うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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教会の下宿人

特技再び

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 先日の大漁案件は、周囲に好評だったらしい。
 颯はホテル建築の関係者に差し上げたら、『この辺では見かけない珍しい魚を新鮮な状態で食べられた。』と感想をもらったという。
 蓮に届けてもらった村の方では、マホのつわりがまだ始まっていなかったらしく、無事に食べる事ができたと言っていた。
 私は行っていない事になっているので、文字伝達魔道具でジロウが私にメッセージをするはずがないけれど、様子を聞く事ができて嬉しい。
 マサやキヨも大喜びで魚を受け取り、予想通り村中で分けたみたい。

 ミヨちゃんのお店や布屋の女将さんも快く受け取ってくれたというから良かった。
 ついでに蓮がよく利用する食事処にも配ったので、限定メニューとして美味しく味わえたんだって。

 そんなこんなで美味しい嬉しい体験と、能力アップの体験が一度に出来た私達。
 塀の魔道具に魔力を入れた時の何倍も魔力が上がっているのを実感する。
 猪や鹿は解体する行為に拒否反応が出るのに、魚だと平気というエゴに呆れつつも『美味しいは正義』と言い訳をする。
 慣れの問題もあるんだろうな。

 自分の家で飼育していた鶏を食べるのが当たり前の生活から、過程を一切見ずに『食品』として加工された状態の物に慣れてしまうと、解体現場にぎょっとしてしまうんだろう。
 誰かに汚れ仕事を押し付けて、美味しい所だけ持って行く。それが当たり前と感じる環境だった。
 魚も切り身で泳いでいると言い出す子供がいて、食育としてきちんと理解してもらおうとする動きがあった。
 
 魚だけじゃない、肉だって同じだ。
 今更ながら元の世界で解体の仕事に携わってくれていた人達に感謝する。


 今日はアパートの颯の部屋で三人でジロウ夫婦のプレゼント製作をしている。
 颯と蓮は共同で作業する部分が多いし、私は魔石に付与をした後は端っこでミシンを取り出して縫っている。
 蓮が作ってくれたミシンが快適過ぎて涙が出た。
 文明だ。私は文明を手にしている!
 タッタカターとミシンが動き、マタニティドレスの形が出来上がっていく様子ににまにましてしまう。

 私の心情は横に置いて、作業中はまたもや異国語で延々と創世記を話してます。
 検索・閲覧魔法は過去の情報だけかと思ったら、学院で習った創世記も閲覧できると知った。
 エゾチに向かう頃から、その創世記を見ながら異国語で読んでいるんです。

 私が読み上げたところでどうなるんだって思うでしょ?
 ところがですよ。
 颯も蓮も人間になった今でも元の種族の言葉がわかるというんです。
 単独行動の際に遭遇して判明したんですって。

 そういえば私、山の中に行っても他の猪に会ってなかったわ。
 気付くはずもない。

 それで、元の種族の言葉がわかるなら、異国語も聞き続けていたら私のように理解出来るんじゃないかと予想したんです。
 使える言葉の種類が豊富だと世界が広がるよね。

 颯が積み木に着手すると、蓮が私の隣で針と布を動かし始めた。
 口に入れても飲み込んりしないような大きさのぬいぐるみをベッドメリーに付けるらしい。
「蓮さんってお裁縫も出来るんですね。」
「ちょっとした飾りくらいは頑張って作るわよ。ちゃんとした衣服を作るのは無理。」
「無理だと思っていたらこうなってますが・・・。」
 三人で笑いながら製作を続けた。

 
 肝心な颯のホテル建築は、順調に進んでいるみたい。
 エゾチにアパートを持って行った事もあり、ホテル用の隠避結界とアパートの隠避結界は別々に作って使われている。
 インベントリによる持ち運びが便利過ぎて、長期出張に持参しているらしい。
 私の場合は転移で戻ればいいだけだけれど、蓮も持ち運べる家が必要だろうか?
「いざとなればソーギの家を持って行けば?」
 颯があっさりと解決策を言い出した。

 建築中のホテルは私はまだ見ていない。
 石造りの重厚な雰囲気に仕上がるそうだ。
 以前の世界で重要文化財登録されてそうな建物の雰囲気なんだろうね。
 鉄骨もコンクリートも使われて、耐震技術もしっかり組み込むんですって。
 技術的に難しかったところは、機械の進化による力業が何か所かで行われている。

 客室内に置かれるベッドや椅子もある程度まとまったところで受け取り、職人さんにはコンスタントに代金を支払っているので、職人さんが作り過ぎて死活問題になる事態は避けられているみたい。
 
 ホテルと言えば、何か忘れている気がするんだけど。
 この前から気になっていたのでじっくり考える。

「あ、火災報知機というか、各部屋の自動消火器って設置する?」
「ああ、忘れてた。それ必要だな。付与と魔道具化をお願いできるか?」
「うん。」
「私も大丈夫よ。もしかしてまた登録が必要なんじゃないかしら?」
「あーそうなるな。」
 
 また仕事を積み上げてしまった。
 わかっているけれどもう一つ思い出す。

「それからホテル内だけで完結する道具になると思うんだけれど、館内通話道具ってあった方が良いんじゃないかな?」
「出来れば欲しいが、作れそうか?」
「付与は出来るよ。」
「付与された魔石があるなら作る事ができるわよ。文字伝達魔道具の通話版でしょう?」
「客室全部とフロントを繋ぐものと、ホテルの厨房や裏方で繋ぐものがあった方が良いな。」

 ううう、また自分で自分の首を絞めた気がしてならない。

 何か気分転換になる、ストレス発散のイベントが欲しい。
 ん?
 イベント?季節の・・・あっ!
「山菜採りに行きたいです。行かせてください。いや、いっそ許可を取らずに突き進みます。一人でも行ってくる!」
 
 うがーっと両手を頭に置いて叫ぶ私に二人がびくっとする。
「しの?落ち着け?な?」
「しのちゃん、しっかりして、ほら深呼吸よ、吸って—吐いて—。」

 二人は宥めようとするけれど、大丈夫、私は正気です。
 冷静です。
 唐突に本能を思い出しただけです。

「秋にキノコ採りをして、春になったら山菜が採りたかったのを今思い出しただけなの。」
 移動できる範囲が広がったし、人里から離れたところで採取出来そうだ。
 先に周辺を浄化したら魔獣との遭遇も少ないだろうし、結界もあるから大丈夫。
 北日本に位置する地域なら、まだまだ採れるはず。

「しのちゃんって前の世界の頃から山菜採りが好きだったの?」
 蓮が指摘する言葉に首をぶんぶんと振る。
「仕事だらけでそんな暇がなかった。なんていうか、猪の本能?嗅覚?で秋はキノコの香りに誘われて山に入って採ったし、春の山菜を思い出したら居ても立ってもいられなくなってしまって・・・。」
 
 そう、エゾチ方面を飛んでいた時にもかすかにニオイを捉えていたんだよ。
 でも仕事があるから気付かないふりをしていた。
 ここに来て何かがプチンとはじけたような感じがする。

「貴女まだ小さいのに、詰め込み過ぎなのよきっと。文句も言わずに大人に振り回されていたんだから、少しお休みして山に行ってらっしゃい。」
 蓮がかけてくれた優しい言葉にうるっときた。
 文句は言ってたはずだけど、フェリクスに。

 お言葉に甘え、二人に宣言をして一週間、学校帰りは山菜採りに邁進する事にした。
 ウド、根曲がりたけのこ、わらび、あいこ、しどけ、ミズなどを北東北から北海道方面に転移しては採取し、たっぷりと収穫した。

 気分も肌も艶々して満足。
 今回の収穫も各方面にお裾分けし、大好評だったことをここに記しておく。

 気分転換って大事だよね。

 夢中になって山の幸を採っていたら、汗をかいて気が付いた。
「夏用の軽い上着が無い!」
 ブラウスよりも涼しく感じられる服と言えば、もうTシャツしかないんじゃない?

 ストレス発散で英気を養った私は、自分用のTシャツと颯や蓮のTシャツを縫った。
 凝った物の方がおしゃれだろうけれど、今この状態でそんなデザインに手を出したら折角発散したストレスに潰される未来しか見えなかったので、妥協した。
 それでも二人は喜んでくれたよ。
 優しいね。


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