3 / 24
第3話:婚約披露と暴かれた真実
しおりを挟む
王都中央広場に隣接するバルネラ侯爵家の別邸。その広々とした庭園では、上流貴族が集まる盛大な宴が開かれていた。
今日は、アラン・バルネラとリリア・スノウの「婚約披露の宴」。
純白のドレスに身を包んだリリアは、客人たちの前で花のような笑顔を浮かべ、アランの腕にぴたりと寄り添っていた。
「皆さま、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。私、アラン・バルネラは、リリア・スノウ嬢と……真実の愛をもって婚約を結ぶこととなりました」
拍手が起こるが、それはどこかぎこちなく、まばらだった。
すでに社交界では噂が流れ始めていたのだ。
(“平民出の娘が侯爵家に入り込んだ”……という話題で持ちきりだもの。当然ね)
広場の端、控えめに設けられた貴賓席。そこに姿を現したのは、深紅のドレスをまとったクラリス・エルフォードだった。
誰よりも美しく、誰よりも冷ややかな目をして。
「あら、これは。ずいぶん賑やかですこと」
その場にいた貴族たちがざわりと動く。クラリスが自ら“元婚約者”の宴に姿を現したのだ。
招待状は出していないはず――そう思ったアランが険しい顔で近づいてくる。
「クラリス、何の用だ? ここは君の来る場では……」
「まあ、それはご挨拶が遅れましたわ。新たな婚約を祝う席ですもの、お祝いの品をお届けに参りましたの」
そう言って、クラリスは微笑みながら、一枚の書簡を差し出す。
それは――リリア・スノウに関する調査報告書。精緻な筆跡で記され、裏付けも揃った“真実”の束だった。
アランが目を通す間に、クラリスは淡々と語り出す。
「リリア・スノウ嬢。あなたが“元貴族子息たち”と過去に何度も親密な関係を持ち、その後すべて破綻していること。実家が破産寸前で、貴族との縁を命綱としていたこと。……これ、王家にも報告済みですわ」
「なっ……! なにを、言って……!」
リリアの顔が青ざめ、アランが信じられないものを見るように彼女を見つめる。
「嘘だ、そんな……」
「アラン様。あなたには見る目がなかったのです。ただそれだけのこと」
冷たい一言が、会場に突き刺さる。
次の瞬間、周囲の貴族たちの視線が一斉に変わった。好奇の目から、冷笑と警戒の色へ――。
リリアは震えながらその場に膝をつき、アランは顔を歪めたまま言葉を失った。
そんな二人を一瞥し、クラリスは扇子を広げて優雅に微笑む。
「……ご婚約、心よりお祝い申し上げますわ。どうぞ、末永くお幸せに」
それだけ告げて、彼女は振り返る。
静かに立っていたノア・ヴァレンティアが、無言で彼女に手を差し出す。
その手を取ると、クラリスは晴れやかな笑みを浮かべ、会場を後にした。
(これは、始まりに過ぎない。私の逆転劇は、まだ幕を上げたばかりよ)
今日は、アラン・バルネラとリリア・スノウの「婚約披露の宴」。
純白のドレスに身を包んだリリアは、客人たちの前で花のような笑顔を浮かべ、アランの腕にぴたりと寄り添っていた。
「皆さま、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。私、アラン・バルネラは、リリア・スノウ嬢と……真実の愛をもって婚約を結ぶこととなりました」
拍手が起こるが、それはどこかぎこちなく、まばらだった。
すでに社交界では噂が流れ始めていたのだ。
(“平民出の娘が侯爵家に入り込んだ”……という話題で持ちきりだもの。当然ね)
広場の端、控えめに設けられた貴賓席。そこに姿を現したのは、深紅のドレスをまとったクラリス・エルフォードだった。
誰よりも美しく、誰よりも冷ややかな目をして。
「あら、これは。ずいぶん賑やかですこと」
その場にいた貴族たちがざわりと動く。クラリスが自ら“元婚約者”の宴に姿を現したのだ。
招待状は出していないはず――そう思ったアランが険しい顔で近づいてくる。
「クラリス、何の用だ? ここは君の来る場では……」
「まあ、それはご挨拶が遅れましたわ。新たな婚約を祝う席ですもの、お祝いの品をお届けに参りましたの」
そう言って、クラリスは微笑みながら、一枚の書簡を差し出す。
それは――リリア・スノウに関する調査報告書。精緻な筆跡で記され、裏付けも揃った“真実”の束だった。
アランが目を通す間に、クラリスは淡々と語り出す。
「リリア・スノウ嬢。あなたが“元貴族子息たち”と過去に何度も親密な関係を持ち、その後すべて破綻していること。実家が破産寸前で、貴族との縁を命綱としていたこと。……これ、王家にも報告済みですわ」
「なっ……! なにを、言って……!」
リリアの顔が青ざめ、アランが信じられないものを見るように彼女を見つめる。
「嘘だ、そんな……」
「アラン様。あなたには見る目がなかったのです。ただそれだけのこと」
冷たい一言が、会場に突き刺さる。
次の瞬間、周囲の貴族たちの視線が一斉に変わった。好奇の目から、冷笑と警戒の色へ――。
リリアは震えながらその場に膝をつき、アランは顔を歪めたまま言葉を失った。
そんな二人を一瞥し、クラリスは扇子を広げて優雅に微笑む。
「……ご婚約、心よりお祝い申し上げますわ。どうぞ、末永くお幸せに」
それだけ告げて、彼女は振り返る。
静かに立っていたノア・ヴァレンティアが、無言で彼女に手を差し出す。
その手を取ると、クラリスは晴れやかな笑みを浮かべ、会場を後にした。
