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佐伯リカコとの約束
《7》
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――つき合えない。
言われた瞬間、大きく心が揺れた。
雨宮課長は今、何を言ったの?
だって私の事、好きだって……。
さっきまで恋人みたいに過ごして……。
「やっぱり私に失望しましたか?」
「違うんだ。そうじゃない。奈々ちゃんの事は好きだ」
「じゃあ、どうして、そんな酷い事言うの?」
『佐伯リカコがくれぐれも例の件はよろしくと言っていました』
成瀬君の言葉を思い出した。
「佐伯リカコですか? 彼女と何か約束したんですか? 雨宮課長、私を通り越して佐伯リカコと映画のフィルムの事で交渉しましたよね?」
「藤原さんから『フラワームーンの願い』のフィルムを佐伯リカコに売ったと聞いたんだ。赤字続きの映画館の経営が苦しくして、手放すかどうか考えていた所に佐伯リカコから話をもらっていたらしい。それで俺は七年ぶりに彼女の携帯にかけた。まさか繋がるとは思わなくて。望月先生にも彼女の秘密を守ってもらうという条件で映画のフィルムを貸してくれるようにお願いした。その時に交換条件を提示された」
「交換条件? 佐伯リカコは課長に何をお願いしたんですか?」
「彼女の恋人のふりをする事だ」
「恋人のふり?」
「彼女は今、妻子ある男と交際しているそうだ。それで写真を撮られて困っていると打ち明けられた」
妻子ある男……。
つまり不倫中って事?
「幸い撮られた写真は男の顔がわかるものじゃなかったし、その男と俺は背格好が似ているらしい」
「だから課長がその男の代わりに佐伯リカコの恋人としてこれから写真を撮られるって事ですか?」
「まあ、そういう事だ。妻子ある男と不倫しているよりも、元夫を恋人にした方がマシらしい。俺は独身だからね」
「だから私とつき合えないと」
課長が悲し気に微笑んだ。
「中島さんを巻き込みたくないんだ。俺と交際していたら、中島さんも記者に追いかけられる事になる。きっと佐伯リカコと俺を取り合っているなんて面白おかしく記事にされるだろう」
「課長は交換条件を飲んだんですか?」
「飲んだよ。ただし12月までと期限をつけて。彼女に12月までに男と別れる事を約束させた。俺は彼女が男と別れるまでのカモフラージュ用の恋人だ」
「どうしてそんな事を? 課長だって記者に追いかけ回される事になるんですよ。ある事ない事、記事にされるんですよ。記事が出たら会社に居づらくなりますよ。いいんですか?」
「仕方ない」
「どうして? 私の為ですか? 私が阿久津に札幌に飛ばされるから」
「男だったら好きな子を守りたくなるんだ」
「課長のバカ。またキザな事言って。勝手に守らないで下さい。私は自分の身ぐらい守れます」
私のせいで課長に無理をさせていると思ったらやるせなくて堪らない。
恋人のふりだなんて。
やっと課長と両想いになれたのに。
「課長が佐伯リカコの恋人になるなんて嫌です。それならまだ札幌に行った方がましです」
課長に抱きしめられる。
「ごめん。奈々ちゃん。12月までだから。それまで俺を待っていて欲しい」
「佐伯リカコの恋人なんて嫌だ」
「奈々ちゃん、いい子だから」
「嫌だ……」
課長にしがみついて泣いた。
12月まででも、課長が他の誰かのものになるのは耐えられない。
言われた瞬間、大きく心が揺れた。
雨宮課長は今、何を言ったの?
だって私の事、好きだって……。
さっきまで恋人みたいに過ごして……。
「やっぱり私に失望しましたか?」
「違うんだ。そうじゃない。奈々ちゃんの事は好きだ」
「じゃあ、どうして、そんな酷い事言うの?」
『佐伯リカコがくれぐれも例の件はよろしくと言っていました』
成瀬君の言葉を思い出した。
「佐伯リカコですか? 彼女と何か約束したんですか? 雨宮課長、私を通り越して佐伯リカコと映画のフィルムの事で交渉しましたよね?」
「藤原さんから『フラワームーンの願い』のフィルムを佐伯リカコに売ったと聞いたんだ。赤字続きの映画館の経営が苦しくして、手放すかどうか考えていた所に佐伯リカコから話をもらっていたらしい。それで俺は七年ぶりに彼女の携帯にかけた。まさか繋がるとは思わなくて。望月先生にも彼女の秘密を守ってもらうという条件で映画のフィルムを貸してくれるようにお願いした。その時に交換条件を提示された」
「交換条件? 佐伯リカコは課長に何をお願いしたんですか?」
「彼女の恋人のふりをする事だ」
「恋人のふり?」
「彼女は今、妻子ある男と交際しているそうだ。それで写真を撮られて困っていると打ち明けられた」
妻子ある男……。
つまり不倫中って事?
「幸い撮られた写真は男の顔がわかるものじゃなかったし、その男と俺は背格好が似ているらしい」
「だから課長がその男の代わりに佐伯リカコの恋人としてこれから写真を撮られるって事ですか?」
「まあ、そういう事だ。妻子ある男と不倫しているよりも、元夫を恋人にした方がマシらしい。俺は独身だからね」
「だから私とつき合えないと」
課長が悲し気に微笑んだ。
「中島さんを巻き込みたくないんだ。俺と交際していたら、中島さんも記者に追いかけられる事になる。きっと佐伯リカコと俺を取り合っているなんて面白おかしく記事にされるだろう」
「課長は交換条件を飲んだんですか?」
「飲んだよ。ただし12月までと期限をつけて。彼女に12月までに男と別れる事を約束させた。俺は彼女が男と別れるまでのカモフラージュ用の恋人だ」
「どうしてそんな事を? 課長だって記者に追いかけ回される事になるんですよ。ある事ない事、記事にされるんですよ。記事が出たら会社に居づらくなりますよ。いいんですか?」
「仕方ない」
「どうして? 私の為ですか? 私が阿久津に札幌に飛ばされるから」
「男だったら好きな子を守りたくなるんだ」
「課長のバカ。またキザな事言って。勝手に守らないで下さい。私は自分の身ぐらい守れます」
私のせいで課長に無理をさせていると思ったらやるせなくて堪らない。
恋人のふりだなんて。
やっと課長と両想いになれたのに。
「課長が佐伯リカコの恋人になるなんて嫌です。それならまだ札幌に行った方がましです」
課長に抱きしめられる。
「ごめん。奈々ちゃん。12月までだから。それまで俺を待っていて欲しい」
「佐伯リカコの恋人なんて嫌だ」
「奈々ちゃん、いい子だから」
「嫌だ……」
課長にしがみついて泣いた。
12月まででも、課長が他の誰かのものになるのは耐えられない。
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