うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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教会の下宿人

船旅

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 明日からとうとう夏休みに突入します。
 学院を一日も休むことなく通って学び、語学力が大幅にアップしました。
 ありがとう、スパルタ異国語環境。ありがとう、先生。
 きっと淑やかさも身についたはず。
 ありがとう、お姉さま達。

 ・・・。
 嘘です。ごめんなさい。
 淑やかさについては無理でした。
 各地を飛び回っていて静かにしているどころじゃありませんでした。
 学院内で走り回る事は無いけれど、街道踏破の際には相変わらず走ってます。

 午前中だけ授業を受け、夏休みの注意事項を聞いて終了。
 夏休みの期間は四週間で、これといった宿題はありませんでした。
 宿題が無いって最高だよね。

 教会に戻って荷造りをする。といっても殆どの荷物はインベントリに入れ、ドレッサーは置いていく。
 部屋に鍵をかけて出かけるので、布団が無くなったのは気づかれないはず。たぶん。
 帰省のため暫く付与が出来ないので、ここ数日は毎日魔石の数を四つ増やし、十一個の付与を行っていた。
 報酬は銀貨五枚と小銀貨五枚だ。
 一週間付与を増やせば、四週間分を熟したことになる。
 帰省から戻って『十一個のまま』でと言われたとしても、魔力が増えているから問題はない。

 執務室に案内され、フェリクスに挨拶をして教会を出た。
 アンとジャンが見送ってくれた。
 街の中の公衆トイレからソーギに転移し、蓮と合流する。
「蓮さんこんにちは。まずはアレをお願いできますか?」
「おかえりなさいしのちゃん。いつでもOKよ。」

 ステルス結界をかけて教会の魔石が保管されている部屋に転移する。
 明日から暫く私がいないから付与はないのだけれど、いつもの習慣なのか他の魔道具用に付与をするのか、盆の上に魔石が準備されていた。
 それを見てほっとしつつ付与をして蓮に渡し、魔道具を作ってもらう。
 今回は回復と治癒の魔道具を三つずつ作ってもらった。

 手慣れた様子で次々と道具に魔石を嵌め込み、蓮が終了の合図をしたところでハマのアパートに転移する。
 そこで颯と合流し、三人でナガサチに転移した。

 ナガサチの港では、大型の船が出港の準備をしている。
 以前、船のリニューアルで知り合った船長さんが私達を見て手を上げる。
 もみあげから顎までびっしりと髭の生えた船長の所へ行くと、笑顔で話し出す。
「よぉ!兄さん達、予定通り来たな。もうすぐ出港だから船に乗ってくれ。そこの船員が案内する。」
 セーラー服の船員さんが私達を船内に案内してくれた。
 
 観光船ではないので、船室はそれほど広くない。
 むしろ狭い。
 カプセルホテルかという印象だ。
 人の輸送よりも積み荷の輸送が重要な船なので納得だ。
 これでも颯と蓮がリニューアルしているから快適度がアップしている。
 
 四人部屋を三人で使い、出航を待つ。
 ボォー、ボォー、ボォーと長めの汽笛が三度鳴って船が動き出した。

 地震の揺れとも違う、波の揺れも慣れる気がしない。
 そして酔いそうだ。
 今回も寝た方が無難じゃないかと思い始め、私は早々に寝た。

 ぱちりと目が覚め、小さな個室の布を開ける。
「おっ、起きたか。」
「おはようしのちゃん。」
 颯と蓮が起きていた。
「今は・・・何時でしょう?」
 密室では外の光がわからないため、時間の感覚が薄れる。
「もうすぐ夕飯を食べようかって話になっているのよ。」
「食べられそうか?食堂に移動出来るか?」
 お腹が空いていたのでこくりと頷き、三人で食堂に移動した。

 出たよ!
 あったよ!
 会いたかったよ!
 なんと夕飯はカレーだった。
 まとめて作っておけば提供しやすい料理として、船の中では定番の料理になりつつあるらしい。
 市井では高級品だそうだけれど、貿易船や郵便船は各地に行ったついでに現地で船員用の食料を仕入れたりするので、香辛料があったみたい。

 三人揃って目をキラキラさせちゃったよね。
「いただきます。」の挨拶の後、ワクワクしながらスプーンで掬ってパクリと口に入れる。
 とろみはあるけれど、食べ慣れたとろみよりは弱い感じ?
 具は定番の人参が見当たらないし、玉ねぎじゃなくてネギだ。それと魔獣の肉。
 でもカレーである。
 前の世界ではインド系のさらさらカレーではなく、イギリスから伝わったとろみのあるカレーが日本のカレーの原型に近いと聞いたことがある。
 マイルドでとろみが少しあるカレーは懐かしさもあり、心の中で号泣しながらいただきました。
 
 
 食堂の船員さんにご馳走様と美味しかった事を伝え、洗浄した食器を返しました。
 魔法があると船に飲料水を積み込まなくてもいいから、その分、他の食材を詰め込めるよね。
 つくづく魔法って便利だわ。

 部屋に戻ると颯が宣言する。
「ホテルの料理にカレーを入れたいと思う。異論反論は受け付けない!」
 私も蓮も『賛成ー!』と言いながら拍手をしたのだった。

 具を考えると、エゾチで大規模農業改革・・・改革というか農地が出来上がってもいないから推進?をしたらカレー宣言が実現しやすそう。
 輸入や貿易も大事だけれど、自給率ってかなり大事だから農業従事者に負担がかかり過ぎない生産法を提案したいと颯は意気込んでいた。

 食後は魔石に付与をして蜜柑の形に作ってもらった浄化の魔道具をいくつか蓮に仕上げてもらう。
 その後、歯磨きと入浴代わりの洗浄をして就寝。
 翌朝はいつも通りの時間に目が覚めたため、三人で甲板に出る。
 船員さん達に挨拶をしながら外の風に当たると、視界は海、海、海。
 なんだろう、周りに景色が見えない海の真ん中ってとても不安になるし、孤独感が倍増する。
 大海原を超えて来た人達って、本当に凄い。
 ぎゅっとこぶしを握って景色を見ていると、なんだか黒い影が見える。

 船の見張り台から鐘が鳴らされた。
 カンカンカン、カンカンカン、カンカンカンと忙しなく鳴り響くと、船員達が甲板に出てきて状況を確認しだす。
「魔魚だ!魔魚が出たぞ!」
「あんた達、危ないから中に入りなさい。」
 一人の船員が私達を船内に誘導する。
 船が下から突き上げられるように大きく揺れ、急降下するようにバウンドする。
 うっ、気持ちわるっ。
 颯と蓮は私の両手を左右から掴み、もう片方の手で手すりを握っていた。

 船内に入る間もないまま、船の横で口を開けたクジラがザバーっと出てきて海の中に潜った。
 え?クジラの食事に遭遇した?
 結界の魔道具で船が損壊する事は無いけれど、揺れは抑えられないので、上下左右に揺れ続ける。

 食事って一口で終わる?
 そんな疑問が頭をもたげたところ、船から少し離れた位置で二口目が来た。
 以前の世界で、映像で見たよりも巨大だ。
 迫力よりも恐怖を覚える。

 驚きすぎた事と、両手をがっちり掴まれている事もあって身動きできずにいると、船員がぽつりと呟く。
「あれが捕獲出来たら、あっちに着いた時に食べられるのになぁ。」
 どうやら船員はクジラが好きな人だったらしい。
 食事が終わったのか、クジラの姿は周囲からいなくなっていた。
 ふぅ。

 うっかり海に落ちても転移があるし、颯の飛翔魔法や蓮の跳躍もあるからそれほど心配はしていなかった。

 刺激的なクジラとの邂逅以外は、平穏な船旅だった。
 翌日の昼にはジョーカイに到着した。


 ジョーカイは今まで見た中で一番多様化している雰囲気だ。
 港で船長達と別れ、街の中へ行く。
 教会関係の国の人もいれば、南方系の人もいるし、まさに多国籍。
 異国情緒溢れる土地。

 そうそう、私の異国語教室は無事に結果が出たんです。
 先月、颯と蓮も言語理解の魔法が沸きました。

 颯はこんな状態。
魔法:言語理解、生活魔法、飛行魔法、遠見魔法、集音魔法、建築魔法、鑑定魔法、物質変化、インベントリ

 蓮はこんな状態。
魔法:言語理解、生活魔法、跳躍魔法、鍛冶魔法、魔道具作成、鑑定魔法、物質変化、インベントリ

 港で周囲の言葉に耳を傾けると、何を話しているのか理解できたのを三人とも確認。
 やったね!
 
 周辺の飲食店でアヒルの仕入れ先情報を教えてもらうため、私達は歩き出した。


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