(これは、始まりに過ぎない。私の逆転劇は、まだ幕を上げたばかりよ)
31
あなたにおすすめの小説
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
ぽっちゃり侯爵と大食い令嬢の甘い婚約生活
piyo
恋愛
女性秘書官として働きながら、“大食い令嬢”の異名を持つダニエラ。そんな彼女に、上司のガリウスがひとつの縁談を持ってくる。
相手は名門オウネル侯爵家の当主、キーレン・オウネル。
大変ふくよかな体形の彼は、自分と同じように食を楽しんでくれる相手を探していた。
一方のダニエラも、自分と同じくらいの食欲のある伴侶を求めていたため、お茶会を通じて二人は晴れて婚約者となる。
ゆっくりと距離を縮め、穏やかに愛を育んでいく二人だが、
結婚式の半年前、キーレンが交易交渉のため国外へ赴くことになり――
※なろうにも掲載しています
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~
スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。
何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。
◇◆◇
作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。
DO NOT REPOST.
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する
青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。
両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。
母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。
リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。
マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。
すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。
修道院で聖女様に覚醒して……
大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが
マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない
完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく
今回も短編です
誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡
お金がありすぎて困っておりますの(悪役令嬢ver.) ~悪役令嬢は噂も相場も支配しますわ~
ふわふわ
恋愛
「お金がありすぎて、困っておりますの」
ヴァレンティス侯爵家当主・シグネアは、若くして膨大な資産と権限を手にした“悪役令嬢”。 しかし彼女は、金にも噂にも振り回されない。
──ならば、支配すればよろしいのですわ。
社交界を飛び交う根拠のない噂。 無能な貴族の見栄と保身。 相場を理解しない者が引き起こす経済混乱。 そして「善意」や「情」に見せかけた、都合のいい救済要求。
シグネアは怒鳴らない。 泣き落としにも応じない。 復讐も、慈善も、選ばない。
彼女がするのはただ一つ。 事実と数字と構造で、価値を測ること。
噂を操り、相場を読まず、裁かず、助けず、 それでもすべてを終わらせる“悪役令嬢”の統治劇。
「助けなかったのではありませんわ」 「助ける必要がなかっただけです」
一撃で終わる教育的指導。 噂も相場も、そして人の価値さえも―― 悪役令嬢は、今日も静かに支配する。
カーテンコールは終わりましたので 〜舞台の上で輝く私はあなたの”元”婚約者。今更胸を高鳴らせても、もう終幕。私は女優として生きていく〜
しがわか
恋愛
大商会の娘シェリーは、王国第四王子と婚約をしていた。
しかし王子は貴族令嬢であるゼラに夢中で、シェリーはまともに話しかけることすらできない。
ある日、シェリーは王子とゼラがすでに爛れた関係であることを知る。
失意の中、向かったのは旅一座の公演だった。
そこで目にした演劇に心を動かされ、自分もそうなりたいと強く願っていく。
演劇団の主役である女神役の女性が失踪した時、シェリーの胸に火が着いた。
「私……やってみたい」
こうしてシェリーは主役として王子の前で女神役を演じることになる。
※お願い※
コンテスト用に書いた短編なのでこれはこれで完結していますが、需要がありそうなら連載させてください。
面白いと思って貰えたらお気に入りをして、ぜひ感想を教えて欲しいです。
ちなみに連載をするなら旅一座として旅先で公演する中で起こる出来事を書きます。
実はセイは…とか、商会の特殊性とか、ジャミルとの関係とか…書けたらいいなぁ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる