後宮一の美姫と呼ばれても、わたくしの想い人は皇帝陛下じゃない

ちゃっぷ

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第十章 その後の小話

第四十五話

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 それから何年も、何年も時が過ぎた。

 ポウザンはミン様が皇帝となられたのと変わらぬ年頃となっていた。

 すると時期を窺っていたミン様は、いよいよ皇帝の座を退き、ポウザンに皇帝の座を譲ると宣言した。

 わたくしとポウザンは事前に話を伺っていたので驚きはなかったけれど、役人たちは未だになくならない後宮を廃するかもしれないという可能性に怯えきっていた。

 皇帝の席にポウザンが座すると、彼には多くの妃候補が挙がった。

 ポウザンはそれらを退けることはせず、仕事の合間合間にではあるけれども、一つ一つを丁寧に確認して、気になる女性がいれば王宮に招いて話を聞くこともした。

 そして自分の生涯の伴侶となる女性を、懸命に探す。

 それは気が遠くなるような作業だった。

 全てと結婚してからを決めた方が、明らかに手間は少ないのだろう。

 けれど、ポウザンは時間を惜しまずに丁寧に、じっくりと運命の相手を探す。

 そんな彼を、わたくしとミン様は静かに見守った。

 そしてついに……一人の女性と出会い、何度か話をして、ポウザンは結婚を決めた。

 皇帝になってから、三年後のことだった。

 ポウザンの運命の相手はミンユンさんと言い、美人で意志の強そうな……人の目を真っ直ぐに見つめる女性だった。

 けれど高圧的だったり嫌味なところはなく、実に印象の良い女性だ。

 彼女と対面したミン様は「メイリンとどこか似ている」と笑っていた。

 ポウザンはミンユンさんを妃として迎え、子どもができ次第、皇后の席に座ってもらうことが決まった。

 そしてポウザンは王宮内外に後宮は廃すると、正式に宣言した。

 役人たちはやはりかと肩を落とし、国民は一人の女性を愛したいと言うポウザンを好意的に受け取り、支持した。

 こうして、後宮というものはなくなった。

 厳密に言えば王族の居住区という意味での後宮は残っているけれど、皇帝のための女の花園としての後宮はなくなったという方が正しいだろうか。

 ロン国では皇帝には一人の妃だけが寄り添い、国を守っていくことになる。

 もしかしたら、後の世でまた後宮が復活することがあるかもしれないけれど、ポウザンの治世ではそれはないだろう。

 ポウザンの結婚を見届けたわたくしとミン様は、穏やかに庭園を散策したりお茶を共にしたり、時には息子夫婦と会って、穏やかな時間を過ごしている。

「仕事に追われないというのは素晴らしいな……」

 ミン様がしみじみと、気持ちよさそうに空を見つめながらそう仰る。

 今日はわたくしの宮の茶の間で、いつものようにミン様とお茶を飲んでいる。

 皇帝の座を退かれてから、ミン様は毎日のように自由な時間を楽しんでいらっしゃった。

「あら、皇帝だった頃から自由にわたくしの宮にいらしていたではないですか」

 わたくしがお茶を飲みながらそう告げると、ミン様はギクッと肩を揺らす。

 かと思うと、困ったような笑みを浮かべながら答える。

「……あれもそれなりに無理はしていたんだぞ……」

「まぁ、そうだったのですね。ふふっ……ありがとうございました」

「メイリンのためなら、どんなことも苦ではなかったからな」

 ミン様は昔を懐かしみながらも、を真っ直ぐに見つめて、穏やかな笑みを浮かべてそう告げる。

 お互いに歳は取ったけれど、ミン様の笑みはあの頃と何も変わらない。

 そんな些細なことに、わたくしは幸せを感じていた。

 けれど、そんなことを真っ直ぐに言うのは……少しだけ恥ずかしかったから、素知らぬ顔で口を開く。

「わたくしも……のためならば、よく知りもしない方の妻になるくらいには、努力を惜しまない方でした」

「懐かしいな。そなたは昔から行動力があるというか、猪突猛進というか……」

「なんですか?」

「君は昔から、実に魅力的な女性だ」

 そんなやり取りをして、わたくしたちはふっと笑みをこぼしながら、穏やかなお茶の時間を楽しんだ。

 今度遠方にある離宮に行ってみようか、今度こそ二人でハディ国に行ってみるのもいいかもしれない……そんな楽しい予定を話しながら。
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