運命のつがいと初恋

鈴本ちか

文字の大きさ
53 / 76
運命のつがいと初恋 第3章

しおりを挟む
 ひっと声にならない声をあげる陽向の生え際を東園の舌がなぞる。そのまま首の後ろまで来ると今度はうなじに鼻を押しつけた。

「ああ、甘いな」
「んん、」

 うなじを舐められながらおかしいなと思う。Ωにとって生命線なのになぜかそこを東園に晒しても怖い感じがしない。何度もうなじにキスをされ、吸い付かれ、ちょっとした弾みで咬まれてもおかしくないのに止める事が出来ない。

「うぅ、あ、」
「陽向、いやじゃないの?」

 いやかどうかと聞かれるといやでは無く頷く。

「そう。……キスしていい?」

 心なしか嬉しそうに囁いた東園はこめかみや頬にキスを落とす。もうすでにいろんなところにされているのに、唇だけは聞くんだと思う。
 陽向が頷くと東園は背後から抱いていた腕をゆるめ、今度は正面から抱きしめた。
 胸に顔を埋め、陽向は息をいっぱいに吸い込む。
 今までにないこってりした匂いだ。
 いつもと同じ匂いではあるのに普段より濃密に感じる。
 夜だから? 
 近いから? 
 昨日抱きしめられたときと明らかに違う。

「陽向」 

 名前を呼ばれて反射的に顔を上げる。あ、と思うまもなく唇が近づき重なった。
 柔らかく、温かい感触に驚き、反射的に身を引こうとしたが後頭部に手を添えていた東園が許さない。
 唇の感触を味わうようにふわふわと唇が重なっては離れ、キスってこんな感じなのか、ちょっと気持ちがいいかもと肩の力が抜ける。
 きっと東園にも伝わったと思えるくらい動悸がしたけどほんの少しだけ落ち着いてきた。
 離れてゆく顔を見上げ、こっちは心臓がおかしくなって、顔も多分真っ赤だろうというのにそちらは随分涼しげなお顔で、と思う。
 こんな時でも東園の顔面偏差値は高く保たれている、というかいつも見るより色気がプラスされて直視が厳しい。
 じっと顔を覗き込むようにされて、耐えられず目をそらすと顎を指で持ち上げられまた唇が重なる。またふわふわと唇が重なりなんとも言えない感触にふっと笑みがこぼれる。
 その瞬間待っていたかのように東園の舌がぬると口内に侵入してきた。

「ん、……んっ」

 驚いて東園から離れようと胸を押すが頭と腰をしっかり押さえられ、またも逃げられない。差し込まれた舌が陽向の中を隅々まで舐めあげ、にゅちゃにゅちゃと音を立てる。
 息つく間が分からなく、苦しくなってきた。胸を叩くと唇が離れ、ひゅっと大きく息を吸い込んでほっとする。しかし少しの間もなくすぐにまた吸い付かれた。

 頬の裏や上顎をしつこく舐められると腰の奥がじわじわと熱くなってくる。
 舌が絡み引き抜かれそうに吸われ、また苦しくて胸を叩く。呼吸のためだけに離れ、また重なる。繰り返すたび、頭の芯が溶け東園の舌を追いかけるだけになる。

「ふっ、」

 ずるっと離れていった東園の唇を見ながら大きく息を吸う。自分もだけど東園の唇も濡れている。
 はあはあと乱れた息が整わない。いやらしすぎてもう無理と思う。
 こんなぬちゃぬちゃするものだったなんて聞いてない。
 キスってもっとこう、ロマンティックな感じかと勝手に妄想していた。
 陽向の、薬のせいでぐっすり眠っていた性欲を直接掴んで引き起こされる感じがしてちょっと恐ろしい。
 離れた唇は再び陽向の唇に重なるとまたすぐ離れ、口の横をべろりとひとなめしたあと、頬に吸い付きキスをしながら顎の下から首、肩へ移動した。

「あっ」

 肩口を隙間なく舐められながら陽向はじわじわベッドサイドに押し動かされていた。 
 あ、と思った時にはベッドに倒され東園が真上にいた。
 鎖骨をしゃぶられながら陽向のパジャマはすべてのボタンを外され、開かれる。

「あ、あ、まって」

 鮮やかな手つきにさすがなどと思いながらついストップをかける。
 鎖骨から下へ舐めながら移動していた東園が頭を持ち上げ陽向の顔を覗き込む。

「どうした? いや?」
「あ、えっと、あ、でも」

 首を傾げた東園はじっと陽向を見つめたあと、「どうしても嫌なときはいって」とキスしながら髪を撫でた。
 いやじゃないから困惑しているのだ。
 キスのせいで身体が疼いてしょうがない、発情期みたいになっていて驚いている。
 東園の手が陽向の身体を確認するようにべたべたと触ってくる。普段服に隠れた、他人が触らない背中や腹をまさぐられると、ただ肌を手が滑るだけなのに気持ちよくて堪らない。
 でも唇が肌を這うのは気持ち良いだけじゃない。
 吐息がかかると温かく、唇とともに舌が動くと肌が濡れる。
 舌に舐めまわされると、こそばゆさと身体の真ん中が溶けるような気持ちよさを同時に感じる。陽向が知っている感覚とどれも違っていて、どうしたらいいのか分からなくなる。
 もうとっくに陽向の前は勃ち、のし掛かっている東園は身体が密着しているせいで絶対にそれを知っている。

「あ、……あっ」
「ここ、気持ちいい?」

  舌で胸の先をいじられ、甘ったるい声が漏れ出る。
 意識したことがなかったところなのに、舐められ吸い付かれると身体が震える。
 どうしよう、尻の奥が濡れていく。
 平坦で魅力があるように思えないそこを東園は熱心に舐めあげ、声を上げる陽向にまた「気持ちがいい?」と聞く。

「う、うん、」
「そうなんだ。こっちも?」

 舐められていなかった方に唇が移り、代わりに濡れて敏感になった先をきゅっと指でつままれてびくんと腰が揺れた。

「や、もう、やめて、んっ」

 執拗に胸を舐められ、それだけではなく陽向の下肢に乗った東園の腹が、陽向の勃ち上がった先を潰すように動く。
 胸を舐められただけで反応している自分が無性に恥ずかしく陽向の目に涙が浮かぶ。
 みんなこんな感じなのだろうか。
 自分は普通なのだろうか。
 陽向は確かに止めてと言ったのに、東園は止めてくれない。
 逃げたくて東園を引き剥がそうとするが、逆に手をベッドに押しつけられ、東園はまた深く口づけてきた。
 口のなかを舐められるととろんと気持ちが溶けて脱力していく。
 力の抜けた陽向の手首から離れた東園の指が、陽向の指に絡みぎゅっと握りしめる。

「止めた方がいい?」
「……身体が、へん」
「そりゃあまあ、みんな変になるだろ。俺もだし」

 ほら、と太ももに東園の腰が押しつけられ陽向がひゅっと息をのんだ。
 熱を帯びたそこは陽向と同じく硬い。
 みんなそうなるなら、とちょっと安堵して真上の東園に抱きついた。
 みんなそうなら東園だって分かるだろう、密着した身体に勃起したそこを押しつけると死ぬほど気持ちいいのだ。
 早く触りたいんだけどさすがに他人の目前で自慰は出来ない。ぐりぐりと押しつけてほうと息をつくと今度は東園の喉がぐっとおかしな音を立てた。

「陽向、腰ちょっとあげて」

 言うとおりにすると東園は陽向の下肢に纏うすべてを引き脱がした。
 薄布だけどなくなるとひやっとして心許ない。触られたくて疼いているそこを見られるのが恥ずかしく、なるだけ見えないように膝頭を合わせる。

「真っ暗にしてよ」
「駄目、顔が見えないと心配だから」

 即答した東園は答えながら陽向の膝を割り左右に大きく開いた。
 陽向のそこをじっと眺め、顔を寄せると「陽向の」と呟き先端を舐めジュッと音を立て吸った。ぎゃっと叫びそうになるのをぐっと飲みこんで「止めて」と震えた声で訴えた。

 まさかそんなところを舐められるとは思わなかった。
 触って欲しかったけれど、手だ。舌じゃない。
 生ぬるい舌で舐められるのと、指で擦るのとは段違いだ。強い快楽を与えられ、腰が自然と揺れてしまう。

「あ、あ、ああ、うぅ、や、や」
「陽向、気持ちいいんだろ、ほらここ」

 根元から先まですべて舐めあげたあと、東園が舌先で先端をつついた。おそるおそる見ると陽向の先端から東園の舌先につっと先走りが糸を引いていた。

「も、……練習、今日は終わりにして」

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

虐げられた氷の聖子は隣国の野獣皇帝に執着(愛)されすぎて溶かされる

たら昆布
BL
暴君皇帝×薄幸の聖子

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

幼馴染は僕を選ばない。

佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。 僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。 僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。 好きだった。 好きだった。 好きだった。 離れることで断ち切った縁。 気付いた時に断ち切られていた縁。 辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。

星降る夜に ~これは大人の純愛なのか。臆病者の足踏みか。~

大波小波
BL
 鳴滝 和正(なるたき かずまさ)は、イベント会社に勤めるサラリーマンだ。  彼はある日、打ち合わせ先の空き時間を過ごしたプラネタリウムで、寝入ってしまう。  和正を優しく起こしてくれたのは、そこのナレーターを務める青年・清水 祐也(しみず ゆうや)だった。  祐也を気に入った和正は、頻繁にプラネタリウムに通うようになる。  夕食も共にするほど、親しくなった二人。  しかし祐也は夜のバイトが忙しく、なかなかデートの時間が取れなかった。  それでも彼と過ごした後は、心が晴れる和正だ。  浮かれ気分のまま、彼はボーイズ・バーに立ち寄った。  そしてスタッフメニューの中に、祐也の姿を見つけてしまう。  彼の夜の顔は、風俗店で働く男娼だったのだ……。

アルファな彼とオメガな僕。

スメラギ
BL
  ヒエラルキー最上位である特別なアルファの運命であるオメガとそのアルファのお話。  

僕がそばにいる理由

腐男子ミルク
BL
佐藤裕貴はΩとして生まれた21歳の男性。αの夫と結婚し、表向きは穏やかな夫婦生活を送っているが、その実態は不完全なものだった。夫は裕貴を愛していると口にしながらも、家事や家庭の負担はすべて裕貴に押し付け、自分は何もしない。それでいて、裕貴が他の誰かと関わることには異常なほど敏感で束縛が激しい。性的な関係もないまま、裕貴は愛情とは何か、本当に満たされるとはどういうことかを見失いつつあった。 そんな中、裕貴の職場に新人看護師・宮野歩夢が配属される。歩夢は裕貴がΩであることを本能的に察しながらも、その事実を意に介さず、ただ一人の人間として接してくれるαだった。歩夢の純粋な優しさと、裕貴をありのまま受け入れる態度に触れた裕貴は、心の奥底にしまい込んでいた孤独と向き合わざるを得なくなる。歩夢と過ごす時間を重ねるうちに、彼の存在が裕貴にとって特別なものとなっていくのを感じていた。 しかし、裕貴は既婚者であり、夫との関係や社会的な立場に縛られている。愛情、義務、そしてΩとしての本能――複雑に絡み合う感情の中で、裕貴は自分にとって「真実の幸せ」とは何なのか、そしてその幸せを追い求める覚悟があるのかを問い始める。 束縛の中で見失っていた自分を取り戻し、裕貴が選び取る未来とは――。 愛と本能、自由と束縛が交錯するオメガバースの物語。

変異型Ωは鉄壁の貞操

田中 乃那加
BL
 変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。  男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。  もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。  奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。  だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。  ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。  それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。    当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。  抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?                

忘れられない君の香

秋月真鳥
BL
 バルテル侯爵家の後継者アレクシスは、オメガなのに成人男性の平均身長より頭一つ大きくて筋骨隆々としてごつくて厳つくてでかい。  両親は政略結婚で、アレクシスは愛というものを信じていない。  母が亡くなり、父が借金を作って出奔した後、アレクシスは借金を返すために大金持ちのハインケス子爵家の三男、ヴォルフラムと契約結婚をする。  アレクシスには十一年前に一度だけ出会った初恋の少女がいたのだが、ヴォルフラムは初恋の少女と同じ香りを漂わせていて、契約、政略結婚なのにアレクシスに誠実に優しくしてくる。  最初は頑なだったアレクシスもヴォルフラムの優しさに心溶かされて……。  政略結婚から始まるオメガバース。  受けがでかくてごついです! ※ムーンライトノベルズ様、エブリスタ様にも掲載しています。

処理中です...