34 / 42
第四章 悪女と誘拐
3-04
しおりを挟む
馬車を見送ると、ダリアは「これぞ災い転じて福となす、よね」と満足そうに腕を組んだ。
そのまま隣に立つクライドに目をやり
「あなたもそろそろ帰る? 遅くまで悪かったわね」
「ひとりで大丈夫か? なんなら泊まっていくけど」
「え? 大丈夫って何が?」
「今日攫われただろうが」
「ああ、うん、大丈……」
「いえ、ぜひ泊まっていただきましょう」ダリアの言葉にランダルが被せた。
「ダリア様も心細いでしょうから、ね」ダメとは言わせない圧にダリアはうなずくしかなかった。
その日は二人で夕食をとった。
その後、二人で部屋を移動し、ワインを飲みながら雑談をする。
「今日は悪かったな」
真面目な顔でクライドが言う。
「何が?」
「君が攫われたのは俺のせいだ」
クライドは辛そうに眉根を寄せた。
「あなたのせいじゃないわよ。謝る必要なんてないわ」
「君の名前は出さないようにしていたんだけど、まさか探偵まがいのことまでしているとは思わなかったよ。俺に隙がありすぎた。しかも、仮にも騎士なのに。怒りに任せて女性の胸ぐらを掴むなんて最低最悪だ。君がずっと冷静だったのに、俺は本当にダメだった」
吐き捨てるように言うと、グラスのワインを一気に飲み干した。
「そんなことないわよ。あなたが私のぶんまで怒ってくれたから私は冷静でいられたのよ」
「助けるつもりが助けられたよ。俺もまだまだ未熟だ」
「私ね、捕まっている間、きっとクライドたちが助けてくれると信じていたから。だから捕まっている間もそれほど怖くなかったし、今もこうしてダメージをあまり受けずにいられるんだと思う」
「そう言ってもらえると少しは浮かばれるよ」
下を向いて苦笑する。
二人でそのまましばらく他愛もない話をした後、ダリアが思い出したように訊いた。
「ところで明日の仕事は大丈夫なの?」
「明日は遅番だから問題ない。というか、そんなことダリアは気にしなくていいよ」
「そうなんだ。ありがとう」
笑顔でお礼を言うダリアから、クライドは慌てて顔を背けた。
「さてそろそろ寝るかな。君も疲れたろ、早く寝たほうがいいぞ」
赤い頬をごまかすように、クライドは椅子から立ち上がり、伸びをした。
「そうね、そうするわ」
クライドはかがんで、座っているダリアと目線を合わせた。
「いいか、もし何かあったら俺を呼べよ。真夜中でもかまわない」
「え、あ、うん。たぶん大丈夫だと思うけど。ありがとう」
ダリアはクライドの真面目な顔に少し驚きつつ、お礼を言った。
「そのときは一緒に寝てあげるから。ガキの頃みたいに」ニヤリと笑いながら言う。
「ば、ばか。何いってんの」
ダリアの顔が赤くなる。
クライドはそれを見ると満足そうに笑いながら、部屋を出ていった。
そのまま隣に立つクライドに目をやり
「あなたもそろそろ帰る? 遅くまで悪かったわね」
「ひとりで大丈夫か? なんなら泊まっていくけど」
「え? 大丈夫って何が?」
「今日攫われただろうが」
「ああ、うん、大丈……」
「いえ、ぜひ泊まっていただきましょう」ダリアの言葉にランダルが被せた。
「ダリア様も心細いでしょうから、ね」ダメとは言わせない圧にダリアはうなずくしかなかった。
その日は二人で夕食をとった。
その後、二人で部屋を移動し、ワインを飲みながら雑談をする。
「今日は悪かったな」
真面目な顔でクライドが言う。
「何が?」
「君が攫われたのは俺のせいだ」
クライドは辛そうに眉根を寄せた。
