乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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四章 一年目はるの月

42 はるの月14日、感謝祭⑥

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 お昼を告げる鐘が鳴る前に帰宅したイーヴィンは、そそくさとカゴを持ってキッチンへ向かった。

「シルキー」

 イーヴィンの呼びかけに、洗い物をしていたシルキーが振り返る。
 エプロンの紐に掛けていたふきんで手を拭きながら、彼は「なぁに?」と問うように優しげな微笑を浮かべて首を傾げた。

「えっと……あの、ね?その……ずっと言えないでいたんだけれど。この前、ファーガルが来ていた時ね、ばかって言ってごめんなさい。妖精であるシルキーに、私たち人間の常識とか押し付けるべきじゃなかった。今後は気をつけるから……でも、もしシルキーが嫌がることを私がしていたら、遠慮なく言って欲しいの。あなたとは、ずっと仲良く暮らしたいから」

 視線を合わせたり外したりしながら、イーヴィンはなんとか謝罪の言葉を告げた。
 本当は最初から最後まで目を合わせるべきだが、シルキーがどんな顔をするのか見るのが怖くて、ずっとは無理だった。

 だから、イーヴィンは気付かなかったのだ。

『妖精であるシルキーに、私たち人間の常識とか押し付けるべきじゃなかった』

 その言葉を聞いて、シルキーが傷ついたような表情を浮かべたのは、一瞬のことだった。

 イーヴィンの謝罪にシルキーは「大丈夫」と言うように彼女の頭を撫でた。
 見た目は女性らしくても、その手はイーヴィンのものよりずっと大きい。髪を撫で梳くような優しい手つきに、お兄ちゃんがいたらこんな感じなのかなとイーヴィンは思う。

「今日、感謝祭でしょう?私、プリンを作ったの。受け取ってくれる?」

 もっと撫でてと頭を押し当てながら、イーヴィンは甘えるように言った。
 言いながら、自分の声の甘さに彼女は驚く。

(こんな、女の子みたいな言い方、私も出来たんだ?)

 女の子が好きな人に媚びるような、甘えた仕草や声を出したことも驚きだが、なによりシルキー相手に自然に出たことがイーヴィンには衝撃的だった。

 弟たちが見ていたら、「姉ちゃん気持ち悪い」と言いそうだ。
 年頃の弟たちは、異性が気持ち悪くて仕方がない時期だった。そのうち好きになる時期がくるくせに面倒な、と思ったものである。

 シルキーはイーヴィンの声の甘さに気付いていないのか、感謝祭のプリンがあると聞いて頰を緩ませている。
 気持ち悪く思われないで良かった、とイーヴィンは安堵した。

(きっと、無意識にシルキーなら大丈夫って寄りかかってるんだわ。いけないいけない。甘えすぎて、また我慢させたくない)

 慌てて身を引くと、シルキーの手が撫でるものを探して宙を彷徨う。
 それを見て、勿体無いから戻りたいとイーヴィンは思ったが、すかさずプリンを手渡して誤魔化した。

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