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まだ伝えていない言葉があるんだ!【楓視点】
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ようやくタクシーは空港に着くが、支払いが非常にもどかしく感じられて苛立ちを隠しきれなくなる。ずっと急かしていたからか、タクシーの運転手は不機嫌そうだったが、そんな事を気にしている余裕はなかった。
支払いを終えてタクシーを飛び降り、空港を出入りする人を掻き分けて中に入ると、すぐに飛行機の発着時刻を知らせる電光掲示板に駆け寄る。ざっと見ると色を失ったのだった。
(日本行きの飛行機がもうすぐ搭乗開始してしまう……!)
搭乗してしまったら、今度こそ終わりだ。もう小春に追いつく事は出来ない。
日本行きの飛行機の搭乗口を確認すると、空港内を走り出す。
「小春……っ!」
行かないでくれ、置いて行かないでくれ、一人にしないでくれ。これからはもっと君を愛するから、夫として相応しい男になるから、離婚しないでくれ、いなくならないでくれ、俺の前から消えないでくれ、側にいてくれ――。
「小春! 小春ー!」
叫んでいる間も何人もの人とぶつかり、その内の数人が小さく悲鳴を上げ、怒鳴っている者もいた。周囲の人達も怪訝な目で見てくるが、そんな事を気にしている余裕はなかった。日系人と思しき人がいれば片っ端から確認して、小春じゃないと分かると、すぐに走り出した。
「小春っ……! こはるっ!」
ずっと声を張り上げていたので、息が上がってしまう。こんなに大声を出したのは初めて小春と出会った日以来だろうか。身体中が汗でべたついて気持ち悪い。眼鏡がずり落ちてきたので、片手で掴んで外してしまう。
ここまで何かに必死になった事はこれまでなかった。一人の人を愛して、求めた事も――。
「小春ー!」
その時、搭乗開始を知らせるアナウンスが空港内に響き渡った。とうとう時間になってしまったのかと身構えたが、国内線の案内と分かり、安堵の息を吐く。
「小春! 小春……! 返事をしてくれっ!」
――まだ君に、伝えていない言葉があるんだ!
エスカレーターを駆け上り、日本行き飛行機の搭乗口近くの椅子を見て回っていた時、吸い寄せられる様に、とある一点を見つめると、じっと固まってしまう。
深呼吸を繰り返して、駆け出したい気持ちを押さると、靴音を立てながらゆっくり近づいて行く。
ようやく、目的の人物を見つけたのだった――。
支払いを終えてタクシーを飛び降り、空港を出入りする人を掻き分けて中に入ると、すぐに飛行機の発着時刻を知らせる電光掲示板に駆け寄る。ざっと見ると色を失ったのだった。
(日本行きの飛行機がもうすぐ搭乗開始してしまう……!)
搭乗してしまったら、今度こそ終わりだ。もう小春に追いつく事は出来ない。
日本行きの飛行機の搭乗口を確認すると、空港内を走り出す。
「小春……っ!」
行かないでくれ、置いて行かないでくれ、一人にしないでくれ。これからはもっと君を愛するから、夫として相応しい男になるから、離婚しないでくれ、いなくならないでくれ、俺の前から消えないでくれ、側にいてくれ――。
「小春! 小春ー!」
叫んでいる間も何人もの人とぶつかり、その内の数人が小さく悲鳴を上げ、怒鳴っている者もいた。周囲の人達も怪訝な目で見てくるが、そんな事を気にしている余裕はなかった。日系人と思しき人がいれば片っ端から確認して、小春じゃないと分かると、すぐに走り出した。
「小春っ……! こはるっ!」
ずっと声を張り上げていたので、息が上がってしまう。こんなに大声を出したのは初めて小春と出会った日以来だろうか。身体中が汗でべたついて気持ち悪い。眼鏡がずり落ちてきたので、片手で掴んで外してしまう。
ここまで何かに必死になった事はこれまでなかった。一人の人を愛して、求めた事も――。
「小春ー!」
その時、搭乗開始を知らせるアナウンスが空港内に響き渡った。とうとう時間になってしまったのかと身構えたが、国内線の案内と分かり、安堵の息を吐く。
「小春! 小春……! 返事をしてくれっ!」
――まだ君に、伝えていない言葉があるんだ!
エスカレーターを駆け上り、日本行き飛行機の搭乗口近くの椅子を見て回っていた時、吸い寄せられる様に、とある一点を見つめると、じっと固まってしまう。
深呼吸を繰り返して、駆け出したい気持ちを押さると、靴音を立てながらゆっくり近づいて行く。
ようやく、目的の人物を見つけたのだった――。
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