61 / 61
エピローグ
エピローグ<2>
しおりを挟む
手紙を書くことは涼くんと向かい合うことで、最初は涙が溢れ、とても書けなかった。でも、涼くんへの想いを本に遺したかった。涼くんが私の隣で生きていたことをみんなに伝えたかったのかもしれない。だから苦戦しながらも、なんとか頑張って書いた。
涼くんへ
涼くんがそちらへ行って、一年半が経ちますが、お元気ですか?
私は元気で過ごしています。
涼くんと過ごした南房総の家は相変わらず草木が元気で、雑草を取るのが大変ですが、
涼くんのご両親や私の姉も時々、こっちに遊びに来て草取りを手伝ってくれます。
先日、庭先に子猫が遊びに来ました。キジトラで首輪もなく、どこの子かわからなかったので、家で飼うことにしました。名前は【シマ】にしました。縞々模様から名付けました。毎晩、私の布団に入って来て可愛い子です。
このように私はしっかり生活をしているので心配しないで下さい。
それから、涼くんに「ありがとう」を沢山言いたいです。
私と結婚してくれてありがとう。
私と一緒にいてくれてありがとう。
私のわがままを沢山聞いてくれてありがとう。
記憶喪失になった私も好きになってくれてありがとう。
今思うと、記憶喪失になったのは、もう一度涼くんと恋をする為だった気がします。
佐藤さんとして私の目の前に現れた涼くんを自然と好きになりました。きっと私は何度も涼くんに恋すると思います。
パリ旅行楽しかったですね。ルーブル美術館や、ヴェルサイユ宮殿を涼くんと見られて本当に良かった。二度目の結婚式の写真撮影も楽しかった。うちの両親まで来ていたから驚きました。
記憶喪失になった私の為に思い出を作ってくれてありがとう。昔のことはまだ全部は思い出せないけど、写真を見ながら時々思い出すこともあります。例えば、初めて涼くんと出会った時のこととか。
そう言えば、涼くんの方から先に私を好きになったと言っていたけど、実は私の方が先だと思います。
顔を合わせる前は仕事でメールだけのやり取りをしていた私たちですが、涼くんのメールからはいつも私を気遣う優しさが溢れていて、私は涼くんと顔を合わせる前に好きになっていました。だから多分、先に好きになったのは私です。
つまり、顔を見る前から涼くんが好きだったんです。(かなり好きでした)
だから涼くんが私の推しの木村圭さんにちょっと似ているから好きになったと言ったのは照れ隠しです。
ごめんなさい。小さな嘘をつきました。でも、涼くんが私についた嘘に比べれば可愛いものですよね。だから、許して下さい。
というわけで、私は涼くんが大好きです。今もめちゃくちゃ大好きです。
いつか私もそちらに行くので、待っていて下さい。
涼くんと約束した通り、可愛いおばあちゃんになって、私の人生幸せだったよと言える私で会いに行きます。
涼くん、またいつか会いましょう。
倉田希美
ペンを置くと、窓から優しい風が吹いて来る。
なぜか涼くんに頭を撫でてもらった気がする。
「まさかね」
私の独り言に膝の上にいたシマが相槌を打つように「ニャー」と鳴く。
時々、シマは人間みたいだ。
シマを抱き上げて、窓辺に立ち、外を見ると、夏の始まりの青空が見えた。
涼くんと二度目の恋に落ちた夏を思い出す。
今思うと、悩んだことも全部含めて幸せな時間だった。
そう思えたのは、涼くんが私の気持ちを受け止めてくれたからだ。
「涼くん、ありがとう」
空に向かって口にすると、腕の中のシマがまたニャーと鳴いた。
何だか涼くんの代理みたいで、笑みが浮かんだ。
終
―――――――――――――――――――――――――――――
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
もし気に入っていただけたなら『投票』『いいね』などよろしくお願いいたします!
励みになります!
涼くんへ
涼くんがそちらへ行って、一年半が経ちますが、お元気ですか?
私は元気で過ごしています。
涼くんと過ごした南房総の家は相変わらず草木が元気で、雑草を取るのが大変ですが、
涼くんのご両親や私の姉も時々、こっちに遊びに来て草取りを手伝ってくれます。
先日、庭先に子猫が遊びに来ました。キジトラで首輪もなく、どこの子かわからなかったので、家で飼うことにしました。名前は【シマ】にしました。縞々模様から名付けました。毎晩、私の布団に入って来て可愛い子です。
このように私はしっかり生活をしているので心配しないで下さい。
それから、涼くんに「ありがとう」を沢山言いたいです。
私と結婚してくれてありがとう。
私と一緒にいてくれてありがとう。
私のわがままを沢山聞いてくれてありがとう。
記憶喪失になった私も好きになってくれてありがとう。
今思うと、記憶喪失になったのは、もう一度涼くんと恋をする為だった気がします。
佐藤さんとして私の目の前に現れた涼くんを自然と好きになりました。きっと私は何度も涼くんに恋すると思います。
パリ旅行楽しかったですね。ルーブル美術館や、ヴェルサイユ宮殿を涼くんと見られて本当に良かった。二度目の結婚式の写真撮影も楽しかった。うちの両親まで来ていたから驚きました。
記憶喪失になった私の為に思い出を作ってくれてありがとう。昔のことはまだ全部は思い出せないけど、写真を見ながら時々思い出すこともあります。例えば、初めて涼くんと出会った時のこととか。
そう言えば、涼くんの方から先に私を好きになったと言っていたけど、実は私の方が先だと思います。
顔を合わせる前は仕事でメールだけのやり取りをしていた私たちですが、涼くんのメールからはいつも私を気遣う優しさが溢れていて、私は涼くんと顔を合わせる前に好きになっていました。だから多分、先に好きになったのは私です。
つまり、顔を見る前から涼くんが好きだったんです。(かなり好きでした)
だから涼くんが私の推しの木村圭さんにちょっと似ているから好きになったと言ったのは照れ隠しです。
ごめんなさい。小さな嘘をつきました。でも、涼くんが私についた嘘に比べれば可愛いものですよね。だから、許して下さい。
というわけで、私は涼くんが大好きです。今もめちゃくちゃ大好きです。
いつか私もそちらに行くので、待っていて下さい。
涼くんと約束した通り、可愛いおばあちゃんになって、私の人生幸せだったよと言える私で会いに行きます。
涼くん、またいつか会いましょう。
倉田希美
ペンを置くと、窓から優しい風が吹いて来る。
なぜか涼くんに頭を撫でてもらった気がする。
「まさかね」
私の独り言に膝の上にいたシマが相槌を打つように「ニャー」と鳴く。
時々、シマは人間みたいだ。
シマを抱き上げて、窓辺に立ち、外を見ると、夏の始まりの青空が見えた。
涼くんと二度目の恋に落ちた夏を思い出す。
今思うと、悩んだことも全部含めて幸せな時間だった。
そう思えたのは、涼くんが私の気持ちを受け止めてくれたからだ。
「涼くん、ありがとう」
空に向かって口にすると、腕の中のシマがまたニャーと鳴いた。
何だか涼くんの代理みたいで、笑みが浮かんだ。
終
―――――――――――――――――――――――――――――
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
もし気に入っていただけたなら『投票』『いいね』などよろしくお願いいたします!
励みになります!
23
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
秋月の鬼
凪子
キャラ文芸
時は昔。吉野の国の寒村に生まれ育った少女・常盤(ときわ)は、主都・白鴎(はくおう)を目指して旅立つ。領主秋月家では、当主である京次郎が正室を娶るため、国中の娘から身分を問わず花嫁候補を募っていた。
安曇城へたどりついた常盤は、美貌の花魁・夕霧や、高貴な姫君・容花、おきゃんな町娘・春日、おしとやかな令嬢・清子らと出会う。
境遇も立場もさまざまな彼女らは候補者として大部屋に集められ、その日から当主の嫁選びと称する試練が始まった。
ところが、その試練は死者が出るほど苛酷なものだった……。
常盤は試練を乗り越え、領主の正妻の座を掴みとれるのか?
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
自信家CEOは花嫁を略奪する
朝陽ゆりね
恋愛
「あなたとは、一夜限りの関係です」
そのはずだったのに、
そう言ったはずなのに――
私には婚約者がいて、あなたと交際することはできない。
それにあなたは特定の女とはつきあわないのでしょ?
だったら、なぜ?
お願いだからもうかまわないで――
松坂和眞は特定の相手とは交際しないと宣言し、言い寄る女と一時を愉しむ男だ。
だが、経営者としての手腕は世間に広く知られている。
璃桜はそんな和眞に憧れて入社したが、親からもらった自由な時間は3年だった。
そしてその期間が来てしまった。
半年後、親が決めた相手と結婚する。
退職する前日、和眞を誘惑する決意をし、成功するが――
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
君の声を、もう一度
たまごころ
恋愛
東京で働く高瀬悠真は、ある春の日、出張先の海辺の町でかつての恋人・宮川結衣と再会する。
だが結衣は、悠真のことを覚えていなかった。
五年前の事故で過去の記憶を失った彼女と、再び「初めまして」から始まる関係。
忘れられた恋を、もう一度育てていく――そんな男女の再生の物語。
静かでまっすぐな愛が胸を打つ、記憶と時間の恋愛ドラマ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる