業のスーパーはないが、空気が綺麗だし、庭には自家製の野菜がある。しかも無農薬だ」
「私が悩んでいる間に、涼くんは田舎暮らしを楽しんでいたのね」
「いや、僕だって悩んでいたよ。希美のことが毎日心配だった。胡瓜を育てながら、希美はどうしているか考えていたよ」
クスクスと希美が笑う。
「私のことを考えていたんだ。なんで?」
「なんでって……それは……」
希美を愛しているからだとは、本人を目の前にして言うのは照れくさい。
「なんで?」
意地悪するよう希美が聞いてくる。
「だから、その……好きだからに決まってるだろ」
味噌汁の椀を持ちながら、ゴニョゴニョと小さな声で言うと、希美が満足げに笑った。
「ところでさ、私たちの写真はどこにやったの?」
今日は僕の家に希美が来ていて、僕はキッチンに立ち、夕食のナス丼を作っていた。
「結婚式の写真も見当たらなかったし、涼くんが持っていったんでしょ?」
希美の話を聞きながら、電子レンジで加熱したナスを包丁で観音開きにするが難しい。
「そうだよ。僕が持っていった。希美に僕の顔を知られない方がいいと思ってね」
「写真返してよ。大事な思い出なんだから。私のスマホとパソコンからも持っていったでしょ?」
隣に立つ希美がちょっと怒った声で言う。
「その話は後にしてくれる?」
料理になれていないので、話し掛けられると困る。
「もう涼くん、不器用ね。貸して」
希美が僕の手から包丁を奪い、手際よくナスを観音開きにする。
「さすが主婦」
「毎日二人分のご飯作っていたからね。次はどうするの?」
僕はフライパンを火にかけ、油を敷く。
「なるほど」と言って、希美が観音開きにしたナスをフライパンに並べる。ナスを焼いている間に、砂糖、醤油、みりん、酒をボウルに入れ、合わせる。
「焼けたらナス取り出していいよ」
「了解」
希美が焼けたナスを皿に取り出す。
空になったフライパンに合わせ調味料を入れると、香ばしい匂いが鼻先を撫でる。
「いい匂い」
希美が笑みを浮かべる。
タレがいい感じに煮詰まると、再び焼いたナスを戻し、タレと絡ませ、火を止める。
あとは炊き立てのホカホカご飯の上にナスを盛り付け、最後に刻んだ小口ネギをかければ出来上がり。
「ナス丼の完成」
二人分のナス丼と、希美が作ったハマグリの味噌汁と自家製の胡瓜で作ったピクルスを卓袱台の上に並べた。
「美味しそう! 涼くんの手料理が食べられるとは思わなかった」
卓袱台の前に腰を下ろした希美が珍しいものを見るような目でナス丼を見る。
「こっちに来てするようになったんだよ。簡単なものしか作らないけど」
「いただきます」
希美と一緒に手を合わせて食事をいただく。
希美が手伝ってくれたので、ナス丼はいつもより上手に出来ていた。味噌汁はハマグリの出汁が美味い。一昨日漬けたキュウリのピクルスは丁度いい塩梅になっている。目の前には愛しい希美がいる。今日は百点満点の夕食だ。
「ナス丼美味しいね」
「だろう。ネットで調べて作るようになったんだ」
「胡瓜のピクルスもいいね」
「胡瓜が沢山取れてさ。そのまま食べるのも飽きたからピクルスにしたんだ」
「庭で胡瓜を育てるなんて、涼くんはスローライフを満喫しているね」
クスッと希美が笑う。
「いいだろう。田舎暮らし。二十四時間営業のスーパーはないが、空気が綺麗だし、庭には自家製の野菜がある。しかも無農薬だ」
「私が悩んでいる間に、涼くんは田舎暮らしを楽しんでいたのね」
「いや、僕だって悩んでいたよ。希美のことが毎日心配だった。胡瓜を育てながら、希美はどうしているか考えていたよ」
クスクスと希美が笑う。
「私のことを考えていたんだ。なんで?」
「なんでって……それは……」
希美を愛しているからだとは、本人を目の前にして言うのは照れくさい。
「なんで?」
意地悪するよう希美が聞いてくる。
「だから、その……好きだからに決まってるだろ」
味噌汁の椀を持ちながら、ゴニョゴニョと小さな声で言うと、希美が満足げに笑った。
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