貴方なんか大嫌いです。

雪戸紬糸

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問題

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ぐるぐると頭の中が騒がしい。
昨日からずっと。
どうしよう。
あのとき、勢いで頷いちゃったけど毎日通うのはちょっと…。
でもブッチョー待ってるって言ってたし…。
そうだ、朝早く行って話をしてみようかな。
夕凪さんも一緒だと話しやすいし。

朝ごはんはカップスープでいいや。
電車に揺られながら、ブッチョーの笑顔を思い出したりして。
なんであのひと、笑ったら可愛いのに、笑わないんだろう。
警戒してたとか?
人見知りなのかな?

会社につくと、早いからかまだ誰も…。
いや、声がきこえる。
あれは給湯室からだ。
いそいで、物陰にかくれる。

「ねえ、高坂。私とよりを戻す気はない?もういい年だし」
あ、葵さんの声だ。
「ないよ」
こっちはブッチョー。
ははん。なるほど。
「もう終わったんだよ俺たち」
「なんで?あのときのあれは誤解だっていったじゃない」
「はあ?ふたりでキスしといて誤解もなにもあるものか」
「だから冗談だって」
「いい加減にしろよ、お前をこれ以上嫌いたくないんだよ」
「ああ、わかった。ひなのちゃんでしょ」
声が一段低くなる。
「私あの子きらいなのよね、受付だって私がやってたのに、君には経理に専念してもらいたいとかなんとか。結局、おばさんはひっこんでろって話でしょ。わかるわよ。それくらい」
「ひがむなよ」
「ひがんでなんかいないわよ!」
「おまえのそういうところが嫌いなんだよ俺は」
「結婚してくれるっていったじゃない」
「結婚前提に、の間違いだろ」
「だから、裏切ってなんかない、ただの冗談だったの」
「冗談でキス?ふざけるな。俺は無理だ。他を当たれよ」
「いやよ。ひなのちゃん何歳だと思ってるの?」
「俺たちは別れたんだ。もう3年も前に。お前も承諾しただろ。今更なんだよ」
「いやよ、いや」
「もういいか?それに、楡埼とは何でもない」
「名前おぼえてるじゃない」
「名前くらい覚えるだろ」
「いや、あなたは興味ない人間の名前は覚えたりしない」
「興味があるからなんだって言うんだ。あの子頑張ってるだろ」
「否定しないのね。頑張ってるからなに?頑張って当然でしょ仕事なんだから」
「すこし落ち着け。俺とお前はずいぶん前に別れた。そうだな?」
「……ええ」
「俺がどうしようとお前には関係ない、そうだな?」
「……」
「これ以上、お前を嫌いになりたくないんだ。もうすぐ人が来る。もういいか?」
「あきらめないから私。あの女になんか渡さない。ぜったいに」
「楡埼に手をだすな」
「何も関係ないでしょ、あなたには。私がどうしたって。別れてるんだから」
「楡埼は何も関係ないだろ」
「楡埼楡埼ってうるさいわね、あの子の事ばっかりじゃない。私のことは?私のことも考えてよ」
「お前と話をしてるとイライラする」
だれかの足音がこっちにむかってくる。おそらくブッチョーの足音だ。
葵さんの足音は、ヒールの音がするから。


なんとかバレずに、自分の席までたどりつくことができた。
葵さんにそんな風に思われてたなんて…ショックだ。
でも仕事は仕事。がんばろう。
と、思っていたのだけれど。
杉野係長と葵さん。
なにやらひそひそと陰口をたたいてる。
たぶん、私のことだ。
なにかパソコン見ながら、
「仕事もできないくせに」とか「受付だけやってればいいってもんじゃない」とか「途中でトイレに立つのよあのこ」とか。
ブラックはもっと大変だったから、陰口くらい平気だけど。
このぶんだと、経理の担当は葵さんだから、もしかして。間違ってないのを間違ってたから訂正した、くらい言いそう。
ああ。もう最悪。
私はただ、仕事をして生きていきたいだけなのに。
親には頼れない。
なんとか抜け出して手に入れた一人暮らしを奪われるわけにはいかない。
仕事を代えるわけにはいかない。
やっと慣れてきたのに。

トイレにくらい立ったっていいじゃない。
それで誰もいないっていう状況が問題なんだから。
嫌がらせに、放置するんだったら、それは会社の問題でしょ?
私のせいじゃない。

とりあえず、じっと我慢して。
全部自分で、できるようになるまで。
経理は、そのうち外されるかもしれないけど。
葵さんと離れれるならその方がいいかもしれない。
精神衛生上よくないから。

係長の上は夕凪さんか。
夕凪さんになら相談できそうだけど。
どうしようかな。
でも、こんなことくらいで。
ずっと続くのかなコレ。
いやだなあ。

今までだったら、葵さんに聞けばすぐ教えてもらえた。
でも、今は。
そろそろ覚えてくれない?わかんなかったら、見て覚えて。
そう言われた。
もうどうしようもない。


気づいたら、仕事終わりに地下鉄に乗っていた。
もうくたくただった。
退屈だなんていってた自分をなぐりたい。
とりあえず、受付だけはしっかりやるようにしてる。
経理も、二重チェックして出してはいるけど、やっぱり、間違いがどうとかなんとか…。
ブッチョーに相談するのは違うきがする。
ただ、なんとなく、あの笑顔がみたいなと思っただけ。
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