うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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大陸を移動する猪

結婚

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 夏場はシナ国の南方にある涼しい気候の地域を多く回り、秋から冬にかけて温暖で高低差のある地域を巡っていた。
 魔獣の種類も豊富で、初めて見る動物の多さと情報量に脳内が追い付かないほど。
 生活魔法を伝える事は変わらないので、塀作りも随分上達したと思う。
 一人でしっかり完成させる事ができるようになったから、成長したでしょ?


 そして、年末年始の個人的な大事件と言えば、蓮と栞が結婚した事。
 出会って一年ちょっとですが、いつの間にそんな話に?
 え?いつからお付き合いしていたの?
 報告を聞いた時には疑問が沢山出てきた。

 二人の話?説明?弁明?によると、男女共に結婚していないと仕事上での信用度が全然違うんだって。
 そういえば以前の世界でも昭和の頃までは結婚ありきの考え方が多かったと聞くよね。
 魔道具師の蓮はジロウの前例もあるように、結婚がそこそこ遅くても大目に見られるそうなんだけれど、女性の栞は二十歳を過ぎていると聞けば『行き遅れてどうするの!』と、知らない人に言われる回数がかなりあったのだそう。
 ・・・いや、ジロウもあの村だったから寛容な環境で好きな道具作りをしていただけで、ジェドのような街中だと突き上げが酷かったのかもしれない。

 栞に言わせれば、人になって一年で行き遅れも何もあったもんじゃないし、そもそも前の世界で結婚していないから好きにさせてくれ!と思ってたんだって。
 うん、分かる。

 元の種族(?)の事や、使える魔法や魔道具の事、以前の世界の話をして理解し合える人材に出会うのも時間がかかるから、蓮と結婚しちゃいましょうかと話し合ったらしい。
 契約婚なの?
 ところがそうでもないという。

 栞が魔動キッチンカーで料理を売り歩いている時、独身と知って強引に迫るような客もいたらしく、そんな時には蓮が穏やかな口調で毒をたっぷりと含んだ言葉で撃退していたんだとか。
 相手の手が早くて暴力沙汰になったところで、結界魔道具が仕事をするので、痛い思いをするのは殴った人だけ。
 しれっと立っている蓮に不気味さを感じ、悪態をついて逃げ去る所までがセットだけれど、その場で浄化の魔道具をそっと使われるから何に腹を立てたのか忘れて帰っていく。
 ある意味洗脳状態が発動していた。
 怖っ!蓮が怖いよ。

「今の所、激しい恋情はないけれど、これはこれで良いかなと思っているの。」
 栞も蓮も同じような事を言っていた。
 似たもの夫婦になるのかな?

 そして二人の希望が思いっきり詰まった新居が颯の手でソーギに出来上がっていた。
 一階には駐車場や魔道具製作用の作業場、資材置き場。
 二階には広いパントリーやキッチンとリビング、三階は寝室を含めた私室。
 お風呂場もホテルの客室に作った物と変わりない品が設置された。

 こっそり一時帰国して報告を聞いた私は結婚祝いにプロジェクターになる魔石をプレゼントした。
 蓮が嬉々として仕上げていたので、リビングと三階の私室に設置するらしい。

 栞の部屋を増築する話がなかなか出ないなと、不思議に思ってたんだけれど、ようやく謎が判明してすっきり。
 おめでとうございます!

 ソーギの土地は蓮の名義になり、元々の家は私のインベントリに入れる事になった。
 ハマのアパートはそのままで、四人で集まる時の集合場所になっているし、蓮の出張作業所扱いにもなっている。
 

 年が明けて十一歳になった私は、広い大陸の奥を少しずつ移動している。
 各地で生活魔法を伝えながら、魔道具師や付与師を発掘して技術を広げる。

 基本的に上流階級の人がいるような街ではなく、貧しい農村部を転々と移動している。
 シセンと言う地域に行った時は、山の中でパンダを見て悶えた。
「うわぁ、生パンダだよ。野生だよ。」
 草食だからわりと大人しく、あのむっちりとした体形でのしのしと歩き、木に登っては落下して転がり、斜面で寝そべっては転がり、可愛さ爆発だ。
 凶暴さが無いとは言わないよ?
 熊だし、縄張り意識がしっかりあるけれど、ステルス結界で私の姿が見えていないから、敵認定されなかったのも大きい。


