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第1章
12・性別判断不能の君
しおりを挟む30分後……。
軽くシャワーを浴びさせてもらって、人前に出られるくらいに身なりを整えた私は、ジェラルドに食堂へ案内してもらっていた。
私にあてがわれたあの豪華な部屋は2階にあるのだが、どうやら食堂は1階にあるらしい。
階段を降りて長い廊下の突き当たりに、食堂はあった。
「こちらが食堂です」
ジェラルドの後について私も食堂に入る。
中には食事用のテーブルと椅子が並べられていて、シンプルながらも品の良い空間が広がっていた。
それにしてもこの神殿、本当に広いな。一度外から外観を確認してみたいものだ。
「エミール! エミールはいるか?」
「はい、ジェラルドさま。こちらに!」
ジェラルドに名前を呼ばれて奥から出てきたのは、金の髪を肩で切りそろえた女の子だった。
うわ、かわいーー! お人形さんみたい!
サラッとした金糸のような髪も、宝石のような翡翠の瞳も、まるで天使のようだ。
「神子様、こちら神殿騎士見習いのエミールです」
ジェラルドの紹介に、エミールさんがぺこりと一礼する。
「神子様、ニコラス様よりお話は伺っております。ボクはエミール・リースと申します。何かご不便があれば、お気軽にお申し付けください」
うわうわうわ! 一人称ボクなんだね! 透き通った声と儚い見た目に合ってて可愛い!
にこやかに挨拶してくれたエミールさんに、彼女に対する好感度がさらに上がる。
見た感じ私とそう歳も変わらないだろうに、騎士見習いとして働いているのか。偉いなぁ!
神様といい、ニコラスといい、ジェラルドといい、この異世界に来てから出会ったのは男性ばかりで、そろそろ女の子に会いたいと思っていたのだ。
美少女の登場に、どうしても私のテンションが上がる。
これはぜひお友達になりたい!
「初めまして、エミールさん! 私は立花葵。よろしくね! 同性だし、仲良くなれたら嬉しいなぁ……!」
握手をしようと私はエミールさんに向かって右手を差し出す。
しかし、私の手はパシっとはたかれた。
――え?
私の手をはたいたのは、エミールさんだった。
「え、え?」
まさかはたかれるとは思っていなくて、私はぱちぱちと瞬きを繰り返す。
だが、エミールさんはさらに信じられないことを言ってきた。
「ボクは、男だ」
……は?
彼女は一体何を言っているのだろう。男?
「そんなまさか。だって、こんなに可愛いのに」
私はエミールさんの顔を凝視した。
長いまつ毛に、透き通るような白い肌。
どこからどう見ても、天使レベルの美少女だ。
「ボクは、男だ」
「……そんな、まさか」
エミールさんが繰り返し告げてくる。
私の背後に控えているジェラルドに助けを求めるように視線を向けると、ジェラルドは静かに頷いた。
「神子様、神殿騎士団に女性はおりません。エミールは男ですよ」
「え、ええええええ……」
嘘でしょ……? エミールさんが男……?
にわかには信じられない。
女の私よりも、エミールさんの方が断然女の子らしくて可愛いのに……?
ショックで固まってしまった私を、エミールさん(くん?)はぴしっと指さした。
「ジェラルド様! この失礼な女、本当にルーチェ様に選ばれた神子なんですか!?」
「こら、エミール! 神子様に無礼なことをするな!」
「だって!」
言い合う二人の様子に、私ははっと我に返る。
え、じゃあ私、エミールくんにものすごく失礼なことを!?
男の子なのに女の子扱いされるなんて、嫌だっただろうし、怒られて当然だ。
って、ちょっと待って! 何故かジェラルドがエミールくんにめちゃくちゃ怒ってるし! いや、悪いのは私だから! なんでエミールくんが怒られているの!?
エミールくんとエミールくんの胸ぐらを今にも掴みそうなジェラルドの間に、私は慌てて割り込んだ。
「ご、ごごご、ごめんなさい! エミールくんがあまりにも可愛いから!」
「可愛いって言うな!」
「ご、ごめんなさい!」
ついうっかり本音が……。失言してしまった。
私はエミールの機嫌が治るまで、ひたすら謝ることになった。
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