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運命のつがいと初恋 第1章
㉓
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「すごいね、なんでもある。使うけどいいのかな?」
真横に立つ東園が頷いたので陽向は調理を始めた。
目玉焼き、ベーコン、レタスとトマトのサラダは出来る。ドレッシングもあった。
キャベツに人参、玉ねぎもあるから、あとコンソメがあったらソーセージ入りのコンソメスープも出来そうだけど。
広いシステムキッチンの引き出しを開けていくと様々な香辛料の瓶が並んでいる小棚があり、そこにコンソメもあった。
スープを作っていると横で東園がうろついていて、正直ちょっと邪魔だなと思う。
「あの、レタスでもちぎる?」
頷いたのでレタスと勝手に取り出したざるを渡した。
「大きさはどのくらい?」
「自分が食べやすい大きさでいいよ」
東園は神妙に頷いて定規で測ると言い出しそうな真剣さでレタスをちぎり始めた。
朝食を作ると言った陽向だが実際は簡単なものしか作ったことはない。ざくざく切った野菜、コンソメとソーセージを鍋に入れ煮込んでいるうちに卵、ベーコンを焼く。出来た目玉焼きとベーコンを皿に盛り、ダイニングテーブルに運んだ。トマトを切ったところでレタスの様子を窺うと、ようやくちぎり終わったらしく、東園にボールに盛り付けるようにお願いした。食パンを焼き、最後にスープの味を塩こしょうで味を調えて終わりだ。
「今のうちに食べちゃおう。プロじゃないから味は保証できないよ」
「いや、美味しそうじゃないか。これだけ出来れば十分だよ。三田村はすごいな」
大げさなくらい褒められ小さい子になった気分だ。とにかく食べようと東園に座るよう促した。東園はいただきますと手を合わせ箸を取った。
「美味しいよ、ありがとう」
料理とは言えない料理だけど、満面の笑みを向けられて作った労力は霧散した。東園はいちいち感想を伝えてくれるが本当にただ焼いただけ、煮込んだだけなので恥ずかしくなってくる。
食べ終えてほどなく凛子が泣きながら起きてきた。
抱きあげるとその身体は熱く陽向があやしている間に東園が水分を取らせる。
「まだきつそうだね」
お白湯を嫌がる凛子に紙パックのリンゴジュースを飲ませながら東園が頷く。
額をそっと触り「熱もまだあるな」と呟いた。
「抱っこ代わって」
飲み終えた紙パックをゴミ箱に捨てた東園に凛子を預ける。
「凛子ちゃん、お腹はどうかな? なにか食べるかな」
鼻が赤く、目は潤み目の周りの皮膚もうっすら赤い凛子がいやいやと首を振った。
「そうかー、でも病気をやっつけるには元気もりもりにならないといけないんだ。凛子ちゃんが食べられそうなもの、教えてくれる?」
凛子の顔をのぞき込むとやはり首を振る。
「じゃあアイスとか冷たいのは食べられるかな?」
「アイス」
頷いた凛子の声がかすれている。喉が腫れてしゃべるのが億劫なのかもしれない。
「そっか」
凛子の頭を撫でていると東園が「バニラのカップアイスならあるはず」と頷いた。
前回は陽向が口に運んだが今回は東園が担当した。
同じ手が通じるかなとドキドキしながら薬をサンドしたアイスを凛子の口に運ぶ東園の手元を眺める。一口目、全く薬の存在に気づくことなく飲み込んだ凛子は五口目まではなんとか食べたがそのあとは要らないと首を振った。
東園はもうちょっと食べさせたかったようだが、それ以上は無理のようで泣かないうちに陽向は凛子を抱き上げた。少しでも薬が身体に入って良かったと思う。
外が明るくなってきたのでカーテンの隙間から外を覗く。この、邸宅が四軒は建つほどの広い庭に、小さなブランコと三輪車が置いてある。
「あれは凛子ちゃんの三輪車?」
陽向に抱かれた凛子が潤んだ瞳を外にむけ「うん」と頷いた。
しばらく二人で外を眺めていると東園が隣に立って「代わるよ」と凛子を抱き取った。
「あ、9時には家政婦さんが来るんだよね。その前に帰ろうかなと思うけど大丈夫そう?」
東園を見ると大きく横に首を振り、凛子は手を伸ばし陽向に抱かれようとむずかった。
「ん? こっち来る?」
手を伸ばす凛子を胸に抱くとぎゅっと陽向のパジャマをつかんだ。その仕草が可愛らしくキュンときた。
「凛子は三田村にいて欲しいらしい。なあ、やっぱりシッターの件、駄目か?」
「え? ああ、そうね」
腕の中の凛子がじっと陽向を見ている。可愛い凛子と、姉の子を育てる叔父。手助けしたいのはやまやま
だけれど。
「でもな、ううん、やっぱりちょっと」
「なにか引っかかる事がある?」
「引っかかるって言うか、その、僕はほら、Ωだし、」
もごもご言う陽向に東園は「それか」と微笑んだ。
「今はα用の興奮抑制剤も多種あるし俺も予防の為に服用している。間違っても三田村に襲いかかることはないから安心して」
「そう、かもしれないけど」
α向けの薬が普及しているのは知っていたが陽向は服用している人間を見たことがなかった。そもそもΩもだがαも人口が少ない。
立場のある人間は行き会うこと自体少ないΩの、しかもそうない公共の場での発情に備えての自衛もしているのかと驚く。
Ωの発情に誘われて意志とは関係なく子をなしてしまい慰謝料を取られるケースもたまにニュースで聞くから必要なのだろう。まあ、東園はそもそも陽向に誘われるほど飢えてないだろう。
「じゃあ、えーとちゃんとした人が見つかるまでならいいよ。僕も次の就職先見つかってないし」
「そうか、ありがとう。助かるよ」
東園の満面の笑みに、つられて微笑む。そして「いつ引っ越せる?」と笑顔のまま聞かれた。
「引っ越し? 近くに?」
確かに自宅からはちょっと遠いかもしれない。しかしこの近くは地価が高いと聞いている、よって家賃相場も高いはずだ。貯金は出来るだけ取っておきたいので引っ越しはしたくない。
「いや、ここに」
「は?」
「上に部屋があって、ベッド、クローゼット、ラックはあるから使って。ベッド、こだわりがあるならこちらのを捨てていいから」
「いやいやいや、それじゃここに住むって事になるよね」
東園は力強く頷いた。
「三田村にはずっと家にいて欲しいと思ってる。以前は仕事で深夜まで手が離せないときもあったから、今後そういう事が無いとは言い切れない。だから朝や夜、凛子が寂しくないようにいてもらえると助かる。出来る限りないようにしているけれど、出張もないとも言い切れない。通いだと大変だし、夜遅くに三田村を帰すのは危なくて出来ない」
危ないとは、発情期の事だろうか。
「ええっと、そんな危ないってほどでは無いんだけど」
発情期に薬を飲まず道をうろついていたら危ないだろうけれど密室ではない屋外はΩらしくない陽向にとってそれほど恐ろしくない。もちろん深夜は別だし、東園なりにΩの陽向を気遣っての発言だろうから頭から反論するのも違うかなと思う。
東園が凛子とともに生活をする人を求めているのはよく分かった。
「ええと、なんて言ったらいいのかな、その、一緒に暮らすって、本当に大丈夫、かな」
「何が心配?」
「えっと、家族みたいに暮らすって事でしょう? その、僕は凛子ちゃんにどう接するのが正解か分からないかも。ほら、僕らも今日、いや昨日か、久しぶりに会ったばかりだし」
「三田村は真面目だな」
抱っこに飽きてきたのか凛子が降りたがったのでソファに座らせた。
「普段の三田村のまま、ここで暮らしてくれるだけでいい。暮らしていく中で、色々とあるだろうがその都度話し合えたらいいと思う」
そういうものだろうか。他人と暮らしたことがないから分からない。
「えーと、ううん、じゃあ、試しにちょっと泊まってみて、でもいい? シッターもだけど、家族以外と暮らした事がないから、出来るかどうか正直分からない」
「もちろん」
破顔した東園を見ながら陽向は苦笑する。とりあえずのシッターが決まり東園はご機嫌だ。凛子の体温を測り忘れていたのを思い出し、体温計を出してもらった。
これからここで、凛子と過ごすならばこういった小物の場所も教えてもらわないとなと思う。
