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「なるほど、協賛者か」
「そうです。劇場にお店の宣伝を貼ったり、なんならロビーにちょっとしたお店を出店してもらってもいいかもしれません」
「ふむ、つまり私たちが人を集めることで店の宣伝になるから、その対価としてお金を頂くのか」
「簡単にいえばそういうことです。あとは純粋に応援したい人もいるでしょうし」
私は運転資金を集める手段として協賛者、つまりスポンサーを募ることを提案した。
なんならウチの商会からもお金を出してもらったっていい。
「それができれば……なんとかなるかもしれないな!」
ラウルさんの目は、再び光を取り戻していた。
それからしばらくは、協賛してくれる家やお店を探す日々だった。
私も劇団のみんなと一緒に色々なところで頭を下げた。
そんな忙しい日々の中、あの人——ライネスから王城への呼び出しがかかった。
「よく来たな、シェリー」
「何の用ですか? 殿下」
「随分とよそよそしいじゃないか。ようやく自分の立場を理解したのかな」
「さあ、どうなんでしょうね」
今も劇団のみんなが協賛者探しに奔走しているというのに、こんなことに時間を取られたくない。
そんな私の考えが通じたのか、ライネスは「単刀直入にいう」と切り出してくれた。
「君との婚約を破棄したい」
「え……?」
どうしよう……嬉しすぎる。
この前ゼラが婚約破棄を迫っていたけれど、どうせ王様に却下されると諦めていたから。
「悪いが、やはり平民の君では王族の格に合わないんだ」
「確かにそうですね」
王族になったらやりたいこともできなくなっちゃうでしょうし。
そう考えたら、婚約を破棄してくれたことに、とてつもない喜びが湧き上がってくる。
「どうやら分はわきまえているらしいな。それではこちらの書類にサインをしろ」
「ええ、喜んで」
こうして私は、ライネスとの婚約をお互いの合意で破棄することになった。
「は? 婚約を破棄されたって?」
「うん、ライネスが破棄するって」
「よし、じゃあ今から俺がぶっ殺してきてやるよ」
セイは話を聞くやいなや、愛剣を手に店を飛び出そうとする。
私は慌ててその腕を掴んで制止した。
「ち、ちょっと待ってよセイ」
「お嬢、心配しなくても大丈夫だ。城の騎士が全員でかかってきても相手にならん」
「そりゃそうでしょうけど……。あのね、私は婚約を破棄してもらって嬉しいの!」
「嬉しい……?」
怪訝そうな顔で聞き返してくるセイ。
そういえば彼にはまだ私がセリーネ役をやることを話していない。
なんか気恥ずかしくて、伝えられていなかった。
「なんか私の知らないところで婚約が決まっててさ、私の未来はそこでもう決まっちゃったんだって、そう思ってた。でも婚約を破棄してくれたってことは、もう私は自由でしょ? 私ね……やりたいことを見つけたの」
「嬢のやりたいこと、ってのは?」
「私、女優になりたいの」
セイはそんな私の夢を、笑わずに聞いてくれた。
もちろんそういう人だって知っていたけど、それでもやっぱり嬉しかった。
「俺にも嬢のやりたいことってのを手伝わせてくれよ」
それからはまるで流れるように物事が進んだ。
セイがうちのお店の若い衆をつれて各方面で協賛者を募ってくれたのが大きい。
「セイってば凄いね! あ、もちろん脅したりしてない……よね?」
「そんなことしてねえよ。嬢の門出にケチがつくだろ? 若い衆を多めに連れて行ったけど、それだけだ」
シャルグランデ商会は傭兵や冒険者という荒事が得意な人を沢山抱えている商会。
そこに所属する若い衆に囲まれたら……そりゃ流れるように物事が運ぶわけだ。
「でも今更、協賛しなくていいよなんて言えないもんね。せめてお客さんをたくさん入れるために宣伝しなくちゃ」
「宣伝か……そういえばウチの客の中に絵師が居るんだが、こういうのはどうだ?」
「そうです。劇場にお店の宣伝を貼ったり、なんならロビーにちょっとしたお店を出店してもらってもいいかもしれません」
「ふむ、つまり私たちが人を集めることで店の宣伝になるから、その対価としてお金を頂くのか」
「簡単にいえばそういうことです。あとは純粋に応援したい人もいるでしょうし」
私は運転資金を集める手段として協賛者、つまりスポンサーを募ることを提案した。
なんならウチの商会からもお金を出してもらったっていい。
「それができれば……なんとかなるかもしれないな!」
ラウルさんの目は、再び光を取り戻していた。
それからしばらくは、協賛してくれる家やお店を探す日々だった。
私も劇団のみんなと一緒に色々なところで頭を下げた。
そんな忙しい日々の中、あの人——ライネスから王城への呼び出しがかかった。
「よく来たな、シェリー」
「何の用ですか? 殿下」
「随分とよそよそしいじゃないか。ようやく自分の立場を理解したのかな」
「さあ、どうなんでしょうね」
今も劇団のみんなが協賛者探しに奔走しているというのに、こんなことに時間を取られたくない。
そんな私の考えが通じたのか、ライネスは「単刀直入にいう」と切り出してくれた。
「君との婚約を破棄したい」
「え……?」
どうしよう……嬉しすぎる。
この前ゼラが婚約破棄を迫っていたけれど、どうせ王様に却下されると諦めていたから。
「悪いが、やはり平民の君では王族の格に合わないんだ」
「確かにそうですね」
王族になったらやりたいこともできなくなっちゃうでしょうし。
そう考えたら、婚約を破棄してくれたことに、とてつもない喜びが湧き上がってくる。
「どうやら分はわきまえているらしいな。それではこちらの書類にサインをしろ」
「ええ、喜んで」
こうして私は、ライネスとの婚約をお互いの合意で破棄することになった。
「は? 婚約を破棄されたって?」
「うん、ライネスが破棄するって」
「よし、じゃあ今から俺がぶっ殺してきてやるよ」
セイは話を聞くやいなや、愛剣を手に店を飛び出そうとする。
私は慌ててその腕を掴んで制止した。
「ち、ちょっと待ってよセイ」
「お嬢、心配しなくても大丈夫だ。城の騎士が全員でかかってきても相手にならん」
「そりゃそうでしょうけど……。あのね、私は婚約を破棄してもらって嬉しいの!」
「嬉しい……?」
怪訝そうな顔で聞き返してくるセイ。
そういえば彼にはまだ私がセリーネ役をやることを話していない。
なんか気恥ずかしくて、伝えられていなかった。
「なんか私の知らないところで婚約が決まっててさ、私の未来はそこでもう決まっちゃったんだって、そう思ってた。でも婚約を破棄してくれたってことは、もう私は自由でしょ? 私ね……やりたいことを見つけたの」
「嬢のやりたいこと、ってのは?」
「私、女優になりたいの」
セイはそんな私の夢を、笑わずに聞いてくれた。
もちろんそういう人だって知っていたけど、それでもやっぱり嬉しかった。
「俺にも嬢のやりたいことってのを手伝わせてくれよ」
それからはまるで流れるように物事が進んだ。
セイがうちのお店の若い衆をつれて各方面で協賛者を募ってくれたのが大きい。
「セイってば凄いね! あ、もちろん脅したりしてない……よね?」
「そんなことしてねえよ。嬢の門出にケチがつくだろ? 若い衆を多めに連れて行ったけど、それだけだ」
シャルグランデ商会は傭兵や冒険者という荒事が得意な人を沢山抱えている商会。
そこに所属する若い衆に囲まれたら……そりゃ流れるように物事が運ぶわけだ。
「でも今更、協賛しなくていいよなんて言えないもんね。せめてお客さんをたくさん入れるために宣伝しなくちゃ」
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