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運命のつがいと初恋 第2章
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誠二郎と智紀が帰宅した後、凛子は興奮したのかなかなか寝付けなかった。ベッドで眠ったかと思ったら十分もしないうちに起きてきて、それを三度繰り返した。よほど楽しかったんだろうなと思う。
凛子の隣で危うく眠りそうになったが、夜飲む分の薬がまだなのでまどろみを振り払い凛子の部屋を抜け出した。
自室に入るとすでにエアコンで部屋は暖まっていた。そういえばまだみんなで食事をしていたとき、凛子が欠伸を漏らし始めたので東園から凛子の部屋を暖めるついでに陽向の部屋もつけてこようか、と聞かれたのだった。
東園は結構こまめな気がするがあれでがさつなら陽向の方がよっぽど気が利かないしがさつな気がする。
放り投げていたボストンバッグから薬袋を取り出し棚の上に置く。
今までごくたまにだけど、飲み忘れることもあった抑制剤だが、今回ばかりはついうっかりは出来ない。
荷解きをしていると部屋の隅に年末実家に帰るとき持って帰ろうと思っていたお土産や、東園へのクリスマスプレゼントが積まれているのが視界に入った。
昨年まで帰省すると付き合っている人はいないのか、結婚する気はないのか、なんて聞かれて辟易していた。でも今はそんな自分を少し反省している。
お土産を手に取りため息をつく。
今度帰るときはもっとしっかり両親の話を聞こうと思う。
おもちゃやぬいぐるみ、お年玉はきっと姪達が楽しみにしているだろうから明日送ろうと決め、陽向は抑制剤と東園へのクリスマスプレゼントを手に階下へ降りた。
「やっと寝たか」
キッチンに東園がいた。
良かった、下から物音が聞こえたのでまだ寝ていないだろうと踏んだが当たっていた。
「まだ分からないよ、起きてくるかも」
「昂ってるんだろうな。ありがとう、なんか飲むか?」
「いいよ、自分でする」
水だし、といいながらダイニングテーブルに荷物を置いてキッチンに入る。
「わ、なにこの香り、あまい」
ガラス製の急須にお湯を注ぐ東園の手元を覗きこむ。
「母さんが置いていったお茶だよ。少しいる?」
「うん、じゃあ薬飲んだら貰おうかな」
コップに水を入れ、包装シートから白い錠剤を取り出し手のひらに転がす。
効いてくれよと思いながら口に含んで水で流し込む。
ゴクリと飲み込んでコップを洗っていると隣から「今度の薬は強いのか?」と東園が包装シートを見ながら聞いてきた。
「特別強いわけじゃないらしい。今までと種類が違うって」
「そうか、身体に負担がかかりそうだから強くないならいいけど」
「負担が掛かってもちゃんと効いてくれないと。本当はすごく強いのでも良かったんだけど」
ため息交じりに言うと東園に「おい」と窘められる。
「これ、なんだ?」
ダイニングテーブルにティーカップを置きながら東園が陽向の持ってきた包み紙を取り上げた。
「あ、それ馨にあげるやつ」
「え?」
「どうぞ、貰ってやって。クリスマスプレゼントに買った物だから」
「え? 俺の? 開けていい?」
「うん、遅くなってごめんだけど」
椅子に座って東園の置いたティーカップを引き寄せる。
甘い、フルーティな匂いがする。覗き込むと紅茶にしては薄い色合いだ。
目の前で東園が包みを慎重に開いている。陽向はテープ部分を破ってしまうので、丁寧だなと感心しつつ、淹れてくれたお茶を一口飲んでみる。
「香りが甘酸っぱい。これは紅茶かな?」
「さあ、ノンカフェインだとは聞いたがパッケージにはなにも書いていないな。イチゴの香りって言っていたよ。お、マフラー」
「うん」
グレーのマフラーを手に取ってじっと眺めている。よく見たら東園の目の色と近い気がする。
「お茶、冷めるよ」
そう高い物でもない、きっと東園はもっと質の良い高価なものを持っているだろうにあんまり長く眺めているから居心地が悪くなる。
そう喜んでもなさそうに見えるから違う物の方が良かったのかもしれないなぁと思う。
まあ、付き合いも短いししょうが無い、気持ちの問題だからなと割り切ることにする。
「ああ、そうだった。……これありがとう」
「ううん。あ、そういえば馨っていつから仕事?」
「明日からだけど、休みとろうか?」
「いやいや、全然大丈夫だから」
明日からは普通の日々が帰ってくるのか、と思う。
ちっとも休めた感じではなかったし、入院中、食事もままならずただでさえ痩せ型なのに更に数キロ減ってしまった。
しっかり薬を飲んで、しっかり食べる。次の発情期に備えなきゃなと思う。
そして東園に話しておかなきゃいけないことがある。
「あのさ、今回、休みに重なったから、三浦さんと馨の両親がいてくれて困ることがなかったかもしれないけどさ、」
「ああ」
「万が一って思いたいけど、次も、また次も体調が悪くなる可能性もあるから、次の人を探した方がいいような気がするんだ」
「次……、陽向はなにも心配しなくていいよ」
「心配するしないって問題じゃなくて。うーん、りんちゃんが困るだろって事」
東園は小首を傾げ陽向を見る。
「陽向が急にいないってのは、確かに困るだろうな。だけど、普通の家庭で、主に育児している人が突然病気に罹ることはままあるだろ。いつもいる人がいない、そんな状況も体験して子どもは成長していくんじゃないかな」
「……それは、まあ、そうかもだけど」
「短期間なら三浦さんや単発のシッターを頼んでもいいし、難しく考える必要ないと思っているよ」
微笑まれて閉口する。