凛子はやはり、昨日より熱が上がっていた。
真横に立つ東園が頷いたので陽向は調理を始めた。
目玉焼き、ベーコン、レタスとトマトのサラダは出来る。ドレッシングもあった。
キャベツに人参、玉ねぎもあるから、あとコンソメがあったらソーセージ入りのコンソメスープも出来そうだけど。
広いシステムキッチンの引き出しを開けていくと様々な香辛料の瓶が並んでいる小棚があり、そこにコンソメもあった。
スープを作っていると横で東園がうろついていて、正直ちょっと邪魔だなと思う。
「あの、レタスでもちぎる?」
頷いたのでレタスと勝手に取り出したざるを渡した。
「大きさはどのくらい?」
「自分が食べやすい大きさでいいよ」
東園は神妙に頷いて定規で測ると言い出しそうな真剣さでレタスをちぎり始めた。
朝食を作ると言った陽向だが実際は簡単なものしか作ったことはない。ざくざく切った野菜、コンソメとソーセージを鍋に入れ煮込んでいるうちに卵、ベーコンを焼く。出来た目玉焼きとベーコンを皿に盛り、ダイニングテーブルに運んだ。トマトを切ったところでレタスの様子を窺うと、ようやくちぎり終わったらしく、東園にボールに盛り付けるようにお願いした。食パンを焼き、最後にスープの味を塩こしょうで味を調えて終わりだ。
「今のうちに食べちゃおう。プロじゃないから味は保証できないよ」
「いや、美味しそうじゃないか。これだけ出来れば十分だよ。三田村はすごいな」
大げさなくらい褒められ小さい子になった気分だ。とにかく食べようと東園に座るよう促した。東園はいただきますと手を合わせ箸を取った。
「美味しいよ、ありがとう」
料理とは言えない料理だけど、満面の笑みを向けられて作った労力は霧散した。東園はいちいち感想を伝えてくれるが本当にただ焼いただけ、煮込んだだけなので恥ずかしくなってくる。
食べ終えてほどなく凛子が泣きながら起きてきた。
抱きあげるとその身体は熱く陽向があやしている間に東園が水分を取らせる。
「まだきつそうだね」
お白湯を嫌がる凛子に紙パックのリンゴジュースを飲ませながら東園が頷く。
額をそっと触り「熱もまだあるな」と呟いた。
「抱っこ代わって」
飲み終えた紙パックをゴミ箱に捨てた東園に凛子を預ける。
「凛子ちゃん、お腹はどうかな? なにか食べるかな」
鼻が赤く、目は潤み目の周りの皮膚もうっすら赤い凛子がいやいやと首を振った。
「そうかー、でも病気をやっつけるには元気もりもりにならないといけないんだ。凛子ちゃんが食べられそうなもの、教えてくれる?」
凛子の顔をのぞき込むとやはり首を振る。
「じゃあアイスとか冷たいのは食べられるかな?」
「アイス」
頷いた凛子の声がかすれている。喉が腫れてしゃべるのが億劫なのかもしれない。
「そっか」
凛子の頭を撫でていると東園が「バニラのカップアイスならあるはず」と頷いた。
前回は陽向が口に運んだが今回は東園が担当した。
同じ手が通じるかなとドキドキしながら薬をサンドしたアイスを凛子の口に運ぶ東園の手元を眺める。一口目、全く薬の存在に気づくことなく飲み込んだ凛子は五口目まではなんとか食べたがそのあとは要らないと首を振った。
東園はもうちょっと食べさせたかったようだが、それ以上は無理のようで泣かないうちに陽向は凛子を抱き上げた。少しでも薬が身体に入って良かったと思う。
外が明るくなってきたのでカーテンの隙間から外を覗く。この、邸宅が四軒は建つほどの広い庭に、小さなブランコと三輪車が置いてある。
「あれは凛子ちゃんの三輪車?」
陽向に抱かれた凛子が潤んだ瞳を外にむけ「うん」と頷いた。
しばらく二人で外を眺めていると東園が隣に立って「代わるよ」と凛子を抱き取った。
「あ、9時には家政婦さんが来るんだよね。その前に帰ろうかなと思うけど大丈夫そう?」
東園を見ると大きく横に首を振り、凛子は手を伸ばし陽向に抱かれようとむずかった。
「ん? こっち来る?」
手を伸ばす凛子を胸に抱くとぎゅっと陽向のパジャマをつかんだ。その仕草が可愛らしくキュンときた。