「あなたのせいじゃないわよ。謝る必要なんてないわ」
「君の名前は出さないようにしていたんだけど、まさか探偵まがいのことまでしているとは思わなかったよ。俺に隙がありすぎた。しかも、仮にも騎士なのに。怒りに任せて女性の胸ぐらを掴むなんて最低最悪だ。君がずっと冷静だったのに、俺は本当にダメだった」
吐き捨てるように言うと、グラスのワインを一気に飲み干した。
「そんなことないわよ。あなたが私のぶんまで怒ってくれたから私は冷静でいられたのよ」
「助けるつもりが助けられたよ。俺もまだまだ未熟だ」
「私ね、捕まっている間、きっとクライドたちが助けてくれると信じていたから。だから捕まっている間もそれほど怖くなかったし、今もこうしてダメージをあまり受けずにいられるんだと思う」
「そう言ってもらえると少しは浮かばれるよ」
下を向いて苦笑する。
二人でそのまましばらく他愛もない話をした後、ダリアが思い出したように訊いた。
「ところで明日の仕事は大丈夫なの?」
「明日は遅番だから問題ない。というか、そんなことダリアは気にしなくていいよ」
「そうなんだ。ありがとう」
笑顔でお礼を言うダリアから、クライドは慌てて顔を背けた。
「さてそろそろ寝るかな。君も疲れたろ、早く寝たほうがいいぞ」
赤い頬をごまかすように、クライドは椅子から立ち上がり、伸びをした。
「そうね、そうするわ」
クライドはかがんで、座っているダリアと目線を合わせた。
「いいか、もし何かあったら俺を呼べよ。真夜中でもかまわない」
「え、あ、うん。たぶん大丈夫だと思うけど。ありがとう」
ダリアはクライドの真面目な顔に少し驚きつつ、お礼を言った。
「そのときは一緒に寝てあげるから。ガキの頃みたいに」ニヤリと笑いながら言う。
「ば、ばか。何いってんの」
ダリアの顔が赤くなる。
クライドはそれを見ると満足そうに笑いながら、部屋を出ていった。
31
あなたにおすすめの小説
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
氷の騎士様は実は太陽の騎士様です。
りつ
恋愛
イリスの婚約者は幼馴染のラファエルである。彼と結婚するまで遠い修道院の寄宿学校で過ごしていたが、十八歳になり、王都へ戻って来た彼女は彼と結婚できる事実に胸をときめかせていた。しかし両親はラファエル以外の男性にも目を向けるよう言い出し、イリスは戸惑ってしまう。
王女殿下や王太子殿下とも知り合い、ラファエルが「氷の騎士」と呼ばれていることを知ったイリス。離れている間の知らなかったラファエルのことを令嬢たちの口から聞かされるが、イリスは次第に違和感を抱き始めて……
※他サイトにも掲載しています
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました
結婚式の日に婚約者を勇者に奪われた間抜けな王太子です。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月10日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング2位
2020年11月13日「カクヨム」週間異世界ファンタジーランキング3位
2020年11月20日「カクヨム」月間異世界ファンタジーランキング5位
2021年1月6日「カクヨム」年間異世界ファンタジーランキング87位
私を婚約破棄した国王が処刑されたら、新しい国王の妃になれですって? 喜んで…と言うとでも?
あんど もあ
ファンタジー
幼い頃から王子の婚約者だったアイリスは、他の女性を好きになった王子によって冤罪をかけられて、田舎で平民として生きる事に。
面倒な貴族社会から解放されて、田舎暮らしを満喫しているアイリス。
一方、貴族たちの信頼を失った王子は、国王に即位すると隣国に戦争を仕掛けて敗北。処刑される。
隣国は、アイリスを新しい国王の妃にと言い出すが、それには思惑があって…。
嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~
みすたぁ・ゆー
恋愛
【第7幕まで完結】
とある村で暮らしていた15歳の少女・シャロンは、父から衝撃の事実を告げられる。それは自分が先代の王の庶子だったということ。そして名門ではあるが、日々の食べ物にも困窮している貧乏貴族のフィルザード家へ嫁がされることになる。
フィルザードは周囲を山に囲まれた辺境の地。雨が少なく、主要な作物もほとんど育たない。それゆえに領主も領民もギリギリの生活をしている。
ただ、この地は隣国との国境に位置しているため、戦略上においては一定の重要度がある。そのため、結びつきを強めておきたい現・国王の意向で、シャロンは『政略結婚の駒』として利用されることになったのだ。
今まで平民として暮らしてきたシャロンは、否応なしにフィルザード家の若き領主・リカルドに嫁ぐことになり、何もかもが手探り状態の貴族暮らしが始まる。
しかし実際にその地で見た状況は想像以上に厳しいもので、大地は痩せ細り、食べ物は雑草のような植物がごくわずか……。
一方、そんな苦しい環境と暮らしだからこそ、領主と領民の関係は一般的な階級社会とは大きくかけ離れたものともなっている。その『とある姿』にシャロンは胸を打たれ、自分もこの地のために何かがしたいと決意する。
実は彼女には周囲に隠している特殊な能力があり、それを使ってなんとか現状を打破しようというのだ。もちろん、そのためには大きなリスクも伴うのだが……。
――今、少女は優しき人々とともに『夢』の実現に向かって歩み始める!
【各章のご案内】
第1幕(全26話)前向き少女の行進曲(マーチ):完結
第2幕(全31話)心を繋ぐ清流の協奏曲(コンチェルト):完結
第3幕(全11話)重なる想いの交響曲(シンフォニー):完結
第4幕(全29話)解け合う未来の奇想曲(カプリッチオ):完結
第5幕(全28話)分水嶺の奏鳴曲(ソナタ):完結
第6幕(全33話)来るべき日の前奏曲(プレリュード):完結
第7幕(全20話)蒼き石の鎮魂曲(レクイエム):完結
※第8幕以降の更新は気長にお待ちいただければ幸いですっ。
女嫌いな騎士が一目惚れしたのは、給金を貰いすぎだと値下げ交渉に全力な訳ありな使用人のようです
珠宮さくら
恋愛
家族に虐げられ結婚式直前に婚約者を妹に奪われて勘当までされ、目障りだから国からも出て行くように言われたマリーヌ。
その通りにしただけにすぎなかったが、虐げられながらも逞しく生きてきたことが随所に見え隠れしながら、給金をやたらと値下げしようと交渉する謎の頑張りと常識があるようでないズレっぷりを披露しつつ、初対面から気が合う男性の女嫌いなイケメン騎士と婚約して、自分を見つめ直して幸せになっていく。
「悪女」だそうなので、婚約破棄されましたが、ありがとう!第二の人生をはじめたいと思います!
ワイちゃん
恋愛
なんでも、わがままな伯爵令息の婚約者に合わせて過ごしていた男爵令嬢、ティア。ある日、学園で公衆の面前で、した覚えのない悪行を糾弾されて、婚約破棄を叫ばれる。しかし、なんでも、婚約者に合わせていたティアはこれからは、好きにしたい!と、思うが、両親から言われたことは、ただ、次の婚約を取り付けるということだけだった。
学校では、醜聞が広まり、ひとけのないところにいたティアの前に現れた、この国の第一王子は、なぜか自分のことを知っていて……?
婚約破棄から始まるシンデレラストーリー!
『義妹に婚約者を譲ったら、貧乏鉄面皮伯爵に溺愛されました』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「お姉さまの婚約者が、欲しくなっちゃって」
そう言って、義妹は私から婚約者を奪っていった。
代わりに与えられたのは、“貧乏で無口な鉄面皮伯爵”。
世間は笑った。けれど、私は知っている。
――この人こそが、誰よりも強く、優しく、私を守る人、
ざまぁ逆転から始まる、最強の令嬢ごはん婚!
鉄面皮伯爵様の溺愛は、もう止まらない……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる