目指せ、婚約破棄!〜庭師モブ子は推しの悪役令嬢のためハーブで援護します〜

森 湖春

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三章

67 妖精と不幸な女の子①

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 今の彼女からは想像もできないが、六歳のペリーウィンクル・ルーは、不幸な女の子だった。
 馬車の事故で両親をいっぺんにうしない、その両親の葬儀の場で父方の祖父母から「おまえの母のせいで息子は死んだ!」とののしられ、父の元婚約者だという女性から平手打ちされたのだ。

 ペリーウィンクルの両親は、駆け落ち婚だった。
 春の国の貴族の家に生まれた父は、婚約者がいる身でありながら庭師であった母と恋に落ち、望まない結婚から逃げた。
 その結果生まれたのが、ペリーウィンクルというわけである。

 ペリーウィンクルは、何も知らなかった。
 仲睦まじい両親が世間から後ろ指をさされるような間柄であることも、祖父母がいることも、父に婚約者がいたことも。

 罵られ、ぶたれ、そうして彼女が学んだことは、すべての諸悪の根源は自分である、ということだった。

 両親を喪っただけでも不幸なのに、その両親の罪まで負うことになるとは。
 六歳の身には、あまりにもひどい仕打ちである。

 とはいえ、妖精であるヴィアベルが知ったことではない。
 左頰を真っ赤に腫らし、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにした子どもを見ても、「ふぅん」と眺めただけだった。

 数日経って頰の腫れが引くと、契約者の孫だというその子どもは、少しだけマシに見えるようになった。
 青紫色の髪は人にしては少々珍しく、角度によって色を変える目はブラックオパールのようにも見えて、眺めているだけでおもしろい。
 子ども特有のふわふわとした頰はマシュマロのようにやわらかく、たまに突つくと涙が止まるのがオモチャみたいで可笑おかしかった。

 けれど、毎日毎日飽きもせず「パパ……ママ……」と泣いてばかりいられるのは気が滅入る。
 数週間もたてば、頰をつついて泣き止ませるのも飽きてきた。
 その上、契約者はペリーウィンクルのことで手一杯で、茶会どころかお茶の時間に菓子を出すこともない。
 だから当然、ヴィアベルは怒った。契約と違うじゃないか、と。

「おい。茶会はどうした」

「すまないな、ヴィアベル。おまえの好きなハーブとチーズのクッキーを焼くと、あの子が泣くんだよ。あれはわしが娘に教えたレシピだから……」

 ヴィアベルが好んで食べるハーブとチーズのクッキーは、ペリーウィンクルの母もよく作っていたお菓子らしい。
 作ると母を思い出してペリーウィンクルが泣くから作れないのだと言われた時、ヴィアベルはそろそろ潮時かもしれないと思った。
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