伯爵令嬢の逆転劇

春夜夢

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第3話:婚約披露と暴かれた真実

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王都中央広場に隣接するバルネラ侯爵家の別邸。その広々とした庭園では、上流貴族が集まる盛大な宴が開かれていた。

 今日は、アラン・バルネラとリリア・スノウの「婚約披露の宴」。

 純白のドレスに身を包んだリリアは、客人たちの前で花のような笑顔を浮かべ、アランの腕にぴたりと寄り添っていた。

「皆さま、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。私、アラン・バルネラは、リリア・スノウ嬢と……真実の愛をもって婚約を結ぶこととなりました」

 拍手が起こるが、それはどこかぎこちなく、まばらだった。
 すでに社交界では噂が流れ始めていたのだ。

(“平民出の娘が侯爵家に入り込んだ”……という話題で持ちきりだもの。当然ね)

 広場の端、控えめに設けられた貴賓席。そこに姿を現したのは、深紅のドレスをまとったクラリス・エルフォードだった。

 誰よりも美しく、誰よりも冷ややかな目をして。

「あら、これは。ずいぶん賑やかですこと」

 その場にいた貴族たちがざわりと動く。クラリスが自ら“元婚約者”の宴に姿を現したのだ。
 招待状は出していないはず――そう思ったアランが険しい顔で近づいてくる。

「クラリス、何の用だ? ここは君の来る場では……」

「まあ、それはご挨拶が遅れましたわ。新たな婚約を祝う席ですもの、お祝いの品をお届けに参りましたの」

 そう言って、クラリスは微笑みながら、一枚の書簡を差し出す。

 それは――リリア・スノウに関する調査報告書。精緻な筆跡で記され、裏付けも揃った“真実”の束だった。

 アランが目を通す間に、クラリスは淡々と語り出す。

「リリア・スノウ嬢。あなたが“元貴族子息たち”と過去に何度も親密な関係を持ち、その後すべて破綻していること。実家が破産寸前で、貴族との縁を命綱としていたこと。……これ、王家にも報告済みですわ」

「なっ……! なにを、言って……!」

 リリアの顔が青ざめ、アランが信じられないものを見るように彼女を見つめる。

「嘘だ、そんな……」

「アラン様。あなたには見る目がなかったのです。ただそれだけのこと」

 冷たい一言が、会場に突き刺さる。

 次の瞬間、周囲の貴族たちの視線が一斉に変わった。好奇の目から、冷笑と警戒の色へ――。

 リリアは震えながらその場に膝をつき、アランは顔を歪めたまま言葉を失った。

 そんな二人を一瞥し、クラリスは扇子を広げて優雅に微笑む。

「……ご婚約、心よりお祝い申し上げますわ。どうぞ、末永くお幸せに」

 それだけ告げて、彼女は振り返る。
 静かに立っていたノア・ヴァレンティアが、無言で彼女に手を差し出す。

 その手を取ると、クラリスは晴れやかな笑みを浮かべ、会場を後にした。

(これは、始まりに過ぎない。私の逆転劇は、まだ幕を上げたばかりよ)
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