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第二十三話:毒の名は、微笑み
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「エリス様、こちらを。お疲れでしょう?
マリア様からの差し入れだそうですわ」
小さな菓子とハーブティー。
整った銀の盆に乗せられたそれは、一見すれば丁寧な贈り物だった。
けれど――私は、迷わず指を止めた。
「ありがとう。でも、今は喉が乾いていないの」
(……香りが、わずかにおかしい)
神託庁に戻ったあと、医療部にこれを託したところ、
案の定、ハーブティーからは**“低毒性の麻痺成分”**が検出された。
「やっぱり……これが、マリアの“最後の一手”ね」
騒ぎにしなかったのは、証拠を持って逆転の一撃に使うため。
“清らかな聖女”が、裏では毒を使っていた――
それが証明されれば、マリアという仮面は完全に剥がれる。
けれど、それを誰よりも先に知っていた者がいた。
* * *
「……気づいていたんですか?」
ユリウスが、静かに言った。
夜、エリスの私室を訪れた彼は、執務室の灯りも落ちた時間に、そっと問いかけた。
「うん。少しだけ“覚悟”はしてた。
彼女がここで“微笑んで終わる”タイプじゃないって」
「……どうか、俺を信じてください。
あなたを守る騎士ではなく、
“あなたと生きたい男”として、ずっと隣にいさせてください」
その声音はあまりにも穏やかで、
だからこそ、胸の奥にすっと沁みた。
「……ユリウス。
ねえ、今夜くらい……隣で、話してくれる?」
「もちろん。あなたが眠るまで、何度でも名前を呼びます」
エリスが微笑んだその瞬間――
ユリウスは、彼女の手を取り、ゆっくりと頬へと寄せた。
「……エリス。
あなたがどれだけ光を纏っていても、
俺は“地べた”からでも、あなたを見つけて抱きしめるから」
夜の空気にまぎれるように、
その言葉とともに、唇が指先に触れた。
寸止めではなかった。
けれど、それはまだ“告白の答え”ではない。
“今夜だけは、そばにいていい”――
それだけが交わされた、無言の約束。
* * *
そして、王宮・謁見の間。
「……毒が検出された? マリアが、そんなことを?」
王が文書を受け取り、硬直する中。
エリスは静かに立ち上がった。
「真実は、すぐに明らかになります。
でもその前に、私は“あの方”に聞きたいのです。
聖女マリア・ヴェステリア嬢――あなたの本当の顔を」
女神のような仮面の奥で、マリアが微笑んだ。
「ようやく、“遊び”が終わるのね」
声の温度が、あまりにも冷たかった。
マリア様からの差し入れだそうですわ」
小さな菓子とハーブティー。
整った銀の盆に乗せられたそれは、一見すれば丁寧な贈り物だった。
けれど――私は、迷わず指を止めた。
「ありがとう。でも、今は喉が乾いていないの」
(……香りが、わずかにおかしい)
神託庁に戻ったあと、医療部にこれを託したところ、
案の定、ハーブティーからは**“低毒性の麻痺成分”**が検出された。
「やっぱり……これが、マリアの“最後の一手”ね」
騒ぎにしなかったのは、証拠を持って逆転の一撃に使うため。
“清らかな聖女”が、裏では毒を使っていた――
それが証明されれば、マリアという仮面は完全に剥がれる。
けれど、それを誰よりも先に知っていた者がいた。
* * *
「……気づいていたんですか?」
ユリウスが、静かに言った。
夜、エリスの私室を訪れた彼は、執務室の灯りも落ちた時間に、そっと問いかけた。
「うん。少しだけ“覚悟”はしてた。
彼女がここで“微笑んで終わる”タイプじゃないって」
「……どうか、俺を信じてください。
あなたを守る騎士ではなく、
“あなたと生きたい男”として、ずっと隣にいさせてください」
その声音はあまりにも穏やかで、
だからこそ、胸の奥にすっと沁みた。
「……ユリウス。
ねえ、今夜くらい……隣で、話してくれる?」
「もちろん。あなたが眠るまで、何度でも名前を呼びます」
エリスが微笑んだその瞬間――
ユリウスは、彼女の手を取り、ゆっくりと頬へと寄せた。
「……エリス。
あなたがどれだけ光を纏っていても、
俺は“地べた”からでも、あなたを見つけて抱きしめるから」
夜の空気にまぎれるように、
その言葉とともに、唇が指先に触れた。
寸止めではなかった。
けれど、それはまだ“告白の答え”ではない。
“今夜だけは、そばにいていい”――
それだけが交わされた、無言の約束。
* * *
そして、王宮・謁見の間。
「……毒が検出された? マリアが、そんなことを?」
王が文書を受け取り、硬直する中。
エリスは静かに立ち上がった。
「真実は、すぐに明らかになります。
でもその前に、私は“あの方”に聞きたいのです。
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「ようやく、“遊び”が終わるのね」
声の温度が、あまりにも冷たかった。
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