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お姉様のお誕生日を祝うのが、なぜ我儘なの?
しおりを挟む『わたくしの誕生日を家族で祝いたい、ですか? そんな我儘仰らないでくださいな。』の、妹ちゃん視点の話です。
お姉ちゃんの話読んでないと、ちょっとわかり難いかもしれません。わからなかったら、月白ヤトヒコのリンクから飛べますので覗いてみてください。
――――――――
健康で、元気なお姉様が羨ましかったの。
わたしは物心付いたときから、いつも体調が悪かった。いつもどこかが苦しかった。
お母様が側にいてくれて、ずっと看病してくれた。お父様は、わたしのお医者様の費用やお薬代を稼ぐのが大変なんだってお母様が言ってた。
わたし、知らなかったの。
自分が苦しかったから。お姉様のことを気にする余裕なんてなかったの。
お母様が、お姉様のことを邪険にしていたなんて。話をしようとしただけで、お父様に我儘を言うなと怒鳴られていたなんて。
お姉様は、伯母様に連れられてお茶会によく行っていたでしょう? お母様もお父様も、お姉様が我儘であちこちのお茶会に遊び歩いていると言っていたの。
だから、お姉様に言ってしまったの。「お姉様ばかり遊びに行ってずるい! お姉様だけ健康でずるい! わたしはいつもこんなに苦しいのに! お姉様なんか大嫌い!」って……
酷いことを言ったと思う。
嘘だったの。お姉様が羨ましかっただけなの。健康で、元気にどこでも行けるお姉様が。
内緒よ? と言って、お茶会のお土産のお菓子をくれたことを覚えている。秘密ね? と言って、王女様とお友達になったの、とこっそり話してくれたことを覚えている。お父様とお母様は嘘だってお姉様を酷く叱っていたけど。
お姉様が羨ましかった。お外で、たくさんの人に会えるお姉様が。王女様とお友達になれたお姉様が。
眠れないの? と、こっそり夜中に部屋に来て、小さな声で子守歌を歌ってくれたことを覚えている。綺麗で、とても優しい声だった。もっと、ずっと聞いていたいと思わせる歌だった。
眠るのが勿体なくて、もっと聞いていたかったのに。いつの間にかうとうと眠ってしまって、起きたときにはお姉様がいなくて酷くがっかりしたの。
お姉様が羨ましかったの。綺麗な声が。美しい歌声が。長時間歌っていても息切れなんてしない、丈夫な身体が。
本当はね、わたしとっても大好きだったの。お姉様のこと。でも、わたしを置いて外へ行ってしまうことが嫌いで、寂しくて……やっぱり大好きだった。
もっと一緒にいて、遊んでちょうだいとお願いしたら、ちょっと困ったように笑う顔。優しい声。柔らかい歌声。そっと撫でてくれる手。
だから、お姉様のお誕生日をお祝いしたかった……んだけど、なぁ。
わたし。小さい頃から、ずっとお姉様の誕生日をお祝いしたかったの。
本当よ? でも、お父様とお母様が「そんな我儘はやめなさい」「あなたは気にせず、おとなしく寝ていればいいのよ」って、言うの。
お姉様のお誕生日を祝うのが、なぜ我儘なの? わたしにはわからなかった。
お姉様のお誕生日をしたいと毎年言い続けて、お姉様は今年成人でしょう? と、問い掛けてやっと、お姉様のお誕生日を祝えると思ったのに――――
お姉様、出て行っちゃった。
お姉様のお誕生日は、王女様や王族の方。王立楽団の方々が盛大にパーティーを開いてお祝いしてくれるって聞いてびっくりしたの。
でも、納得した。だって、お姉様はすっごく歌が上手なんだもの。王立楽団に入って、歌姫としてデビューしても全然不思議じゃない。
けど……もう、うちには戻って来ないみたい。
寂しく過ごしていたら、伯母様が教えてくれたの。
わたしが知らなかったこと。見えていなかったことの数々。
お姉様がお父様のおばあ様……わたしからすると曾祖母様に当たる方と似ていて、とても厳しい方だったそうで、お父様は曾祖母様が苦手だったと聞いたわ。
そんな曾祖母様と容姿の似たお姉様に、お母様とお父様が冷たくしていたこと。お姉様のことを邪険にしていたこと。
二人に放置されていたお姉様を心配して、伯母様がちょこちょこ様子を見に来て、あれこれと口実を作って外に連れ出していたこと。
お姉様が、王女様のお気に入りのお友達になったのはやっぱり本当のことだった。でも、お父様もお母様もお姉様をずっと嘘吐き呼ばわりしていた。だから、お姉様は言わなかったのに。
伯母様が言っても、姪可愛さの身内の贔屓目で大袈裟に言っているだけだと全然聞かなかった。
王女様とお姉様の歌声のお陰で、わたしがいいお医者に診てもらえるようになったこと。
お医者様は、お姉様とわたしには優しかった。
わたしが元気になったのは、王女様とお姉様の歌声のお陰。お医者様が、お姉様の歌声のファンだったんですって。
おじい様なお医者様まで虜にしちゃうお姉様の歌は、とっても凄いのね!
さっすがお姉様!
でも、残念なことに、お姉様は別のおうちの子になっちゃうみたい。それで、お父様とお母様は、お姉様を自分の娘だと言ってはいけないことになったそうなの。
もう、うちの子じゃないし、高位貴族の養子になるから。お姉様のご両親は、そのおうちの方になるんですって。
お姉様のお友達の王女様が、お父様とお母様がお姉様を邪険にしていたことをとても怒っているそうで、今後一切、お姉様が関わるコンサートなどには出入り禁止。
お姉様は、うちにはもう帰って来ない。
わたしの病気がよくなってから、お父様とお母様がおしゃれして家を空けることが多くなった。最近では、数日間帰って来ないこともある。帰って来ても、知らない香水の匂いをさせてすぐに出て行ってしまう。
両親が留守の間に呆れ顔の伯母様が来て、わたしに色々なことを教えてくれた。
お姉様のお誕生日パーティーは、大成功。外国からのお客様にも評判で、うちの国の王立楽団に自国まで来てコンサートをしてほしい、主役は是非ともお姉様で! と、熱烈なラブコールを送っているみたい。
お姉様ったら、外国の方まで歌声で魅了したのね!
そして――――伯母様はわたしに、これからどうしたいかを聞いたの。
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