58 / 88
初デートinニューヨーク
58
しおりを挟む
「俺は今まで女性と付き合ったどころか、子供の頃から友達もあまりいないんだ。だから……どう受け答えをしたらいいのか分からなかった」
「でもさっき、弁護士や事務所人達について聞いた時は、きちんと話していましたよね……?」
「自分にとって得意な事は話せる。仕事や法律関係の話、自分の事も。でもそれ以外は全く分からないんだ。何を話せばいいのかさっぱりなんだ……」
いつになく肩を落とす楓さんに私は呆気に取られてしまう。
「じゃあ、会話が続かなかったのは、私がうるさかったからではなく……」
「何を話し、どう返したらいいのか分からなかったんだ。不安にさせていたのなら、すまない……」
何か言わなければと思いながらも、ようやく出てきた言葉は「いえ……」のたった二文字だけだった。
「でもこれで安心出来ます。私は楓さんにとって、うるさくて、迷惑な存在じゃなかったって」
「小春を迷惑と思った事は一度も無い。話もずっと聞いていたいくらいだ」
「本当ですか?」
「俺は口下手だから、上手い受け答えは出来ないかもしれないが、小春の話は聞いていて面白いし、俺が知らない話や興味の無い話もしてくれるからためになる。もう少し聞かせてくれないか。そうだな……例えば、俺が居ない間、日本では何をしていたか、何があったのか」
「そうですね……。そうだ! 私、パートを始めたんです。家にずっと居ても退屈で、時間が余ってしまったので……」
「何のパートを始めたんだ。まさか、怪しい仕事じゃないよな……」
顔を青くしていたので、私は首を振って否定する。
「怪しい仕事じゃないです。家の近くのスーパーです。でも近々辞めようと思っています。前の職場で崩していた体調も完治したので、どこかに就職しようかと考えています」
「本当に体調はもう大丈夫なのか……?」
「大丈夫です。仕事を辞めて、ゆっくり休みました。それに弁護士としてお仕事をされている楓さんを見ていると、私も働きたくなるんです」
「俺が?」
「触発されていると言えばいいのでしょうか……。書店に入社したばかりの頃を思い出して、身体を動かしたくなるんです。あちこち動いて、くたくたに疲れて帰宅して、今日も働いたって実感したくなります」
「そうか……。とにかく、元気になったのなら良かった。体調が悪いと聞いていたのに、日本から遠いこっちに来たから、無理をしたんじゃないかと心配したんだ」
「心配してくれたんですか?」
「それはまあ……。一人の人間として、小春の夫として、心配くらいはするだろう」
楓さんは安心したのか、またピザを食べ始める。
(なんだろう……。すっごく嬉しい)
楓さんに「心配くらいはするだろう」と言われて、胸の中が温かくなる。私もフォークを動かすと、またサラダを食べ始めたのだった。
「でもさっき、弁護士や事務所人達について聞いた時は、きちんと話していましたよね……?」
「自分にとって得意な事は話せる。仕事や法律関係の話、自分の事も。でもそれ以外は全く分からないんだ。何を話せばいいのかさっぱりなんだ……」
いつになく肩を落とす楓さんに私は呆気に取られてしまう。
「じゃあ、会話が続かなかったのは、私がうるさかったからではなく……」
「何を話し、どう返したらいいのか分からなかったんだ。不安にさせていたのなら、すまない……」
何か言わなければと思いながらも、ようやく出てきた言葉は「いえ……」のたった二文字だけだった。
「でもこれで安心出来ます。私は楓さんにとって、うるさくて、迷惑な存在じゃなかったって」
「小春を迷惑と思った事は一度も無い。話もずっと聞いていたいくらいだ」
「本当ですか?」
「俺は口下手だから、上手い受け答えは出来ないかもしれないが、小春の話は聞いていて面白いし、俺が知らない話や興味の無い話もしてくれるからためになる。もう少し聞かせてくれないか。そうだな……例えば、俺が居ない間、日本では何をしていたか、何があったのか」
「そうですね……。そうだ! 私、パートを始めたんです。家にずっと居ても退屈で、時間が余ってしまったので……」
「何のパートを始めたんだ。まさか、怪しい仕事じゃないよな……」
顔を青くしていたので、私は首を振って否定する。
「怪しい仕事じゃないです。家の近くのスーパーです。でも近々辞めようと思っています。前の職場で崩していた体調も完治したので、どこかに就職しようかと考えています」
「本当に体調はもう大丈夫なのか……?」
「大丈夫です。仕事を辞めて、ゆっくり休みました。それに弁護士としてお仕事をされている楓さんを見ていると、私も働きたくなるんです」
「俺が?」
「触発されていると言えばいいのでしょうか……。書店に入社したばかりの頃を思い出して、身体を動かしたくなるんです。あちこち動いて、くたくたに疲れて帰宅して、今日も働いたって実感したくなります」
「そうか……。とにかく、元気になったのなら良かった。体調が悪いと聞いていたのに、日本から遠いこっちに来たから、無理をしたんじゃないかと心配したんだ」
「心配してくれたんですか?」
「それはまあ……。一人の人間として、小春の夫として、心配くらいはするだろう」
楓さんは安心したのか、またピザを食べ始める。
(なんだろう……。すっごく嬉しい)
楓さんに「心配くらいはするだろう」と言われて、胸の中が温かくなる。私もフォークを動かすと、またサラダを食べ始めたのだった。
11
あなたにおすすめの小説
ホストと女医は診察室で
星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
【完結】京都若旦那の恋愛事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
藍生蕗
恋愛
大学二年生、二十歳の千田 史織は内気な性格を直したくて京都へと一人旅を決行。そこで見舞われたアクシデントで出会った男性に感銘を受け、改めて変わりたいと奮起する。
それから四年後、従姉のお見合い相手に探りを入れて欲しいと頼まれて再び京都へ。
訳あり跡取り息子と、少し惚けた箱入り娘のすれ違い恋物語
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる