雨宮課長に甘えたい

コハラ

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雨宮課長と仙台出張

《6》

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映画館は温泉街にあった。

「シネマ ポールスター」と二階建てのコンクリートの建物にくすんだ色の赤字で書かれた看板は見るからに昭和感漂う。

上映作品の山田洋次監督、渥美清主演「男はつらいよ」の大きな看板がいい具合に雰囲気を出している。

今、上映中なのは『寅次郎恋愛塾』

興味深いタイトルに思わず視線が留まる。
雨宮課長に片思い中の身として、寅さんがどんな事を教えてくれるのか非常に気になる。

「中島さん、寅さん好きなの?」

寅さんの看板を見つめていたら課長に訊かれた。
寅さんに恋愛を教えてもらいたいと思った事は恥ずかしくて言えない。

「お父さんが好きだったと思って。課長は寅さん見た事あります?」
「あるよ。寅さんみたいに、気の向くままいろんな所に旅してみたいと思うよ。上司の顔色も部下の顔色も伺わずにね」

課長が冗談ぽい感じで言ったから、その冗談に乗るように「すみません。手のかかる部下で」と返すと、笑っていた課長の表情が少しだけ真剣になる。

「中島さんは手のかかる部下じゃないよ。心配になる部下。一人で全部抱え込もうとするから」

先ほどとは違って、課長の声に本当に私を心配してくれているような気配を感じて、嬉しいような、申し訳ないような気がする。

だけど、そんな課長の言葉と向き合うのが何だか照れくさくて、「私、課長に心配されているんですか?」なんて、大げさな感じで驚いてみた。

「甘えるのが下手な子は心配になるんだ」

ポンポンと、小さな子にするみたいにまた、課長に頭を撫でられて、胸がキュンとする。

昨日から課長にときめく事が多くて困る。
仕事で来ているのに、甘い気持ちになってしまう。
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