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運命のつがいと初恋 第2章
⑲
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「いってきます」
あんなに泣いていたのに、元気に手を振る凛子にほっとしつつ二人を見送った陽向はテレビをつけ、いつものようにちょっと休憩を取る。そしていつもこののんびりした時間にカフェラテと朝食の残りを食べる。
東園はなんとしても朝食は一緒に食べたいと言うが、凛子が幼稚園へ登園する日はどうしたって陽向がちゃんと食べ終える時間は取れないのだ。
いま、目の前に食べ物があるし飲み物も準備した、だけど食べる気にならない。
なにか、心がそわそわして、身体を動かしたい気がする。
居ても立ってもいられなくて陽向はバタバタと二階へ上がり凛子と自分の部屋を整え、空気の入れ換えをした。
それでもまだご飯を食べられるほど動けていない気がする。
陽向は下に降りて洗濯機を回そうと脱衣所に入った。
洗濯籠から洗濯物を洗濯機に入れようと屈んだとき、ふとその隣のクリーニングバッグが目にとまった。
なに、と思うこともなくその中に手を突っ込んだ。中に入っているのは東園のカッターシャツ、それだけだ。
中身を引き出した陽向は引き出した二枚の使用済みシャツを抱えて顔を近づける。大きく息を吸い込むと身体の芯がぐにゃりと曲がってしまう感覚を覚えた。
二枚のシャツを抱え陽向は立ち上がる。
さっきまで気力は充実、身体も異様に元気だったのにも関わらず、一歩足を出すと力が上手く入らずよろけてしまった。
壁により掛かった陽向はよろよろしながら二階に上がり、今まで入ったことのない東園の部屋を開いた。
陽向の部屋の倍ほどある広々とした部屋にダブルベッドより大きい、キングサイズと思われるベッドがどんと置いてある。
目的がそこなので陽向の目はそれしか拾わない。手元のシャツを顔に押しつけながらまっすぐベッドに進み少し乱れた布団を剥がし真ん中に座り込んだ。
顔にシャツを押しつけたままベッドに寝そべり、シャツから顔を離すと今度はシーツの匂いを嗅いだ。
ああこれこれ、この匂い。
頭がぼんやりするほどいい匂いだ。
抱えたシャツと、ベッドから漂う匂いに包まれてしばらくぼうっとしていた陽向は肩が冷たくなってきて足下に寄せた布団を引き上げた。
布団にくるまると最高に心地よく、陽向は気持ちよさに目を閉じた。
遠くで自分を呼ぶ声がする。
女の人の声、これは三浦だ。
あれ、二度寝しちゃったのかな、陽向は慌てて起き上がった。それと同時に「ええ、まさか誘拐じゃ、」といいながら三浦が部屋の扉を開いた。
「あ、ごめんなさい、二度寝しちゃった」
「え」
ノブを握ったまま、三浦が目を瞬かせている。
今日何をどこまでしていたか思い出せない。早くベッドから抜け出して仕事しなきゃいけないのに、身体が動こうとしない。
それどころか早く布団の中に戻りたくて堪らない。掴んだ布を引き上げ胸に抱える。
「陽向さんそれって、」
「え、……え、えこれなに、」
三浦が指すので手元を見ると自分が握っているものが布団ではなくカッターシャツで驚く。
しかも使用済みだ。
さっと血の気が引いておそるおそる三浦を見ると、三浦は口を大きく開けたまま陽向とカッターシャツ交互に見て「あ」と声を上げた。
「陽向さん、今日はそこでゆっくり休んで下さいね。もしなにか食べたくなったら教えて下さい、持ってきますので」
「え、えええ、いや、休まなくても」
「大丈夫ですよ、こっちのことは。とにかくゆっくり、ゴロゴロしてて下さいね」
「え、や、」
待って、と言い終わらぬ間に三浦は扉を閉めた。
すぐ追いかけなくちゃ、朝からなにもしていないかも……と思うのに身体は一向に動く気配がない。
座ったまま、三浦に申し訳ないと思いながら手元のカッターシャツを見る。
本当に、なんでこれ持っているんだろう。
使用済みって。
他人の使った後のカッターシャツなんて触りたいと思ったこともないのに。
しかも扉までの距離が遠い、ここは陽向の部屋じゃない。
陽向の部屋じゃなく、もちろん凛子の部屋じゃない、カーテンの色が違う。
となるとこの家であとベッドがあるだろう部屋は東園の部屋だけだ。
掃除しなくていいと言われていたので、一度も入ったことのない部屋だ。
絶対怒られる。
勝手に部屋へ入った上に陽向はベッドにいる。
いろいろ絶望的状況なのにそれでも、陽向はここから動けない。
なんなのこれ。どうしたの自分。
顔を手で覆うとそこからふんわりといい香りが立ち上ぼりはっとした。
カッターシャツを掴み顔に押しつける。
肺いっぱいにシャツの匂いを吸い込むと身体の力が抜け思考がさらに滲んでゆく。
この匂いがもっと欲しい。無性に欲しい。
陽向はゆっくりベッドから離れ部屋を見回す。
部屋の端にウォーキングクローゼットを見つけ、そこに掛かっている服を片っ端から引き抜きベッドへ運んだ。
それを全部ベッドの中に入れて陽向はその中心に寝転がる。
上から布団をかぶれば完璧だ。
陽向の最高に心地よい城ができあがった。
