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まだ伝えていない言葉があるんだ!【楓視点】
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全てを読み終えた時、頭の中が真っ白になった。
だがすぐに我に帰ると、スマートフォンと財布を掴み、上着を引っ掴んだ。マンションのエレベーターに着くが、待ちきれずに上着を着ながら階段を駆け降りる。スマートフォンを操作して小春のスマートフォンに電話を掛けるが、電源が入っていないか、電波が届かないところにいるという無機質な音声案内のアナウンスが繰り返されるだけだった。
「……っ!小春……!」
一階に着いてマンションから飛び出すと、悠長にバスを待っていられず、近くを走るタクシーを捕まえる。目の前でタクシーが停まるなり、俺は乱暴に扉を開けるとタクシーに乗り込んだのだった。
「空港! 急いでくれ!」
日本に帰るとメモに書いた以上、小春は空港に向かったはずだ。早くしなければ、日本行きの飛行機に乗ってしまう。そうなれば、もう取り返しがつかない。日本に帰った小春はすぐに俺が送った離婚届を出してしまうだろう。
「どの空港に行きますか?」
年配の男性運転手はこっちの気も知らずにのんびりと聞いてくる。
「そうだな……」
その言葉に俺は考え込む。ニューヨークには幾つか空港があるが、日本への直通便が出ている空港は二箇所しかない。その内のどちらに小春は向かったのだろう。
(ここで間違えたら、もう追いつくのは絶望的だ……)
日本への直通便が出ている空港は離れているので、もし空港を間違えた場合、そこから戻るのに時間が掛かってしまう。その間に日本行きの飛行機が出てしまうなら、きっと小春はそれに乗って日本に帰ってしまうだろう。
間違えられない選択。俺は少し考えた後にとある空港の名前を告げたのだった。
(頼む。間に合ってくれ――!)
のろのろと呑気にタクシーが走っている間も何度か小春に電話を掛けるが、同じアナウンスの繰り返しだった。諦めてタクシーの運転手にもっと急ぐ様に指示を出すと、タクシーの後部座席に深々と座り、ただ両手を握り合わせて、早く空港に着くようにじっと祈る事しか出来なかった。
(こんな事になるなら、昨夜の内に言っておくべきだった)
これからはずっと一緒に居られると思っていた。ようやく小春に向き合い、本当の気持ちを告げられた。
自分には小春の存在が必要なのだと、小春が居るから自分は弁護士を続けられるのだと。
小春と出会った頃、俺は失敗ばかりしていた。弁護士になり、仕事も与えられるようになった。でも実際は失敗ばかりで、とても弁護士とは言えなかった。自分は弁護士に向いていないんじゃないか、他の仕事を探した方がいいんじゃないか。そんな事を考えている時に小春に出会った。
小春の裁判を担当して敗訴した事で、初めて悔しいと思った。これまでは自分の力不足や相手が悪かったとどこか諦めている自分がいた。それが小春の裁判をきっかけに、更に成長したいと思えた。
現状に満足しないで、もっと弁護士として成長して、多くの人を救いたい。その為にも、独立している場合では無かった。もっと経験を積んで、どんな依頼にでも答えられる弁護士になりたかった。それでニューヨークにやって来た。まずは悔しい思いをした小春の裁判を踏まえて、労働問題に関する裁判を学んだ。今度こそ依頼人を助けられるように、小春を――愛する人を助けられるように。
(どうして君は俺が欲しい言葉を先に言って、俺がしようと思っていた事を先にしてしまうんだ)
もう一度やり直したいと、好きだと、愛していると、常に小春は俺が言いたい言葉と、その言葉の先を言ってしまう。
それが嬉しい反面、先に言わせてしまったという悔しさがある。今度こそは先に言おうと思っていたら、とうとう離婚しようと言われてしまった。
あまりにも情けない、でも、この情けなさが俺らしいかもしれない。
(やっぱり、俺には小春が必要だ)
