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第4話 「お前が弱点なら、それでいい」
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リクが倒れた事件は、王宮内にさざ波のように広がっていた。
「宰相閣下が、顔色を変えたらしい」
「……ただの孤児のために、そこまでするのか?」
「いや、“ただの孤児”じゃないのかもな」
使用人、文官、貴族。
誰もが好奇と猜疑の混じった目をリクに向け始めていた。
まるで、傷ついた獣を嗅ぎ回るように――
「その少年は何者か?」という噂だけがひとり歩きしていた。
* * *
「なあ、ゼフィルス……」
「声が戻ったな」
「……うん。まだ少し痛いけど、大丈夫」
リクはゼフィルスの私室の隅で、湯に浸したタオルを握りしめていた。
事件以来、ゼフィルスは政務の合間にもリクの様子を欠かさず確認し、
夜は執務室ではなく、リクの部屋の近くで眠るようになっていた。
「俺があんな目に遭ったせいで……城の人たちが、ざわざわしてるみたい」
「……当然だ」
「怖くないの?」
「何がだ」
「“弱点”を持ったことが」
ゼフィルスの目が細められた。
ほんのわずかに――怒りでも哀しみでもない、静かな激情が揺れていた。
「リク。……俺はな、弱点などとっくに持っていた」
「え?」
「お前に会った日から、ずっと、俺の弱点は“お前そのもの”だ」
リクは、息をのんだ。
「冷血宰相なんて呼ばれてるがな。
もし今日、もう一度同じことが起きたら――
俺は、たとえ王命であっても、命じた者を殺すだろう」
「そんな……」
「それが俺だ。
“お前のためなら、王をも斬る”――それが、俺の本音だ」
吐き出された言葉は、重く、真っ直ぐで、あまりにも危うかった。
リクはただ、震える声で返した。
「……俺、あんたの足手まといになりたくない」
「なっていると思っているのか?」
「……うん。俺なんかが、あんたの傍にいたら……あんたまで、巻き込まれる。
あの時だって、もし俺じゃなくて、他の人だったら……」
言いかけた言葉を、ゼフィルスの手が遮った。
「黙れ」
その声は低く、けれど優しかった。
「足手まといかどうかを決めるのは、お前じゃない。俺だ。
そして俺は、お前が傍にいてくれることに、ただ――感謝している」
「……」
「お前はもう“俺の一部”だ。
誰がなんと言おうと、失わない。……絶対に、だ」
その眼差しを、リクは直視できなかった。
けれど、胸の奥がじんわりと熱くなった。
それは――涙に近い、感情だった。
* * *
だが、そのやさしさは、同時に“危うさ”でもあった。
その夜。
王城の裏手で、ある貴族が密談をしていた。
「リクという子ども。あれは、ゼフィルス閣下の“命綱”だ」
「つまり、“王政を動かす鍵”でもあるということか」
「このまま好き勝手に政を動かされては、我々の地位が危うい」
「……ならば、手段はひとつだな」
そうしてまた一つ、影が動き始める。
彼らが狙うのは、ゼフィルス本人ではない。
彼の心の、たったひとつの“脆い場所”。
――リク。
その名のもとに、王政を覆す陰謀が、静かに牙を剥きはじめていた。
「宰相閣下が、顔色を変えたらしい」
「……ただの孤児のために、そこまでするのか?」
「いや、“ただの孤児”じゃないのかもな」
使用人、文官、貴族。
誰もが好奇と猜疑の混じった目をリクに向け始めていた。
まるで、傷ついた獣を嗅ぎ回るように――
「その少年は何者か?」という噂だけがひとり歩きしていた。
* * *
「なあ、ゼフィルス……」
「声が戻ったな」
「……うん。まだ少し痛いけど、大丈夫」
リクはゼフィルスの私室の隅で、湯に浸したタオルを握りしめていた。
事件以来、ゼフィルスは政務の合間にもリクの様子を欠かさず確認し、
夜は執務室ではなく、リクの部屋の近くで眠るようになっていた。
「俺があんな目に遭ったせいで……城の人たちが、ざわざわしてるみたい」
「……当然だ」
「怖くないの?」
「何がだ」
「“弱点”を持ったことが」
ゼフィルスの目が細められた。
ほんのわずかに――怒りでも哀しみでもない、静かな激情が揺れていた。
「リク。……俺はな、弱点などとっくに持っていた」
「え?」
「お前に会った日から、ずっと、俺の弱点は“お前そのもの”だ」
リクは、息をのんだ。
「冷血宰相なんて呼ばれてるがな。
もし今日、もう一度同じことが起きたら――
俺は、たとえ王命であっても、命じた者を殺すだろう」
「そんな……」
「それが俺だ。
“お前のためなら、王をも斬る”――それが、俺の本音だ」
吐き出された言葉は、重く、真っ直ぐで、あまりにも危うかった。
リクはただ、震える声で返した。
「……俺、あんたの足手まといになりたくない」
「なっていると思っているのか?」
「……うん。俺なんかが、あんたの傍にいたら……あんたまで、巻き込まれる。
あの時だって、もし俺じゃなくて、他の人だったら……」
言いかけた言葉を、ゼフィルスの手が遮った。
「黙れ」
その声は低く、けれど優しかった。
「足手まといかどうかを決めるのは、お前じゃない。俺だ。
そして俺は、お前が傍にいてくれることに、ただ――感謝している」
「……」
「お前はもう“俺の一部”だ。
誰がなんと言おうと、失わない。……絶対に、だ」
その眼差しを、リクは直視できなかった。
けれど、胸の奥がじんわりと熱くなった。
それは――涙に近い、感情だった。
* * *
だが、そのやさしさは、同時に“危うさ”でもあった。
その夜。
王城の裏手で、ある貴族が密談をしていた。
「リクという子ども。あれは、ゼフィルス閣下の“命綱”だ」
「つまり、“王政を動かす鍵”でもあるということか」
「このまま好き勝手に政を動かされては、我々の地位が危うい」
「……ならば、手段はひとつだな」
そうしてまた一つ、影が動き始める。
彼らが狙うのは、ゼフィルス本人ではない。
彼の心の、たったひとつの“脆い場所”。
――リク。
その名のもとに、王政を覆す陰謀が、静かに牙を剥きはじめていた。
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