うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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大陸を移動する猪

トイレ改革

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 連日、塀の前の穴に魔獣が落ちていた事から、早朝は男性陣が梯子と台車を持って見回りに行く事を日課にしたようだ。
 今朝も何か落ちていたらしく、がやがやと声が聞こえている。

「お前さんが来てから村は綺麗になるし、子供達は賑やかだし、肉が食べられてありがたいよ。村の者が攫ってきたのに悪かったなぁ。」
 肩を落として村長のリウが言う。
 本来なら反省してそのまま元の場所に返して欲しいけれど、幸い転移が出来るからね。
 特に困っていないし、理由が分かってちょっとすっきりしていたりもする。
 初日の夜、就寝前に村全体を浄化したので、村人は精神的に落ち着きも出ていると思われる。

 今日は文字や言葉の続きと数字を覚えてもらいたいと考えている。
 
 塀の側で、先日引っこ抜いた木を一本インベントリから取り出す。
 枝を落として太い幹は再びインベントリに収納し、枝を厚さ一センチの小さな輪切りにしていく。
 大量に輪切りした後は、外側の皮を剥いでつるりとした手触りになるように研磨する。
 仕上げに、この国で使われている数字をゼロから九十九まで書き込み作った箱に入れる。
 枝を落とした幹をインベントリから取り出し、適当な大きさに切る。
 今度は厚みは先ほどと同じくして正方形に切って研磨し、百から九百九十九まで書き込み別の箱に入れる。
 更にかまぼこ板のような長方形に切って研磨した板も作り、千から五千までの数字を書き込んで箱に入れる。
 何故五千かって?
 初心者がそんなに大きな数字をぽんぽん使わないんじゃないかと思ったんですよ。
 いや、ここは正直に言おう。この作業に飽きたんですよ。
 面倒なんですよ。

 職人さんって本当に凄いよね。
 こういう細かい仕事を毎日大量にするんだから。
 尊敬するよ。

 まずは下準備が出来たので残った葉っぱも箱に入れ、全部積み上げて浮かせて移動する。
 箱を積み上げたまま浮かせて歩く私の姿を見かけると、子供達は『新しい魔法だ!』と喜ぶし、大人たちは『また何をやり出すんだ?』という顔をしている。

 昨日文字や魔法の勉強をしたところに到着し、箱を地面に並べる。
 集まった人達に年齢を聞けば、それぞれが自分の年齢をある程度把握している事が分かった。
 ということは、毎年一つ年齢が上がっていくという概念はある事が分かる。

 では耳で聞く言葉ではなく、数字という文字になると読めるのか?というと読めないようだ。
 そこで小さな丸い板の入った箱を前に出す。
 ゼロから十までの数字を見せると、地面に書いて覚えようとする人もいれば、指を折って覚えようとする者もいる。
 十一から二十までの数字を見せると指を折っていた人は指の数が足りなくなり、足の指を動員する様子も見える。
 二十以上になるとお手上げで、軽く混乱している人もいた。

 今度はランダムに数字を見せ、正しい数字が言えるかどうかと、その数字の枚数の葉っぱを並べてもらう。
 数字の勉強を始めたばかりの頃は、文字と実際の物の数が揃わない事はよくある。
「これは七。だから・・・葉っぱはこれ!」
 数字は合っていたけれど、葉っぱは六枚だけ出ていたので残念。

 そんな感じで即席の算数セットを使いながら簡単な足し算と引き算の勉強をした。
 子供を見守る態で大人も一緒に学べたので、今後は街へ行っても計算に困らない人が増えるといいな。

 
 休憩の後は魔法の勉強と練習だ。
 まず最初に水を出すための言葉を伝え、井戸の立て看板の一覧中ではこの文字だと示す。
 ちょろちょろと水を出したり、勢いよくぶしゃーっと出したり、賑やかなことこの上ない子供達。
 水差しの魔道具が復旧し、それだけでも便利になったのに、各自で清潔な水が出せるようになった事に感激する大人達。
 風邪をひかないか心配になるくらいだったので、一旦洗浄ですっきりして落ち着いてもらう。


 その後は大きな盥に水を張って、葉っぱの中央にある太い葉脈部分だけを残したものを準備し、それぞれに持ってもらって盥の上で火を点ける魔法の練習だ。
 火の魔法は必ず水があるそばで使う事、屋外で使う場合は穴を掘ってその中で行い、しっかり消えるまで目を離さないように、最終的には水をかけて消火する所まで説明しつつ、葉脈で線香花火モードの練習をしてもらった。
 
 普段の煮炊きで火の危険性をしっかり教育されているせいか、子供達は意外に大人しくてほっとする。
 コンロの魔道具が普及したら大気汚染が減っていい感じだけれど、火の怖さを教えるのが大変だろうな。
 
