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第十話:審問までの三日間
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審問まで、あと三日。
それはつまり――
“王太子を告発した聖女”が、三日間も命を繋いでいられるかという猶予にすぎなかった。
「エリス様、外部との接触はすべて控えてください。
神託庁にも“怪しい動き”がいくつか――」
ユリウスは真剣な表情で報告する。
私の護衛として、すでに三度、毒の試みと刺客の動きを防いでくれていた。
(……レオンハルトは、謹慎中でも私を消そうとしている)
これが“王家”のやり方。
表では清廉に、裏では静かに葬る。
「ここで終わらせる気はないわ。
あの男の罪を、光の下に引きずり出すまでは」
その夜。
神託庁の高窓に立っていた私は、不意に誰かの気配を感じた。
「……誰?」
ユリウスとは違う。鋭く、けれどどこか懐かしい気配。
すると、扉の外から声がした。
「ご無沙汰しています。聖女殿。……いや、エリス嬢」
ゆっくりと扉が開き、現れたのは――
長身で整った顔立ち、暗い紺の軍装に身を包んだ青年。
「……第二王子、ジルベルト殿下」
「ご記憶いただいていて光栄だよ。
あの処刑台で、君の名前が叫ばれた瞬間から、僕は帰国の準備をしていた」
ジルベルト・エルメイア。
現王の次男にして、かつて“冷ややかな優等生”と呼ばれていた男。
「兄上は、もう終わりだ。
あのような方法でしか人を制せない者に、玉座は渡さない」
「……そのために、今さら私に接触を?」
私の言葉に、彼はふっと笑った。
「君を利用するつもりなら、もっと甘い言葉を選ぶさ。
僕は、“君を見ていた”。あの頃からずっと」
その言葉に、私は一瞬だけ言葉を失う。
(……見ていた? 私を?)
「王家のためにも、そして君自身のためにも、僕は力になる。
……兄を引きずり下ろすなら、君しかいない」
その瞳は真剣だった。
けれど、ユリウスとは違う“政治の目”をしていた。
「……考えておくわ。私には、味方も敵も、慎重に見極める必要があるから」
「それでいい。君は、簡単に靡くような女じゃない。
――だから、君に惹かれる」
その言葉を残し、ジルベルトは去っていった。
静けさの戻った室内。
けれど、私の胸の奥には、ふたつの名前が残っていた。
ユリウス。
ジルベルト。
剣で守る男と、知略で導く男。
(……誰にも頼らないと決めたのに。こんなにも、誰かの視線が、胸に刺さる)
そして、夜が明ける。
審問の幕が、ついに上がろうとしていた――
それはつまり――
“王太子を告発した聖女”が、三日間も命を繋いでいられるかという猶予にすぎなかった。
「エリス様、外部との接触はすべて控えてください。
神託庁にも“怪しい動き”がいくつか――」
ユリウスは真剣な表情で報告する。
私の護衛として、すでに三度、毒の試みと刺客の動きを防いでくれていた。
(……レオンハルトは、謹慎中でも私を消そうとしている)
これが“王家”のやり方。
表では清廉に、裏では静かに葬る。
「ここで終わらせる気はないわ。
あの男の罪を、光の下に引きずり出すまでは」
その夜。
神託庁の高窓に立っていた私は、不意に誰かの気配を感じた。
「……誰?」
ユリウスとは違う。鋭く、けれどどこか懐かしい気配。
すると、扉の外から声がした。
「ご無沙汰しています。聖女殿。……いや、エリス嬢」
ゆっくりと扉が開き、現れたのは――
長身で整った顔立ち、暗い紺の軍装に身を包んだ青年。
「……第二王子、ジルベルト殿下」
「ご記憶いただいていて光栄だよ。
あの処刑台で、君の名前が叫ばれた瞬間から、僕は帰国の準備をしていた」
ジルベルト・エルメイア。
現王の次男にして、かつて“冷ややかな優等生”と呼ばれていた男。
「兄上は、もう終わりだ。
あのような方法でしか人を制せない者に、玉座は渡さない」
「……そのために、今さら私に接触を?」
私の言葉に、彼はふっと笑った。
「君を利用するつもりなら、もっと甘い言葉を選ぶさ。
僕は、“君を見ていた”。あの頃からずっと」
その言葉に、私は一瞬だけ言葉を失う。
(……見ていた? 私を?)
「王家のためにも、そして君自身のためにも、僕は力になる。
……兄を引きずり下ろすなら、君しかいない」
その瞳は真剣だった。
けれど、ユリウスとは違う“政治の目”をしていた。
「……考えておくわ。私には、味方も敵も、慎重に見極める必要があるから」
「それでいい。君は、簡単に靡くような女じゃない。
――だから、君に惹かれる」
その言葉を残し、ジルベルトは去っていった。
静けさの戻った室内。
けれど、私の胸の奥には、ふたつの名前が残っていた。
ユリウス。
ジルベルト。
剣で守る男と、知略で導く男。
(……誰にも頼らないと決めたのに。こんなにも、誰かの視線が、胸に刺さる)
そして、夜が明ける。
審問の幕が、ついに上がろうとしていた――
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