Ωの花嫁に指名されたけど、αのアイツは俺にだけ発情するらしい

春夜夢

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第43話:選択の時と、不意打ちの再会

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玄関の前。
 夜の冷気が、狩屋の存在をより際立たせていた。

「“お前の番”って、どういう意味だよ」

 透真の問いに、狩屋はため息交じりに答える。

「……天瀬家が、“陽翔を政略婚に使おうとしてる”って話、聞いたことある?」


---

 透真は言葉を失った。

「いや、そんなの……陽翔は──」

「そう。本人は絶対に受け入れないだろう。
 でもね、“身を引く理由”があれば話は別だ。たとえば──」

 狩屋は、透真の顔をまっすぐ見据える。

「“番が、自ら離れた”という事実があれば、ね」


---

 透真は拳を握った。

「……俺に、陽翔を手放せって言いに来たのか?」

「逆だよ、透真。君には、“守るために動ける力”がある。
 記録職志望って聞いた。なら証拠を集めて、陽翔の意思を記録して守れ。
 ただし、それは君が“陽翔の未来にふさわしい番”だと証明できたら、の話だ」


---

 狩屋は静かに立ち上がった。

「これは選択の問題だ。“彼の隣に立つ資格”を、君自身が掴みに行けるかどうか──それだけだよ」


---

 翌日。
 透真は烏丸先輩に相談し、天瀬家に関する古い文書と議会記録の閲覧を申し込んだ。

「君が本気で守りたいなら、過去の制度改定や発言記録が鍵になるかもしれない。
 “意志は言葉にしなければ残らない”。それを君が一番、わかってると思う」


---

 一方その頃──南方領の研修施設。
 陽翔は訓練後、足元のふらつきに気づいた。

(……なんだ、これ……視界が……)

 次の瞬間、陽翔は意識を失って倒れた。

 周囲が駆け寄り、慌ただしく声をかける。

「天瀬候補生! 返事を──!」


---

 緊急搬送された陽翔の病室では、医師の声が飛び交う。

「原因は不明。ただし、“抑制剤との拒絶反応”の可能性がある。
 これ以上使用を続ければ、番との関係にも影響が──」


---

 数時間後。
 透真のスマホに、見知らぬ番号からの着信が鳴った。

「……はい?」

『緋月透真さんですね。天瀬陽翔候補生の件で、ご連絡差し上げています。
 ──詳細はお話できませんが、彼があなたを必要としています。』


---

 呼吸が浅くなる。
 胸がざわつく。
 けれど、透真は迷わなかった。

「……行きます。彼のそばに。──“番”として、必ず」
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