36 / 88
もう一度、やり直したいんです
36
しおりを挟む
若佐先生が出て行った後も泣いていた私だったが、昼近くになってようやくベッドから出た。
このまま泣いていても何も変わらない。そもそも若佐先生に会うまでは、何をされても怒らず、泣かないと決めていた。
それにも関わらず、みっともなく泣いて、若佐先生を困らせてしまった。これではただ若佐先生を困らせる為だけに、ここまで来たようなものだった。
何も意味が無い。それなら若佐先生の言う通り、日本に帰った方がいい。
昨日若佐先生に脱がされて、ベッド近くに落ちていた上着を拾うと、何も身につけていない剝き出しの肩に掛ける。身体はまだズキズキと痛むが、これくらい、職場でパワーハラスメントを受けていた頃に比べたら、なんとも無い。
ベッドルームを出ると、その足でキッチンに向かい、コップを借りてウォーターサーバーから水を貰う。朝からずっと泣いて、口の中がカラカラに乾いていた事もあり、冷たい水が喉に染み入った。
ふと顔を上げてリビングルームを見渡すと、出会った頃と同じ様に、衣服や本でテーブルやソファー、床の上も散らかっていたのだった。
(先生ったら……)
苦笑すると、お腹が小さく音を立てる。そういえば、昨日の昼から何も食べていなかった。
シャワーの前に軽く何か食べようと、冷蔵庫を開けるが、大きな冷蔵庫の中には栄養ゼリーらしきパック飲料と缶ビールが数本のみ。ついでに冷凍庫も空けてみるが、氷しか入っていなかった。
これではとても空腹を満たせそうにない。
(まさか調味料の類いも入っていないなんて……)
食に興味が無いと聞いていたが、まさかここまで何も入っていないとは思わなかった。この三年間、どうやって生活をしてきたんだろう……。
(シャワーを浴びたら、買い物に行こう)
その前にスマートフォンを充電させてもらおうと、ベッドルームのコンセントに日本から持参した充電器を指すと、スマートフォンに繋げる。すると、昨日の不在着信が画面に表示されたのだった。
(そうだった。昨日確認しようとして、そのままだった……)
不在着信の相手は、若佐先生だった。昨日のメッセージといい、やはり若佐先生は私がこっちに来ている事に気付いていたのだろう。そうじゃなければ、こんな行動、若佐先生らしくない。
(そういえば、私がこっちに来ている事を、お母さん達に聞いたって言ってたような……。聞けたら後で聞いてみよう)
とりあえずはシャワーを浴びて、何か食べる物を買いに行こうと、私はスマートフォンを置くと、スーツケースから着替えを取り出したのだった。
このまま泣いていても何も変わらない。そもそも若佐先生に会うまでは、何をされても怒らず、泣かないと決めていた。
それにも関わらず、みっともなく泣いて、若佐先生を困らせてしまった。これではただ若佐先生を困らせる為だけに、ここまで来たようなものだった。
何も意味が無い。それなら若佐先生の言う通り、日本に帰った方がいい。
昨日若佐先生に脱がされて、ベッド近くに落ちていた上着を拾うと、何も身につけていない剝き出しの肩に掛ける。身体はまだズキズキと痛むが、これくらい、職場でパワーハラスメントを受けていた頃に比べたら、なんとも無い。
ベッドルームを出ると、その足でキッチンに向かい、コップを借りてウォーターサーバーから水を貰う。朝からずっと泣いて、口の中がカラカラに乾いていた事もあり、冷たい水が喉に染み入った。
ふと顔を上げてリビングルームを見渡すと、出会った頃と同じ様に、衣服や本でテーブルやソファー、床の上も散らかっていたのだった。
(先生ったら……)
苦笑すると、お腹が小さく音を立てる。そういえば、昨日の昼から何も食べていなかった。
シャワーの前に軽く何か食べようと、冷蔵庫を開けるが、大きな冷蔵庫の中には栄養ゼリーらしきパック飲料と缶ビールが数本のみ。ついでに冷凍庫も空けてみるが、氷しか入っていなかった。
これではとても空腹を満たせそうにない。
(まさか調味料の類いも入っていないなんて……)
食に興味が無いと聞いていたが、まさかここまで何も入っていないとは思わなかった。この三年間、どうやって生活をしてきたんだろう……。
(シャワーを浴びたら、買い物に行こう)
その前にスマートフォンを充電させてもらおうと、ベッドルームのコンセントに日本から持参した充電器を指すと、スマートフォンに繋げる。すると、昨日の不在着信が画面に表示されたのだった。
(そうだった。昨日確認しようとして、そのままだった……)
不在着信の相手は、若佐先生だった。昨日のメッセージといい、やはり若佐先生は私がこっちに来ている事に気付いていたのだろう。そうじゃなければ、こんな行動、若佐先生らしくない。
(そういえば、私がこっちに来ている事を、お母さん達に聞いたって言ってたような……。聞けたら後で聞いてみよう)
とりあえずはシャワーを浴びて、何か食べる物を買いに行こうと、私はスマートフォンを置くと、スーツケースから着替えを取り出したのだった。
11
あなたにおすすめの小説
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる