【完結】姉を追い出して当主になった悪女ですが、何か?

堀多 ボルダ

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第一章 悪女と婿にしたい男性ナンバーワン

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 マクレディ伯爵家は王都の西隣に領地を持つ。外洋に面し、この国で一番大きな港を所有しているため、他国との交易の中心地となっている。
王都からも近いため、マクレディ領の領都はこの国では王都に次ぐ規模で、ここは国内でも上位に入る豊かな領地だ。

一方、ノーバック子爵領は、海に面しておらず、林業が主な資源となっている。マクレディ領と比べれば遥かに小さく、経済もマクレディ領に頼っている状態だ。

二つの領は隣り合っていることもあって、昔から交流がある。
小さい頃からときどき、ノーバック子爵家当主は二人の息子ヘンリーとクライドを連れてマクレディ伯爵家へ訪ねて来ていた。
そして当主二人が仕事をしている間、子どもたちは一緒に遊んで過ごしていた。

最初は四人でお茶を飲みながら話をしたりするのだが、ダリアとクライドはすぐに飽きて、二人で庭を走り回っていた。そんな様子をメアリとヘンリーは笑顔で見ている、というのがいつものパターンだ。

 そんな生活が数年続き、小さかった子どもたちも少しづつ成長していき、状況も変わってきた。
メアリとヘンリーが恋仲になったのだ。
二人で庭のベンチで語り合っている姿は微笑ましく、ダリアとクライドはもちろん、使用人や周囲の人間も皆、温かい目で見守っていた。

ただ一人、マクレディ伯爵家当主、トレッド・マクレディを除いては。

 この国では、跡継ぎは男性や長子でなければならないということはなく、女性や長男以外が継ぐことも多い。
誰が継ぐかはその家の方針によるところが大きく、跡継ぎ候補全員の中から年齢や性別を問わず一番優秀な者を跡継ぎと決めている家もある。

マクレディ伯爵家はメアリとダリアの二人姉妹。男の兄弟はいない。父であるトレッドは、どちらかが婿をとって家を継ぐようにと、二人に同じように当主となるための勉強をさせていた。

結果として、トレッドはメアリを跡継ぎに決めた。
それに関してダリアは悔しいとかという気持ちは全く起きなかった。ダリアもがんばって勉強していたので、多少残念という気持ちも無くはない。だが、姉の有能さを身近で見てきたダリアにとって、自分の力が姉の足元にも及ばないことは身に身に沁みてわかっていた。

 跡継ぎはメアリに決定したが、トレッドはそれを対外的には秘密にし、それを私達にも厳命した。
跡継ぎが正式に決まってしまうと、婚約の申込みが殺到するからだ。

領地を持つ伯爵家への婿入りは、跡継ぎ競争に破れた男性貴族にとっては喉から手が出るほど欲しい地位である。まして、マクレディ領は国内有数の栄えた領地なので、高位貴族からの申込みも珍しくない。
トレッドは、マクレディ伯爵家にとって最も有効な相手との政略結婚を画策していたのだ。

 ところが次期当主のメアリがよりによってノーバックの次期当主と恋仲になってしまった。格上どころかマクレディ領のおこぼれで生活しているような弱小子爵家である。

トレッドは激怒してノーバック子爵家の屋敷への出入りを禁止した。
メアリはひどく落ち込んでいたが、顔には出さず気丈に振る舞っていた。周囲の人間はそれに気付いてはいたが、当主の命令は絶対である。何もできずただ見守ることしかできなかった。
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