 午前中の勉強時間はその辺で終了し、子供達は算数セットで遊ぶようだ。
 木を使った細工を作ってくれる人たちに残ってもらい、建物裏から持ってきた風にインベントリから枝を落とした木を転がす。
 座面を少し広くした丸太椅子を作り、中央部に穴をくり抜く。
「これと同じように作ってもらえますか?」
 各家の数プラス、屋外用に五個から十個作るようにお願いした。
 今日中に全て作るわけではなく、時間のある時に増やしてもらう形だ。
 複雑な作業が苦手な人には、大人の身長よりも高さのある板を作ってもらう。
 出来れば鍵付きのドアも作って欲しいけれど、大量の蝶番が無いので断念した。
 その代わり板の上部に棒を渡し、布で隠すようにしてもらう。
 
 一組出来上がったところで、何に使うのか説明する。
 村の中にある公衆トイレに案内してもらい、三方を板に囲まれた個室を作る。
 中に座面をくりぬいた椅子を設置し、トイレだと説明したら大層驚かれた。

 外の国ではこれに更にドアが付いてカギが掛けられるから、材料が揃ったらそのように作って利用して欲しいとトイレ改革を伝えると、カルチャーショックを受けた顔になっている。
 うん、分かるよ。
 私が誘拐されてからトイレに行った時がそんな顔だったからね。

 今まで通りで良いと言うかもしれないだろうけれど、他所に行った場合に困るのは彼らだ。
 少なくとも、ジョーカイの公衆トイレは教会の影響が広がっていて個室だったんだよ。
 トイレの使い方が分からなくて座面に足を乗せてしゃがんだり、跳び箱の上に乗ってしまった時のように座って使えば不便だと思うし、扉を閉めずに利用して他人が顔色を変えて回れ右する瞬間に遭遇したくないだろう。
 現時点では両方準備して、徐々に新しい方に慣れてくれたらいいと思う。
 
 そんな事を考えていたら、作業に参加していたワンが苦い顔をして腕を組んでいる。
「もしかして・・・俺らが街に行った時、煙たがられていたのはコレが原因なのか?」
 ぽそりと呟く声がした。
 ん?
 何かあったの?
 あ、ジョーカイに行ってたんだよね。皆さんジョーカイではトイレをどうしていたの?

 恐る恐る聞いたら、道路の脇の溝で人目も憚らずしていたという。
 ちょっ、それ!トイレじゃないから!雨水を流すための排水路だから!

 慌ててジョーカイのトイレ事情を説明すれば、青い顔をしている人が数人いた。
 心当たりしかないんですね?

「道理で俺達には物置のような建物しか貸してくれなかったのか・・・。」
 なんだか既に色々やらかしていたようです。
 これからは村でしっかり練習したらいいと思うよ。


 午後からは昨日の続きの塀建築。
 村の奥へ行くと颯と蓮が既に来ていて、周辺の山の頂上を整えてくれたらしい。
 樹木の間引きや植え替えってかなり大変な作業だ。
 山の斜面で切ったり運んだりするだけでも一苦労だが、魔法がある世界だと途端に動きやすくなる。
 しかもインベントリを持っている私達は、引っこ抜くのも植えるのも簡単に出来るから、ある意味適任だったりする。
 病気や寿命で倒れた木や、嵐で折れた木もついでに回収してくれている。
 三人で穴を掘り、塀を作って魔道具を嵌め込むと、大体の作業が終わったのでハマのアパートへ行く。
 
 アパートでは栞が迎えてくれて、ご飯を食べながら午前中の授業や、村の人がジョーカイでやらかしていた話をする。
「そういえば以前の世界でも、旅行で来ていた人がやらかして問題になっていた事があったな。」
「ところ変わればで、他所に行ったら自分も何かやらかしているかもしれないけれど、その現場に居合わせたらちょっと・・・考えてしまうわ。」
「事前に情報を得て、確認しておくのって大事ですねぇ。」
 颯、蓮、栞の順に感想を言い合う。

 食事の後はいつものように付与の仕事をした後、蓮に魔道具作りについて聞いた。
 板状に切った石に付与された魔石を嵌め込むように意識すると、くぼみ部分にくっつく感じがして仕上がるのだという。
 見本があればイメージしやすいから、新しいものを作るよりも同じものを作る方が圧倒的に楽だとの事。

 魔道具師の皆さんは鑑定で魔法を持っている事に気が付いたのかと聞いてみれば、真似をして出来た人もいれば、鑑定で知ってから仕事を覚えた人もいたという。
 ソーギにいる教会の時計作りに参加した経験がある魔道具師さんは、小さなころから物を作るのが好きで、大人の作業を見ながら真似ていたら魔道具師としての魔法を覚えていたのだそう。

 よし、明日は村の誰かが魔石を嵌め込めないか試してもらおう。



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