伯爵令嬢の逆転劇

春夜夢

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第17話:決意の選択、運命の扉

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審問が終わり、王都に静寂が戻った晩。
 クラリス・エルフォードは、自室のテラスに一人座っていた。

 足元では、夜風に揺れる赤い薔薇が、彼女の沈黙を見守っている。

(私は、これまで“強く在ること”を選び続けた。誰の庇護も受けず、自分の意志で道を切り拓いてきた。でも――)

 今、彼女の手元には二通の手紙が置かれていた。

 一通は、ユリウス・ルーベルトから。
 もう一通は、レオン・カースウェルから。

 それぞれが、今後の人生を共にしたいという、誠実な申し出だった。
 どちらも真っ直ぐで、どちらも嘘がなかった。

 (私が選ぶのは、“どちらが上か”ではない。“どちらとなら、これからの私を守らず、並び立てるか”)

 そのとき――ノックの音。

「失礼いたします。お二人が、お越しです」

「……え?」

 クラリスが立ち上がるよりも早く、扉が開き、ユリウスとレオン、二人の男が同時に姿を現した。

「――話がしたい。今夜、君自身の答えを聞かせてほしい」

 レオンが静かに言う。

「もう君を、ただ“見守る”だけの立場でいたくない」

 ユリウスもまた、負けじと前に出る。

「私は、君の“選択”を受け入れる覚悟で来た。たとえ、それが私ではなかったとしても」

 クラリスは、深く息を吸い、二人を見つめた。

「……ありがとう。こんな私を、真剣に見てくれたあなたたちに、私は心から感謝しています」

 そして、扇子を静かに閉じ、まっすぐに歩き出す。

「私が選ぶのは――」

 その先に、ユリウス・ルーベルトがいた。

 彼の目が、わずかに見開かれる。
 レオンは、ほんの少し寂しげに目を伏せ――そして、潔く頭を下げた。

「そうか……なら、君の幸せを願うよ。心から」

 クラリスはその姿に、痛みと感謝を込めて微笑んだ。

「ありがとう、レオン。あなたが誠実でいてくれたから、私は強くなれたの」

 そして、ユリウスの前に立つ。

「私はあなたと、“並び立つ”未来を選びます。支え合うのではなく、共に前に進むために――」

 ユリウスは、何も言わずに彼女の手をとった。

「ようやく、“君と並ぶ夢”が叶う」

「まだ夢の入口よ。でも、あなたとなら――見られる気がするの。この国の未来も、私自身の未来も」

 赤い薔薇が風に揺れ、星が瞬く夜。
 ふたりの手が重なった瞬間、クラリス・エルフォードの“逆転劇”は一つの頂点を迎えた。

 けれど――これは、まだ終わりではない。
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