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第九話:玉座は、動き出す
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「黙れと言っているッ!!」
レオンハルト王太子の怒声が広場に響き渡った。
その瞳には怒り、焦り、そしてほんの一瞬、恐れが滲んでいた。
けれどもう、民衆の目はごまかせない。
「処刑されたはずの令嬢が、神の聖女として蘇った――
その聖女が、王太子に告発を行った」
それは、国全体にとって無視できない事実だった。
「広場を封鎖しろ!聖女を拘束――!」
レオンが怒鳴りかけた瞬間、会場奥の大扉が開いた。
「止まれ、レオン」
静かに響いた老いた声。
――現王、グレイヴ・エルメイア王が、その場に姿を現した。
「父上……!」
「恥を知れ。神託の場を、私怨で汚すつもりか?」
玉座の主がそう言い放っただけで、空気が一変する。
レオンの顔は、見る見るうちに蒼白に染まった。
王は、ゆっくりと私の方へと目を向ける。
「エリス・アルメリア。聖女として、今日ここで何を告げたか、再び言え」
私は一歩前へ出て、静かに言い放つ。
「私は、王太子レオンハルト殿下より受けた冤罪と、処刑命令、
そして聖女である私への刺客の差し向け――
これらすべての罪を、証拠と共に提示いたします」
騒然とする中、私は手を掲げ、魔石の記録を発動させた。
そこには処刑当日の“密室のやりとり”、
そして、刺客の最期の言葉が、はっきりと刻まれていた。
「……っ」
レオンの肩が震えた。
誰の目にも、もはや逃れようのない状況。
「……聖女殿。審問の場を、三日後に設けよう」
王の声が、全体に響く。
「王家とて、神の意思には逆らえぬ。
レオン、三日間、王宮から出ることを禁ずる。謹慎だ」
「っ……父上、そんな……!」
「黙れ!!」
雷鳴のような一喝に、レオンは震え、跪いた。
会場が静まり返ったその中で、
私はようやく、胸の奥に一つの実感を得ていた。
(……これは、“私の戦い”だ)
勝ち負けじゃない。
赦す赦さないでもない。
奪われたものを、
裏切られた記憶を、
自分自身の手で終わらせるための、戦い。
その帰り道。
ユリウスが私の隣に立ち、ぽつりとつぶやいた。
「……これから先、もっと激しい風が吹くでしょう」
「ええ。分かってる」
「それでも、私はあなたの傍にいます」
私がふと顔を上げると、ユリウスはまっすぐ私を見つめていた。
「貴女が誰を裁いても、誰に剣を向けても、
私はその隣に立つと決めたんです」
その言葉に、心が少しだけ、緩んだ。
(ああ――この人だけは、本当に、信じてもいいのかもしれない)
そんな予感が、胸に灯る。
けれどその時――
王宮の奥深く、もうひとつの陰謀が、静かに蠢き始めていた。
レオンハルト王太子の怒声が広場に響き渡った。
その瞳には怒り、焦り、そしてほんの一瞬、恐れが滲んでいた。
けれどもう、民衆の目はごまかせない。
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その聖女が、王太子に告発を行った」
それは、国全体にとって無視できない事実だった。
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「止まれ、レオン」
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私は一歩前へ出て、静かに言い放つ。
「私は、王太子レオンハルト殿下より受けた冤罪と、処刑命令、
そして聖女である私への刺客の差し向け――
これらすべての罪を、証拠と共に提示いたします」
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そして、刺客の最期の言葉が、はっきりと刻まれていた。
「……っ」
レオンの肩が震えた。
誰の目にも、もはや逃れようのない状況。
「……聖女殿。審問の場を、三日後に設けよう」
王の声が、全体に響く。
「王家とて、神の意思には逆らえぬ。
レオン、三日間、王宮から出ることを禁ずる。謹慎だ」
「っ……父上、そんな……!」
「黙れ!!」
雷鳴のような一喝に、レオンは震え、跪いた。
会場が静まり返ったその中で、
私はようやく、胸の奥に一つの実感を得ていた。
(……これは、“私の戦い”だ)
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赦す赦さないでもない。
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裏切られた記憶を、
自分自身の手で終わらせるための、戦い。
その帰り道。
ユリウスが私の隣に立ち、ぽつりとつぶやいた。
「……これから先、もっと激しい風が吹くでしょう」
「ええ。分かってる」
「それでも、私はあなたの傍にいます」
私がふと顔を上げると、ユリウスはまっすぐ私を見つめていた。
「貴女が誰を裁いても、誰に剣を向けても、
私はその隣に立つと決めたんです」
その言葉に、心が少しだけ、緩んだ。
(ああ――この人だけは、本当に、信じてもいいのかもしれない)
そんな予感が、胸に灯る。
けれどその時――
王宮の奥深く、もうひとつの陰謀が、静かに蠢き始めていた。
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