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第16話:虚飾を暴く法廷
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その日、王都の中枢にある貴族議会堂には、異例の注目が集まっていた。
侯爵家の一つ、グラストン家に対する「国家転覆未遂」の告発――
告発者は、伯爵令嬢クラリス・エルフォード。
そして、証人席には王宮近衛騎士・ノア・ヴァレンティアと、ルーベルト公爵家の嫡男ユリウス・ルーベルトが並ぶという“異例尽くし”の公開審問だった。
議長が高らかに開会を告げる。
「本日の議題――グラストン侯爵家の一族による、舞踏会における毒殺未遂、および王政派急進派との結託について。クラリス・エルフォード嬢より提出された告発をもって、審問を開始する」
会場には、貴族たちのざわめきが絶えなかった。
(これは、政界の勢力地図を塗り替える――“審問”)
クラリスは、黒に金糸をあしらったドレスで現れた。
その姿は、戦場に臨む将軍のように凛としていた。
「証人、ノア・ヴァレンティア殿。事件当日の経緯を、改めて説明願います」
「はい。舞踏会当夜、私は密命により警戒任務についておりました。毒の仕込まれた銀器を運んでいた給仕を発見、制止。後の調査により、その給仕がグラストン家と資金で繋がっていた証拠が見つかりました」
そして、次に呼ばれたのは――ユリウス。
「私のもとにも、匿名で“舞踏会を混乱させろ”との指示が記された書簡が届いていた。筆跡は、グラストン家家令と一致。加えて、舞踏会前後に急激に動いた資金の流れも確認済みだ」
議場が揺れ始める。
「証拠は、すべてこちらにございます」
クラリスが差し出したのは、密偵たちが収集した膨大な書簡・証言・記録の束だった。
「私がこの手で“毒を飲まされかけた”理由は、単なる私怨ではありません。“私がユリウス閣下と連携を結んだから”。それが、急進派にとって都合が悪かった――それだけの話ですわ」
壇上でグラストン家の現当主が立ち上がる。
「戯言だ! わが家がそのような卑劣な――!」
「では、ここにいる者すべての前で、“真偽の証明”を受け入れていただけますか?」
クラリスは、仕掛けていた最後の一手を取り出す。
「――これは、グラストン家が王政派に流した“秘密寄付”の記録です。署名も、印も、すべてそちらのもの。そしてすでに王家に正式に提出済みです」
それは、逃れられぬ決定的な証拠だった。
会場が静まり返る。
やがて、議長が重く口を開く。
「グラストン家の関与は、ほぼ確定的と認められる。よって、当主一族はすべての政治活動の停止、爵位の一時剥奪、ならびに王政派急進派との接触について再調査とする」
騒然とする議場を背に、クラリスはゆっくりと一礼する。
そしてその瞬間――
誰もが、クラリス・エルフォードを“ただの伯爵令嬢”ではなく、“権力を動かす者”として認識した。
審問を終え、夕暮れの石畳の回廊。
ユリウスが彼女の横に並ぶ。
「……君の勝利だな」
「いえ、“私たち”の勝利ですわ、閣下」
「その呼び方、そろそろやめてもいい頃かもしれない」
クラリスは少しだけ微笑んだ。
「では、“ユリウス様”。私もそろそろ、心の整理をつけねばなりませんわね」
レオン、ユリウス、ノア――
それぞれの誠意が、彼女の胸を優しくも苦しく締めつけていた。
(けれど今夜だけは、誇っていい。私は、私自身の力で――一つの正義を貫いた)
侯爵家の一つ、グラストン家に対する「国家転覆未遂」の告発――
告発者は、伯爵令嬢クラリス・エルフォード。
そして、証人席には王宮近衛騎士・ノア・ヴァレンティアと、ルーベルト公爵家の嫡男ユリウス・ルーベルトが並ぶという“異例尽くし”の公開審問だった。
議長が高らかに開会を告げる。
「本日の議題――グラストン侯爵家の一族による、舞踏会における毒殺未遂、および王政派急進派との結託について。クラリス・エルフォード嬢より提出された告発をもって、審問を開始する」
会場には、貴族たちのざわめきが絶えなかった。
(これは、政界の勢力地図を塗り替える――“審問”)
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その姿は、戦場に臨む将軍のように凛としていた。
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「はい。舞踏会当夜、私は密命により警戒任務についておりました。毒の仕込まれた銀器を運んでいた給仕を発見、制止。後の調査により、その給仕がグラストン家と資金で繋がっていた証拠が見つかりました」
そして、次に呼ばれたのは――ユリウス。
「私のもとにも、匿名で“舞踏会を混乱させろ”との指示が記された書簡が届いていた。筆跡は、グラストン家家令と一致。加えて、舞踏会前後に急激に動いた資金の流れも確認済みだ」
議場が揺れ始める。
「証拠は、すべてこちらにございます」
クラリスが差し出したのは、密偵たちが収集した膨大な書簡・証言・記録の束だった。
「私がこの手で“毒を飲まされかけた”理由は、単なる私怨ではありません。“私がユリウス閣下と連携を結んだから”。それが、急進派にとって都合が悪かった――それだけの話ですわ」
壇上でグラストン家の現当主が立ち上がる。
「戯言だ! わが家がそのような卑劣な――!」
「では、ここにいる者すべての前で、“真偽の証明”を受け入れていただけますか?」
クラリスは、仕掛けていた最後の一手を取り出す。
「――これは、グラストン家が王政派に流した“秘密寄付”の記録です。署名も、印も、すべてそちらのもの。そしてすでに王家に正式に提出済みです」
それは、逃れられぬ決定的な証拠だった。
会場が静まり返る。
やがて、議長が重く口を開く。
「グラストン家の関与は、ほぼ確定的と認められる。よって、当主一族はすべての政治活動の停止、爵位の一時剥奪、ならびに王政派急進派との接触について再調査とする」
騒然とする議場を背に、クラリスはゆっくりと一礼する。
そしてその瞬間――
誰もが、クラリス・エルフォードを“ただの伯爵令嬢”ではなく、“権力を動かす者”として認識した。
審問を終え、夕暮れの石畳の回廊。
ユリウスが彼女の横に並ぶ。
「……君の勝利だな」
「いえ、“私たち”の勝利ですわ、閣下」
「その呼び方、そろそろやめてもいい頃かもしれない」
クラリスは少しだけ微笑んだ。
「では、“ユリウス様”。私もそろそろ、心の整理をつけねばなりませんわね」
レオン、ユリウス、ノア――
それぞれの誠意が、彼女の胸を優しくも苦しく締めつけていた。
(けれど今夜だけは、誇っていい。私は、私自身の力で――一つの正義を貫いた)
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