乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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八章 二年目はるの月

92 はるの月10日、深夜の秘め事②

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 その次に向かったのは、リビングダイニングだ。
 整頓された室内にあった細々としたものを部屋にぶち撒け、それから家具という家具をひっくり返した。
 敷いていたラグはクルクルと巻いて、玄関近くに放る。
 ぐっちゃりとした室内を見て、シルキーの気持ちがまた少しだけ楽になった。

『ふぅ』

 ひと息ついて、次は納戸でも荒らそうかと踵を返した時だった。

 ーーコツン。

 イーヴィンの部屋から、物音がした。
 まるで窓に何かが当たったような、小さな音。だけど、妖精であるシルキーにはよく聞こえた。

『風か?』

 しばらく耳を澄ませたが、それ以上物音はしない。
 だからシルキーは、風が何かを舞い挙げてそれが窓に当たったのだろうと思った。
 再び八つ当たりに戻ったシルキーは、次なるターゲットを納戸に決めて、静かにゆっくりと廊下を歩いた。

 その時、再び物音がした。
 シルキーが歩く時に聞こえる、きぬ擦れの音じゃない。
 なにかが床に落ちたような、そんな音である。

 もしかしたらイーヴィンが起きたのかもしれない。
 シルキーは焦った。
 まだ気持ちが落ち着くまでには至っていないが、仕方がない。
 一刻も早く家中を元どおりにしなければと、彼はとりあえず廊下に散らばっていたゴミを急いで拾い集めた。

 ーードタン、バタン。

 イーヴィンの部屋から、物音が続いて聞こえてきた。
 扉を開けようとする音ではない。足踏みをするような音に、シルキーは首を傾げた。
 こんな夜中に、イーヴィンはタップダンスでもしているのだろうか。
 不思議がるシルキーが耳をすませると、二人分の声が聞こえてきた。

「はな、してっ」

 イーヴィンの尋常じゃない声に、シルキーの髪がブワリと逆立つ。
 続いて聞こえた見知らぬ声に、彼の思考は一瞬で沸点を超えた。

「断る」

「こんな夜中に夜這い?あんたってそんな人だったわけ?」

 イーヴィンの怒鳴り声が聞こえる。
 離して。夜這い。そんな人。
 思い至るのは、マキオという男の存在。
 そして、再び聞こえる“夜這い”という言葉に、シルキーは我を失った。

 意識という意識が、赤に塗りつぶされたような気分だった。
 こんな怒りを覚えたのは、初めてかもしれない。
 頭の奥が沸騰するような怒りを身に宿し、シルキーは動いた。

「夜這いじゃない。お前なんかにそんな気持ちになるわけがない」

「なんですって?」

 閉じていたイーヴィンの部屋の扉を力任せに開いた。
 メシャリと音を立てて金具が曲がったが、シルキーはそんなのお構いなしである。
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