いい匂いと体温で徐々に温まる布団の中はただただ天国だと感じた。
あんなに泣いていたのに、元気に手を振る凛子にほっとしつつ二人を見送った陽向はテレビをつけ、いつものようにちょっと休憩を取る。そしていつもこののんびりした時間にカフェラテと朝食の残りを食べる。
東園はなんとしても朝食は一緒に食べたいと言うが、凛子が幼稚園へ登園する日はどうしたって陽向がちゃんと食べ終える時間は取れないのだ。
いま、目の前に食べ物があるし飲み物も準備した、だけど食べる気にならない。
なにか、心がそわそわして、身体を動かしたい気がする。
居ても立ってもいられなくて陽向はバタバタと二階へ上がり凛子と自分の部屋を整え、空気の入れ換えをした。
それでもまだご飯を食べられるほど動けていない気がする。
陽向は下に降りて洗濯機を回そうと脱衣所に入った。
洗濯籠から洗濯物を洗濯機に入れようと屈んだとき、ふとその隣のクリーニングバッグが目にとまった。
なに、と思うこともなくその中に手を突っ込んだ。中に入っているのは東園のカッターシャツ、それだけだ。
中身を引き出した陽向は引き出した二枚の使用済みシャツを抱えて顔を近づける。大きく息を吸い込むと身体の芯がぐにゃりと曲がってしまう感覚を覚えた。
二枚のシャツを抱え陽向は立ち上がる。
さっきまで気力は充実、身体も異様に元気だったのにも関わらず、一歩足を出すと力が上手く入らずよろけてしまった。
壁により掛かった陽向はよろよろしながら二階に上がり、今まで入ったことのない東園の部屋を開いた。
陽向の部屋の倍ほどある広々とした部屋にダブルベッドより大きい、キングサイズと思われるベッドがどんと置いてある。
目的がそこなので陽向の目はそれしか拾わない。手元のシャツを顔に押しつけながらまっすぐベッドに進み少し乱れた布団を剥がし真ん中に座り込んだ。
顔にシャツを押しつけたままベッドに寝そべり、シャツから顔を離すと今度はシーツの匂いを嗅いだ。
ああこれこれ、この匂い。
頭がぼんやりするほどいい匂いだ。
抱えたシャツと、ベッドから漂う匂いに包まれてしばらくぼうっとしていた陽向は肩が冷たくなってきて足下に寄せた布団を引き上げた。
布団にくるまると最高に心地よく、陽向は気持ちよさに目を閉じた。
遠くで自分を呼ぶ声がする。
女の人の声、これは三浦だ。
あれ、二度寝しちゃったのかな、陽向は慌てて起き上がった。それと同時に「ええ、まさか誘拐じゃ、」といいながら三浦が部屋の扉を開いた。
「あ、ごめんなさい、二度寝しちゃった」
「え」
ノブを握ったまま、三浦が目を瞬かせている。
今日何をどこまでしていたか思い出せない。早くベッドから抜け出して仕事しなきゃいけないのに、身体が動こうとしない。
それどころか早く布団の中に戻りたくて堪らない。掴んだ布を引き上げ胸に抱える。
「陽向さんそれって、」
「え、……え、えこれなに、」
三浦が指すので手元を見ると自分が握っているものが布団ではなくカッターシャツで驚く。
しかも使用済みだ。
さっと血の気が引いておそるおそる三浦を見ると、三浦は口を大きく開けたまま陽向とカッターシャツ交互に見て「あ」と声を上げた。
「陽向さん、今日はそこでゆっくり休んで下さいね。もしなにか食べたくなったら教えて下さい、持ってきますので」
「え、えええ、いや、休まなくても」
「大丈夫ですよ、こっちのことは。とにかくゆっくり、ゴロゴロしてて下さいね」
「え、や、」
待って、と言い終わらぬ間に三浦は扉を閉めた。
すぐ追いかけなくちゃ、朝からなにもしていないかも……と思うのに身体は一向に動く気配がない。
座ったまま、三浦に申し訳ないと思いながら手元のカッターシャツを見る。
本当に、なんでこれ持っているんだろう。
使用済みって。
他人の使った後のカッターシャツなんて触りたいと思ったこともないのに。
しかも扉までの距離が遠い、ここは陽向の部屋じゃない。
陽向の部屋じゃなく、もちろん凛子の部屋じゃない、カーテンの色が違う。
となるとこの家であとベッドがあるだろう部屋は東園の部屋だけだ。
掃除しなくていいと言われていたので、一度も入ったことのない部屋だ。
絶対怒られる。
勝手に部屋へ入った上に陽向はベッドにいる。
いろいろ絶望的状況なのにそれでも、陽向はここから動けない。
なんなのこれ。どうしたの自分。
顔を手で覆うとそこからふんわりといい香りが立ち上ぼりはっとした。
カッターシャツを掴み顔に押しつける。
肺いっぱいにシャツの匂いを吸い込むと身体の力が抜け思考がさらに滲んでゆく。
この匂いがもっと欲しい。無性に欲しい。
陽向はゆっくりベッドから離れ部屋を見回す。
部屋の端にウォーキングクローゼットを見つけ、そこに掛かっている服を片っ端から引き抜きベッドへ運んだ。
それを全部ベッドの中に入れて陽向はその中心に寝転がる。
上から布団をかぶれば完璧だ。
陽向の最高に心地よい城ができあがった。
いい匂いと体温で徐々に温まる布団の中はただただ天国だと感じた。
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