こんな情けない俺には小春の存在が必要不可欠だ。失敗ばかりして心が挫けそうになったり、道に迷ったりした時に導いてくれる春の光の様な存在。
小春の存在が――。
だがすぐに我に帰ると、スマートフォンと財布を掴み、上着を引っ掴んだ。マンションのエレベーターに着くが、待ちきれずに上着を着ながら階段を駆け降りる。スマートフォンを操作して小春のスマートフォンに電話を掛けるが、電源が入っていないか、電波が届かないところにいるという無機質な音声案内のアナウンスが繰り返されるだけだった。
「……っ!小春……!」
一階に着いてマンションから飛び出すと、悠長にバスを待っていられず、近くを走るタクシーを捕まえる。目の前でタクシーが停まるなり、俺は乱暴に扉を開けるとタクシーに乗り込んだのだった。
「空港! 急いでくれ!」
日本に帰るとメモに書いた以上、小春は空港に向かったはずだ。早くしなければ、日本行きの飛行機に乗ってしまう。そうなれば、もう取り返しがつかない。日本に帰った小春はすぐに俺が送った離婚届を出してしまうだろう。
「どの空港に行きますか?」
年配の男性運転手はこっちの気も知らずにのんびりと聞いてくる。
「そうだな……」
その言葉に俺は考え込む。ニューヨークには幾つか空港があるが、日本への直通便が出ている空港は二箇所しかない。その内のどちらに小春は向かったのだろう。
(ここで間違えたら、もう追いつくのは絶望的だ……)
日本への直通便が出ている空港は離れているので、もし空港を間違えた場合、そこから戻るのに時間が掛かってしまう。その間に日本行きの飛行機が出てしまうなら、きっと小春はそれに乗って日本に帰ってしまうだろう。
間違えられない選択。俺は少し考えた後にとある空港の名前を告げたのだった。
(頼む。間に合ってくれ――!)
のろのろと呑気にタクシーが走っている間も何度か小春に電話を掛けるが、同じアナウンスの繰り返しだった。諦めてタクシーの運転手にもっと急ぐ様に指示を出すと、タクシーの後部座席に深々と座り、ただ両手を握り合わせて、早く空港に着くようにじっと祈る事しか出来なかった。
(こんな事になるなら、昨夜の内に言っておくべきだった)
これからはずっと一緒に居られると思っていた。ようやく小春に向き合い、本当の気持ちを告げられた。
自分には小春の存在が必要なのだと、小春が居るから自分は弁護士を続けられるのだと。
小春と出会った頃、俺は失敗ばかりしていた。弁護士になり、仕事も与えられるようになった。でも実際は失敗ばかりで、とても弁護士とは言えなかった。自分は弁護士に向いていないんじゃないか、他の仕事を探した方がいいんじゃないか。そんな事を考えている時に小春に出会った。
小春の裁判を担当して敗訴した事で、初めて悔しいと思った。これまでは自分の力不足や相手が悪かったとどこか諦めている自分がいた。それが小春の裁判をきっかけに、更に成長したいと思えた。
現状に満足しないで、もっと弁護士として成長して、多くの人を救いたい。その為にも、独立している場合では無かった。もっと経験を積んで、どんな依頼にでも答えられる弁護士になりたかった。それでニューヨークにやって来た。まずは悔しい思いをした小春の裁判を踏まえて、労働問題に関する裁判を学んだ。今度こそ依頼人を助けられるように、小春を――愛する人を助けられるように。
(どうして君は俺が欲しい言葉を先に言って、俺がしようと思っていた事を先にしてしまうんだ)
もう一度やり直したいと、好きだと、愛していると、常に小春は俺が言いたい言葉と、その言葉の先を言ってしまう。
それが嬉しい反面、先に言わせてしまったという悔しさがある。今度こそは先に言おうと思っていたら、とうとう離婚しようと言われてしまった。
あまりにも情けない、でも、この情けなさが俺らしいかもしれない。
(やっぱり、俺には小春が必要だ)
こんな情けない俺には小春の存在が必要不可欠だ。失敗ばかりして心が挫けそうになったり、道に迷ったりした時に導いてくれる春の光の様な存在。
小春の存在が――。
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