 更に移動すると、剣呑な雰囲気の地域に来た。
 気になったので検索魔法で調べて見ると、以前の世界だったら動乱に次ぐ動乱の渦中ともいえる地域だった。
 人口の75%が失われるほどの出来事って、数字を聞くだけで恐ろしい。
 
 この世界ではどうかと言えば、教会関係の大規模浄化魔法が使われたそうです。
 それでもピリピリした雰囲気が残っているのだから、宗教や人種による衝突って簡単には解決しないんだなと回れ右したくなる。
 ちなみにその情報は、学院での宗教の授業と颯を経由してフェリクスからの言葉で補足されました。

 なのに行くのかって?
 避難してきた父子が『置いてきた親に綺麗な水を飲ませたい。』と言っているのを聞いたら、断れなかったんだよね。
 
 かなり大きな河があって、その周辺に人が住んで栄えているようだけれど、出会ったリー父子が行くのはそこじゃない。

 途中、黄土高原で土を掘って作られる、伝統的で独特な地下住居の地域を通過した。
 この地下住居は温度が安定している為、夏場は湿気が多いそうだけれど、冷暖房無しで快適に過ごせるんだって。地震にも強いらしいよ?

 私のような外国の小娘が来たのが珍しいので、興味と不信感の混じる視線が痛いけれど、水を出す魔法と照明の魔法を見せたら、目を剥きつつも聞いてくれる人がいた。
 その人達が生活魔法を使えるようになった途端に、その場は大騒ぎになった。
 予定を変更して数日滞在し、村の皆さんが生活魔法を使えるようになったところでお暇したよ。

 魔法が無くても巨大な建築物があったり、段状の土地が整えられている様子は本当に驚く。
 どれ程の労力、どれ程の時間をかけて作り上げたのかと思うと、頭が下がるばかりだ。


 リーの案内で到着した村は、木造の家が多かった。
「父さん!」
 リーが一つの家の中に入り、家人に声を掛ける。
「お前、どうして戻ってきた!」
 高齢の男性のしゃがれた声がリーを叱っている。
 私の側でシャオリー(リーの息子をそう呼んでいた)が怯えていたけれど、肩を叩いて頷いて見せる。
 年齢は私と近いが、中身がおばさんの私は道中シャオリーのお姉さん扱いになっていた。

 家の中で話が終わったらしく、リーと一緒に出てきた男性が私を見て警戒する。
 こんな子供で女に何ができると言いたげな顔をしているけれど、リーが宥めていた。
 周辺の家では出て行ったはずのリーと息子が戻ったと知って、物陰から様子を見ている。

 愛用のメッセンジャーバックから木のコップを取り出し、洗浄して水を入れてシャオリーに渡す。
「ありがとう。」
 そう言って飲もうとすると、リーの父親が手を出して飲むのを止める。
「こんな怪しいもの、飲むんじゃない!」
 私を睨みつけて言うので、提案した。
「あ、ではリーさんに入れてもらった方が良いですね。」
 シャオリーがコップをリーに渡し、リーが覚えた生活魔法で新しい水を入れると、周囲がざわつき出す。
 コップを受け取ったシャオリーがこくこくと水を飲んで、ぷはっと息を吐き出し、洗浄してコップを私に返したら、ざわつきが更に大きくなった。

「な、なっ、なんなんだ!」
 リーの父親は、瞠目しながら私とリーとシャオリーの三人を何度も見ている。
「生活魔法って皆さんが使えるんですけれど、何故かこの地域は失伝しているのか、教えてくれる人がいなかったのか、使えない人が多いんです。」
「は?・・・。」
 私の言葉に人々は固まっていた。

 ということで、安全で綺麗な水を皆さん自身で出せるようになりませんか?
 そんな提案から始まった生活魔法教室。
 ここでも無事に伝える事ができた。


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