雨宮課長に甘えたい

コハラ

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番外編

《6》

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「私たち、本当に同居しているんですか?」

私の質問に雨宮課長が穏やかな笑みを浮かべる。その表情がすごく優しくて、思わず視線を逸らした。

「うん。一緒に暮らしているよ」
「それは私の住んでいる所が火事とかになって、私が家なき子になったから、雨宮課長と同居する事になったとかですか?」

雨宮課長と一緒に暮らすことになった経緯を考えると、何かトラブルがあって、それで仕方なく同居することになったとしか思えなかった。

眼鏡の奥の瞳が大きく見開き、それからやや低めの声でクスクスと雨宮課長は笑った。

「さすが奈々ちゃん。想像力が豊かだね。なるほど、そういう設定もあるのか」
「そういう設定しか考えられないんです。雨宮課長と同居しているなんて」
「さっきから、同居と言っているが、同居ではなく俺たちはだ」
「同棲……」
「同居と同棲の違いは知っている?」
「えーと、家族とか友達とか、兄弟とかと暮らしている場合は同居で、同棲は……」

恋人と一緒に住む事……。
つまり雨宮課長と私は恋人関係って事だ!

きゃー!
恥ずかし過ぎて布団を頭から被った。

「奈々ちゃん、どうしたの?」

布団越しに雨宮課長の声がする。

「帰って下さい」
「え?」
「いきなり同棲って言われて、はい、そうですか、なんてなると思いますか? 私、雨宮課長に恋愛感情ないですから」

雨宮課長と恋人だなんてありえない。
イケメンで、頼りがいがあって、カッコイイとは思うけど……。

年だって7歳離れているし、課長は女性から人気もあるし、物凄く仕事ができるし、言ってみれば高嶺の花で、そんな高嶺の花が私のような仕事しか取り柄のない女を恋人にするなんて悪い冗談だ。

「やっぱりこれは悪戯なんでしょ? 雨宮課長が私と同棲なんてありえません。それに私、今は仕事の事しか考えられなくて、恋愛している場合じゃないんです。新しい部長がやって来て、宣伝部を引っ張って行かなきゃいけないんです」

今は阿久津部長に認めてもらう事しか頭にない。
今までの部長と違って、阿久津部長とは意見が合わない。だから私はもっと頑張らなきゃいけない。そんな時に恋人の存在は邪魔だ。

「新しい部長って阿久津部長の事?」
「そうです」
「そうか。奈々ちゃんの中では阿久津部長は来たばかりなのか。総務に異動した事は覚えていないんだね」
「総務に異動!」

びっくりして布団から顔を出すと、雨宮課長と目が合う。
思っていたよりも近い距離に雨宮課長の端正な顔があって、心臓が大きく跳ねる。

気まずくて再び布団を被ると、雨宮課長が「亀みたい」とクスクス笑う。

亀だなんて……。

笑われているのが恥ずかい。頬にどんどん熱が集まってくる。
きっと赤面している。こんな顔、雨宮課長にさらしたら、今度はゆでダコだとからかわれるに決まっている。絶対に布団から顔を出すもんか。
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