しばらくお互いの目をじっと見合っていたけれど陽向が先に目をそらした。
なんだか負けた気分になった陽向はまあ、次はきっと大丈夫だけどねと小さく呟いた。
凛子の隣で危うく眠りそうになったが、夜飲む分の薬がまだなのでまどろみを振り払い凛子の部屋を抜け出した。
自室に入るとすでにエアコンで部屋は暖まっていた。そういえばまだみんなで食事をしていたとき、凛子が欠伸を漏らし始めたので東園から凛子の部屋を暖めるついでに陽向の部屋もつけてこようか、と聞かれたのだった。
東園は結構こまめな気がするがあれでがさつなら陽向の方がよっぽど気が利かないしがさつな気がする。
放り投げていたボストンバッグから薬袋を取り出し棚の上に置く。
今までごくたまにだけど、飲み忘れることもあった抑制剤だが、今回ばかりはついうっかりは出来ない。
荷解きをしていると部屋の隅に年末実家に帰るとき持って帰ろうと思っていたお土産や、東園へのクリスマスプレゼントが積まれているのが視界に入った。
昨年まで帰省すると付き合っている人はいないのか、結婚する気はないのか、なんて聞かれて辟易していた。でも今はそんな自分を少し反省している。
お土産を手に取りため息をつく。
今度帰るときはもっとしっかり両親の話を聞こうと思う。
おもちゃやぬいぐるみ、お年玉はきっと姪達が楽しみにしているだろうから明日送ろうと決め、陽向は抑制剤と東園へのクリスマスプレゼントを手に階下へ降りた。
「やっと寝たか」
キッチンに東園がいた。
良かった、下から物音が聞こえたのでまだ寝ていないだろうと踏んだが当たっていた。
「まだ分からないよ、起きてくるかも」
「昂ってるんだろうな。ありがとう、なんか飲むか?」
「いいよ、自分でする」
水だし、といいながらダイニングテーブルに荷物を置いてキッチンに入る。
「わ、なにこの香り、あまい」
ガラス製の急須にお湯を注ぐ東園の手元を覗きこむ。
「母さんが置いていったお茶だよ。少しいる?」
「うん、じゃあ薬飲んだら貰おうかな」
コップに水を入れ、包装シートから白い錠剤を取り出し手のひらに転がす。
効いてくれよと思いながら口に含んで水で流し込む。
ゴクリと飲み込んでコップを洗っていると隣から「今度の薬は強いのか?」と東園が包装シートを見ながら聞いてきた。
「特別強いわけじゃないらしい。今までと種類が違うって」
「そうか、身体に負担がかかりそうだから強くないならいいけど」
「負担が掛かってもちゃんと効いてくれないと。本当はすごく強いのでも良かったんだけど」
ため息交じりに言うと東園に「おい」と窘められる。
「これ、なんだ?」
ダイニングテーブルにティーカップを置きながら東園が陽向の持ってきた包み紙を取り上げた。
「あ、それ馨にあげるやつ」
「え?」
「どうぞ、貰ってやって。クリスマスプレゼントに買った物だから」
「え? 俺の? 開けていい?」
「うん、遅くなってごめんだけど」
椅子に座って東園の置いたティーカップを引き寄せる。
甘い、フルーティな匂いがする。覗き込むと紅茶にしては薄い色合いだ。
目の前で東園が包みを慎重に開いている。陽向はテープ部分を破ってしまうので、丁寧だなと感心しつつ、淹れてくれたお茶を一口飲んでみる。
「香りが甘酸っぱい。これは紅茶かな?」
「さあ、ノンカフェインだとは聞いたがパッケージにはなにも書いていないな。イチゴの香りって言っていたよ。お、マフラー」
「うん」
グレーのマフラーを手に取ってじっと眺めている。よく見たら東園の目の色と近い気がする。
「お茶、冷めるよ」
そう高い物でもない、きっと東園はもっと質の良い高価なものを持っているだろうにあんまり長く眺めているから居心地が悪くなる。
そう喜んでもなさそうに見えるから違う物の方が良かったのかもしれないなぁと思う。
まあ、付き合いも短いししょうが無い、気持ちの問題だからなと割り切ることにする。
「ああ、そうだった。……これありがとう」
「ううん。あ、そういえば馨っていつから仕事?」
「明日からだけど、休みとろうか?」
「いやいや、全然大丈夫だから」
明日からは普通の日々が帰ってくるのか、と思う。
ちっとも休めた感じではなかったし、入院中、食事もままならずただでさえ痩せ型なのに更に数キロ減ってしまった。
しっかり薬を飲んで、しっかり食べる。次の発情期に備えなきゃなと思う。
そして東園に話しておかなきゃいけないことがある。
「あのさ、今回、休みに重なったから、三浦さんと馨の両親がいてくれて困ることがなかったかもしれないけどさ、」
「ああ」
「万が一って思いたいけど、次も、また次も体調が悪くなる可能性もあるから、次の人を探した方がいいような気がするんだ」
「次……、陽向はなにも心配しなくていいよ」
「心配するしないって問題じゃなくて。うーん、りんちゃんが困るだろって事」
東園は小首を傾げ陽向を見る。
「陽向が急にいないってのは、確かに困るだろうな。だけど、普通の家庭で、主に育児している人が突然病気に罹ることはままあるだろ。いつもいる人がいない、そんな状況も体験して子どもは成長していくんじゃないかな」
「……それは、まあ、そうかもだけど」
「短期間なら三浦さんや単発のシッターを頼んでもいいし、難しく考える必要ないと思っているよ」
微笑まれて閉口する。
しばらくお互いの目をじっと見合っていたけれど陽向が先に目をそらした。
なんだか負けた気分になった陽向はまあ、次はきっと大丈夫だけどねと小さく呟いた。
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