「凛子は三田村にいて欲しいらしい。なあ、やっぱりシッターの件、駄目か?」
「え? ああ、そうね」
腕の中の凛子がじっと陽向を見ている。可愛い凛子と、姉の子を育てる叔父。手助けしたいのはやまやま
だけれど。
「でもな、ううん、やっぱりちょっと」
「なにか引っかかる事がある?」
「引っかかるって言うか、その、僕はほら、Ωだし、」
もごもご言う陽向に東園は「それか」と微笑んだ。
「今はα用の興奮抑制剤も多種あるし俺も予防の為に服用している。間違っても三田村に襲いかかることはないから安心して」
「そう、かもしれないけど」
α向けの薬が普及しているのは知っていたが陽向は服用している人間を見たことがなかった。そもそもΩもだがαも人口が少ない。
立場のある人間は行き会うこと自体少ないΩの、しかもそうない公共の場での発情に備えての自衛もしているのかと驚く。
Ωの発情に誘われて意志とは関係なく子をなしてしまい慰謝料を取られるケースもたまにニュースで聞くから必要なのだろう。まあ、東園はそもそも陽向に誘われるほど飢えてないだろう。
「じゃあ、えーとちゃんとした人が見つかるまでならいいよ。僕も次の就職先見つかってないし」
「そうか、ありがとう。助かるよ」
東園の満面の笑みに、つられて微笑む。そして「いつ引っ越せる?」と笑顔のまま聞かれた。
「引っ越し? 近くに?」
確かに自宅からはちょっと遠いかもしれない。しかしこの近くは地価が高いと聞いている、よって家賃相場も高いはずだ。貯金は出来るだけ取っておきたいので引っ越しはしたくない。
「いや、ここに」
「は?」
「上に部屋があって、ベッド、クローゼット、ラックはあるから使って。ベッド、こだわりがあるならこちらのを捨てていいから」
「いやいやいや、それじゃここに住むって事になるよね」
東園は力強く頷いた。
「三田村にはずっと家にいて欲しいと思ってる。以前は仕事で深夜まで手が離せないときもあったから、今後そういう事が無いとは言い切れない。だから朝や夜、凛子が寂しくないようにいてもらえると助かる。出来る限りないようにしているけれど、出張もないとも言い切れない。通いだと大変だし、夜遅くに三田村を帰すのは危なくて出来ない」
危ないとは、発情期の事だろうか。
「ええっと、そんな危ないってほどでは無いんだけど」
発情期に薬を飲まず道をうろついていたら危ないだろうけれど密室ではない屋外はΩらしくない陽向にとってそれほど恐ろしくない。もちろん深夜は別だし、東園なりにΩの陽向を気遣っての発言だろうから頭から反論するのも違うかなと思う。
東園が凛子とともに生活をする人を求めているのはよく分かった。
「ええと、なんて言ったらいいのかな、その、一緒に暮らすって、本当に大丈夫、かな」
「何が心配?」
「えっと、家族みたいに暮らすって事でしょう? その、僕は凛子ちゃんにどう接するのが正解か分からないかも。ほら、僕らも今日、いや昨日か、久しぶりに会ったばかりだし」
「三田村は真面目だな」
抱っこに飽きてきたのか凛子が降りたがったのでソファに座らせた。
「普段の三田村のまま、ここで暮らしてくれるだけでいい。暮らしていく中で、色々とあるだろうがその都度話し合えたらいいと思う」
そういうものだろうか。他人と暮らしたことがないから分からない。
「えーと、ううん、じゃあ、試しにちょっと泊まってみて、でもいい? シッターもだけど、家族以外と暮らした事がないから、出来るかどうか正直分からない」
「もちろん」
破顔した東園を見ながら陽向は苦笑する。とりあえずのシッターが決まり東園はご機嫌だ。凛子の体温を測り忘れていたのを思い出し、体温計を出してもらった。
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凛子はやはり、昨日より熱が上がっていた。
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