【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那

文字の大きさ
14 / 75
第1章

11・騎士様は心臓に悪い

しおりを挟む

 遠くで、コンコンコン、とノックの音が聞こえる。それから、がちゃ、と扉が開く音。

 ――ああ、もしかしてお母さん?

 朝だからと、私のことを起こしに来てくれたのだろうか。

 ――学校に行かなくちゃ。遅刻しちゃう。

 私はゆっくりと夢の中から浮上する……。


 ◇◇◇◇◇◇

 
「……こさま。おはようございます。神子様」

「はっ!」

 涼やかな男性の声にはっとまぶたを開けて横を見れば、目の前にジェラルドがいた。
 ジェラルドはベッド横に膝をついているのだろう。ベッドに横になっている私と思ったよりも近くで目が合って、ついびくりとしてしまった。

「じ、ジェラルド……っ!?」

「はい。おはようございます」

 ジェラルドは私の顔を見てにこりと微笑む。
 お願いだから、びっくりするようなことをしないで欲しい。
 起きたらすぐそばにイケメンがいるとか、心臓に悪いから。
 
「お、おはよう……」

 私はゆっくりと体を起こすと、ジェラルドに挨拶を返した。
 心臓がいまだバクバクとものすごい速さで打ち付けてくる。
 鼓動を落ち着かせようと私が胸に手を当てていると、心配そうに眉をひそめたジェラルドがさらに私の顔を覗き込んできた。
 やめて、無駄にイケメンが眩しい。

「どこかお加減が優れないのですか? すぐに医者をお呼びいたします……!」

 まずい、なんだかデジャブを感じる。ジェラルドのこの勢いだと、本当にすぐに医者を呼ばれてしまうだろう。
 さっと身を翻しかけたジェラルドの服の裾を、私は慌てて掴んで止めた。
 
「待って待って待って……! 大丈夫! びっくりしただけだから!」

「そうですか……?」

 私はジェラルドを安心させるように、ぴょんとベッドから飛び降りた。

「……私、結構眠ってたんだね?」

 昨日の夕方に神様と話したあと、どうやら私は制服のまま寝てしまったらしい。色々なことが起きたせいで疲れていたのだろう。窓の外はもうすっかり日が昇っていて、綺麗な青空が広がっていた。

 目が覚めても、元の世界には帰れないまま。
 やはりこの世界は、夢ではないということか。
 
「ええ。神子様がお目覚めになられて良かったです。何度かお声掛けはしたんですが、昨日の夕方からずっと起きられないから心配で……」

「そ、それは心配かけてごめん……」

 確かに夕方からずっと、一度も目覚めることなく眠っていた。ジェラルドの心配は最もだろう。
 私が項垂れたその時、くぅ、と小さな音が私のお腹から鳴った。

 うわー! 馬鹿ー!
 こんなイケメンの前でお腹が鳴るとか恥ずかしすぎる!

「あ、あの、その、これは……」

 顔が熱い。自分の顔が赤くなっていることが、鏡を見なくても分かる。
 お腹を押えながらしどろもどろで話す私に、ジェラルドはくすくすと笑った。

「ふふ……。お腹が空きましたか?」

「…………はい」

 昨日は結局何も食べていないのだから、お腹が空くのは当然なのだけれど。何だかいたたまれない。
 少し顔を上げたときに見えたジェラルドの表情が優しくて、私は直視できずに顔を下げた。

「食堂にご案内しましょう。俺は外にいますから、身支度が終わりましたらお声掛けください」

 ジェラルドが静かに部屋を出ていく。
 私ははぁ、と息を吐き出した。

 こんな見た目も言動もイケメンな騎士様がしばらく近くにいるなんて、心臓がもたない気しかしない。

 
 

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

喚ばれてないのに異世界召喚されました~不器用な魔王と身代わり少女~

浅海 景
恋愛
一冊の本をきっかけに異世界へと転移してしまった佑那。本来召喚されて現れるはずの救世主だが、誰からも喚ばれていない佑那は賓客として王宮に留まることになった。異世界に慣れてきたある日、魔王が現れ佑那は攫われてしまう。王女の代わりに攫われたと思い込んだ佑那は恩を返すため、身代わりとして振舞おうとする。不器用な魔王と臆病な少女がすれ違いながらも心を通わせていく物語。

【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります

樹結理(きゆり)
恋愛
突然異世界に召還された平々凡々な女子大生。 勇者になれと言われましたが、嫌なので引きこもらせていただきます。 平凡な女子大生で毎日無気力に過ごしていたけど、バイトの帰り道に突然異世界に召還されちゃった!召還された世界は魔法にドラゴンに、漫画やアニメの世界じゃあるまいし! 影のあるイケメンに助けられ、もふもふ銀狼は超絶イケメンで甘々だし、イケメン王子たちにはからかわれるし。 色んなイケメンに囲まれながら頑張って魔法覚えて戦う、無気力女子大生の成長記録。守りたい大事な人たちが出来るまでのお話。 前半恋愛面少なめです。後半糖度高めになっていきます。 ※この作品は小説家になろうで完結済みです

【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?

エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。  文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。  そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。  もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。 「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」  ......って言われましても、ねぇ?  レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。  お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。  気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!  しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?  恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!? ※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。

引きこもり少女、御子になる~お世話係は過保護な王子様~

浅海 景
恋愛
オッドアイで生まれた透花は家族から厄介者扱いをされて引きこもりの生活を送っていた。ある日、双子の姉に突き飛ばされて頭を強打するが、目を覚ましたのは見覚えのない場所だった。ハウゼンヒルト神聖国の王子であるフィルから、世界を救う御子(みこ)だと告げられた透花は自分には無理だと否定するが、御子であるかどうかを判断するために教育を受けることに。 御子至上主義なフィルは透花を大切にしてくれるが、自分が御子だと信じていない透花はフィルの優しさは一時的なものだと自分に言い聞かせる。 「きっといつかはこの人もまた自分に嫌悪し離れていくのだから」 自己肯定感ゼロの少女が過保護な王子や人との関わりによって、徐々に自分を取り戻す物語。

男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~

百門一新
恋愛
男装の獣師ラビィは『黒大狼のノエル』と暮らしている。彼は、普通の人間には見えない『妖獣』というモノだった。動物と話せる能力を持っている彼女は、幼馴染で副隊長セドリックの兄、総隊長のせいで第三騎士団の専属獣師になることに…!? 「ノエルが他の人にも見えるようになる……?」 総隊長の話を聞いて行動を開始したところ、新たな妖獣との出会いも! そろそろ我慢もぷっつんしそうな幼馴染の副隊長と、じゃじゃ馬でやんちゃすぎるチビ獣師のラブ。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~

スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。 何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。 ◇◆◇ 作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。 DO NOT REPOST.

男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副隊長が過保護です~

百門一新
恋愛
幼い頃に両親を失ったラビィは、男装の獣師だ。実は、動物と話せる能力を持っている。この能力と、他の人間には見えない『黒大狼のノエル』という友達がいることは秘密だ。 放っておかないしむしろ意識してもらいたいのに幼馴染枠、の彼女を守りたいし溺愛したい副団長のセドリックに頼まれて、彼の想いに気付かないまま、ラビは渋々「少年」として獣師の仕事で騎士団に協力することに。そうしたところ『依頼』は予想外な存在に結び付き――えっ、ノエルは妖獣と呼ばれるモノだった!? 大切にしたすぎてどう手を出していいか分からない幼馴染の副団長とチビ獣師のラブ。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...