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番外編
《17》
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病院の後は雨宮課長と一緒に出社した。課長は宣伝部まで付き添うと言ったけど、一人で大丈夫だと言ってお断りした。さすがにそこまで面倒をみてもらうのは恥ずかしい。子どもじゃないんだから。雨宮課長はちょっと過保護だ。
雨宮課長と別れて、宣伝部に行くと、久保田に鬱陶しいくらいに心配された。
ここにも過保護な人間がいるようだ。
仕事の方は宣伝部のみんなのサポートのおかげで何とかなった。
いつもの調子とまではいかないけど、楽しく仕事は出来た。つくづく私は映画の仕事が好きなんだと実感した。
その週は慌ただしく過ぎて、あっという間に金曜日になった。
桃子との約束があったので、定時で退社して、桃子と銀座のワインバーに飲みに行った。
しっとりとしたピアノの曲がかかるワインバーは桃子のお気に入りで、よく連れて来られたお店だ。
木目が美しいオーク材を使用したカウンター席に腰かけ、私は白ワイン、桃子はワインベースのカクテルのキールで乾杯をした。
料理は彩り冬野菜とチーズのグリル、特製のラザニア、黒毛和牛のロースト、ソーセージの盛り合わせを頼んだ。
お腹が空いていたので、ワインよりも食べる方がすすむ。
そんな私を見て、「奈々子、元気そうじゃない」と桃子が微笑んだ。
復帰したこの一週間はどうだったかと聞かれて、宣伝部では久保田を始め、みんなが仕事をサポートしてくれていたので問題がなかった事を話した。
総務にいた時の人が何人か心配して様子を見に来てくれた事も話した。栗原さんとまりえちゃんと言ったかな。残念ながら二人の事は覚えていないと言ったら、桃子が「私は」と自分の事を人差し指でさす。
「覚えているに決まっているでしょ! 同期なんだから」
「良かった」
桃子がほっとしたように胸に手を当てる。
「本当に記憶喪失ってあるんだね」
しみじみと桃子が言う。
私が記憶喪失になっている事はあまり人に知られたくなかったから、会社では久保田と、桃子と雨宮課長にしか話していない。
「奈々子にとって一番甘い記憶なのにね。もったいない」
一番甘い記憶……? どういう事?
「甘い記憶って何?」
首を傾げて、桃子を見ると、桃子がムフフと笑みを浮かべ、人差し指でツンツン私の腕を突く。
「決まってるでしょ! 恋よ! 雨宮課長と大恋愛をした甘ーい記憶よ」
大恋愛と言われて全く身に覚えがない……。
ぽかんとしていると、桃子が嬉しそうに微笑んだ。
「奈々子、雨宮課長の事が好きで、好きで凄かったんだから」
恋バナに興奮した桃子がバシバシと私の肩を叩く。
頬が熱い。雨宮課長に対して自分がそんなになっていたとは思わなかった。
いや、恋愛話が好物の桃子のことだから、大袈裟に盛っている可能性もある。
だから、落ち着こう。
白ワインに口をつけ、何とか気持ちを静めようとするが、さらに桃子が信じられないことを口にする。
「奈々子が雨宮課長とこっそりエレベーターの中で手を繋いでいるのも見ちゃったし、資料室に行った時は気まずい現場も目撃しちゃった」
「気まずい現場って?」
うふっと桃子が口角を上げる。
「奈々子、雨宮課長に抱きついていたよ。それで、甘えた声で『拓海さん』なんて呼んでて。こっちが赤面したわよ。私が声かけなかったらキスしてたよね」
「嘘でしょ!」
会社でそんな不謹慎なことをしていたなんて信じられない。
「本当だよ」
ニッと桃子が笑みを浮かべた瞬間、羞恥心でいっぱいになる。
エレベーターで手つなぎ、資料室では雨宮課長に抱き着いていたなんて……。しかもキスしそうになっていた!
ひゃー! 恥ずかしい!
それを桃子に見られていたのも恥ずかしいけど、あの雨宮課長とそんなことをしていたと思ったら、カウンターに頭を打ち付けたくなる。
「奈々子、驚きの話はまだあるよ」
カウンターの下で恥ずかしさのあまり両足をバタバタさせていたら、桃子がニヤッと私を見た。
雨宮課長と別れて、宣伝部に行くと、久保田に鬱陶しいくらいに心配された。
ここにも過保護な人間がいるようだ。
仕事の方は宣伝部のみんなのサポートのおかげで何とかなった。
いつもの調子とまではいかないけど、楽しく仕事は出来た。つくづく私は映画の仕事が好きなんだと実感した。
その週は慌ただしく過ぎて、あっという間に金曜日になった。
桃子との約束があったので、定時で退社して、桃子と銀座のワインバーに飲みに行った。
しっとりとしたピアノの曲がかかるワインバーは桃子のお気に入りで、よく連れて来られたお店だ。
木目が美しいオーク材を使用したカウンター席に腰かけ、私は白ワイン、桃子はワインベースのカクテルのキールで乾杯をした。
料理は彩り冬野菜とチーズのグリル、特製のラザニア、黒毛和牛のロースト、ソーセージの盛り合わせを頼んだ。
お腹が空いていたので、ワインよりも食べる方がすすむ。
そんな私を見て、「奈々子、元気そうじゃない」と桃子が微笑んだ。
復帰したこの一週間はどうだったかと聞かれて、宣伝部では久保田を始め、みんなが仕事をサポートしてくれていたので問題がなかった事を話した。
総務にいた時の人が何人か心配して様子を見に来てくれた事も話した。栗原さんとまりえちゃんと言ったかな。残念ながら二人の事は覚えていないと言ったら、桃子が「私は」と自分の事を人差し指でさす。
「覚えているに決まっているでしょ! 同期なんだから」
「良かった」
桃子がほっとしたように胸に手を当てる。
「本当に記憶喪失ってあるんだね」
しみじみと桃子が言う。
私が記憶喪失になっている事はあまり人に知られたくなかったから、会社では久保田と、桃子と雨宮課長にしか話していない。
「奈々子にとって一番甘い記憶なのにね。もったいない」
一番甘い記憶……? どういう事?
「甘い記憶って何?」
首を傾げて、桃子を見ると、桃子がムフフと笑みを浮かべ、人差し指でツンツン私の腕を突く。
「決まってるでしょ! 恋よ! 雨宮課長と大恋愛をした甘ーい記憶よ」
大恋愛と言われて全く身に覚えがない……。
ぽかんとしていると、桃子が嬉しそうに微笑んだ。
「奈々子、雨宮課長の事が好きで、好きで凄かったんだから」
恋バナに興奮した桃子がバシバシと私の肩を叩く。
頬が熱い。雨宮課長に対して自分がそんなになっていたとは思わなかった。
いや、恋愛話が好物の桃子のことだから、大袈裟に盛っている可能性もある。
だから、落ち着こう。
白ワインに口をつけ、何とか気持ちを静めようとするが、さらに桃子が信じられないことを口にする。
「奈々子が雨宮課長とこっそりエレベーターの中で手を繋いでいるのも見ちゃったし、資料室に行った時は気まずい現場も目撃しちゃった」
「気まずい現場って?」
うふっと桃子が口角を上げる。
「奈々子、雨宮課長に抱きついていたよ。それで、甘えた声で『拓海さん』なんて呼んでて。こっちが赤面したわよ。私が声かけなかったらキスしてたよね」
「嘘でしょ!」
会社でそんな不謹慎なことをしていたなんて信じられない。
「本当だよ」
ニッと桃子が笑みを浮かべた瞬間、羞恥心でいっぱいになる。
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ひゃー! 恥ずかしい!
それを桃子に見られていたのも恥ずかしいけど、あの雨宮課長とそんなことをしていたと思ったら、カウンターに頭を打ち付けたくなる。
「奈々子、驚きの話はまだあるよ」
カウンターの下で恥ずかしさのあまり両足をバタバタさせていたら、桃子がニヤッと私を見た。
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