乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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九章 三年目なつの月

102 なつの月13日、リアンの恋①

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 ゴリゴリ、ゴリゴリ。
 乳白色のすり鉢の中ですり潰した謎の粉に、人魚の涙を入れて練る。
 マカは、真珠色になった液体にホッと息を吐いた。

「よし。ここまでは成功ね」

 ここは、魔女の庵。
 魔女マカの自宅であり、職場である。
 決して、決して、喫茶店などではない。

「「はぁぁぁぁ……」」

 魔女愛用の大釜に背を預け、イーヴィンとリアンは示し合わせたわけでもないのに同じタイミングで深々とため息を吐いた。

「リアン……えらく深いため息じゃない」

「お前こそ」

 夕方の土手で友情を確かめ合う男たちのようにな雰囲気を醸し出しながら、二人はフッと笑った。
 やるな、お前。
 そんなセリフが聞こえてきそうである。

「仕方ないでしょー。いろいろあるのよ」

「分かるー」

 今度は頭の弱いギャルみたいな声で会話しだす二人に、マカはギィィと歯ぎしりしたくてたまらない。
 なんだ、この漫才コンビは。一体いつから、我が庵は劇場になったのか。

 まったり、のんびり、キャッキャ。
 処女に優しいユニコーンは、イーヴィンにだけお茶を渡す。
 リアンは待遇の差を気にすることなく、持ってきた水筒からお茶を飲んでいた。

「ねぇ、あなたたち。どうして、ここにいるのかしら?」

 マカのこめかみに、青筋が浮かぶ。
 彼女がキレたくなるのは仕方がない。
 だって、彼女は今、とても重要な薬を調合しているところなのだ。
 神経をすり減らして真剣に作業している目と鼻の先で、まったり茶を飲みながら鬱陶しくため息を吐かれたらたまったものじゃない。
 おとぎ話の悪い魔女のように、大釜で煮てやろうかしらなんて思ってしまっても、致し方ないだろう。

「どうしてって」

「ここ、涼しいんだもん」

 なにが、だもん、だ。
 呑気な返答に、マカは頭を掻き乱してキレたくなった。
 ユニコーンもユニコーンである。彼とマカの恋のための薬だというのに、その邪魔をしている女に茶を出すとはどういう了見だ。

「こんなところでウジウジしている暇があったら、さっさと告白してらっしゃい!」

 マカは床に座り込む二人に、ピシャリと言い放った。
 そんな彼女に、イーヴィンとリアンは二人揃って「だって」と呟く。
 アヒルのように唇を尖らせる二人に、マカは「チッ」と舌打ちをして、彼らの唇を摘まんだ。

「んむむむむ」

「んんーん」

「だっても何もありませんわ。さっさと告白して、お付き合いすれば良いのです。特に、リアン。あなたは男なのですから、きっちり決めるところは決めないと、ブラウニーが逃げますわよ?あぁ、そうですわ。ブラウニーが逃げられるように、彼女へ洋服をプレゼントしても良いかもしれませんわね」

「卑怯だぞ!」

「卑怯で結構ですわ。私は、薬を作りたい。あなたは、ブラウニーに告白したい。ならば、妖精に恋をする先輩として、少々面倒ですがお膳立てしてあげようと言っているのです」

 ツンとして言い放つマカに、リアンは悲鳴を上げた。
 ブラウニーという妖精は、シルキーのように家主を選んだり追い出したりはしない。
 追い出さない代わりに、見返りを求めるのだ。
 見返りは、ミルク一杯とかお菓子一つ程度なので大したことはない。
 だが、少々厄介なルールがある。
 贈り物を手渡してはいけない。
 服を贈ってはいけない。
 特に服は避けるのが無難で、上等な服を貰ったブラウニーは、自慢しに妖精の森へ帰ってしまうのである。

「面倒って言った!酷い!」

「男のくせに、ウジウジしているからですわ!とにかく、さっさと告白してしまえば良いのです。ダメだったら媚薬でもなんでもあげますから、腹を決めなさい!」

 ギャンギャンと騒ぐ二人を眺めながら、イーヴィンは思う。
 このひと月でいろんなことがあったなぁ、と。

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