乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

文字の大きさ
105 / 110
九章 三年目なつの月

103 なつの月13日、リアンの恋②

しおりを挟む
 まず、イーヴィンは約束通り、『妖精の言葉を理解する薬』を手に入れた。
 そのまま告白をするかと思いきや、初キスに恐れをなした彼女は、なんとシルキーから逃げるようになってしまったのである。

 シルキーの顔を見るだけで、動悸息切れ、気つけに欲情。あらゆる症状が溢れ出して、まともに声を出せなくなる。気づけば彼の唇ばかり注視してしまい、破廉恥だと自分を戒める日々。

 そんな時に、リアンから告白されたのだ。
 彼は、こう言った。

「実はオレ、好きなヤツがいるんだ」

 相手は、イーヴィン、お前なんだーーと続きそうな面持ちだった。
 彼にしては珍しく真剣で、イーヴィンは一瞬、ほんの一瞬だけ誤解して即座にお断りしそうになった。

「驚くなよ?相手は、その……ブラウニー、なんだ」

 正直なところ、イーヴィンは「リアン、お前もか」と思っただけだった。
 もっと言えば、やっぱりねとも思った。釣りをした時から思っていたのだ。リアンはブラウニーが好きなんだろうな、と。

「驚かないよ。だって、私はシルキーが好きなんだもの」

 イーヴィンにマカにリアン。彼女が知らないだけで、妖精に恋をする人間は意外といるのかもしれない。
 それとも、類は友を呼ぶとかそういうやつなのか。

 そんなわけで、イーヴィンは妖精に恋する先輩としてリアンにマカを紹介したわけである。
 意外にも彼女は面倒見が良く、リアンの恋を応援するために例の薬を分けてくれた。
 だが、リアンもイーヴィンもなかなか告白するに至らず、こうしてマカの庵を訪ねては傷を舐め合うようにグダグダとする毎日を送っている、というわけだ。
 失恋どころか告白もまだなくせに、なんの傷を舐め合っているのかは不明である。

 妖精を人間にする薬は、まだ完成していない。
 薬学を極めた魔女の手腕をってしても、すんなり出来るものではないらしい。
 マカの恋が成就すれば告白する勇気も出るかも、とこうして押しかけているのだが、まだまだ先は長そうだ。

「そうこうしているうちに、花の十代が過ぎていきそう」

 年齢はどうあれ、見た目だけなら若く麗しいシルキーに、老いたババァを押し付けるのは可哀想だろう。
 シルキーは良くても、イーヴィンがなんか嫌だ。
 リアンにしたって、ピチピチのうちはまだ良いが、うら若き乙女のように見えるブラウニーに老いたジジィは不似合いである。

(そうよ……あんな可愛らしい妖精さんに、ジジィを押し付けるなんて罪だわ)

 イーヴィンは、覚悟を決めた。
 ゆらりと立ち上がった彼女は、今はまだピチピチな若者であるリアンを、力強く見つめる。否、睨みつけた。

「ねぇ、リアン」

「なんひゃ、イーヒン」

 ムギュムギュとマカに頬を引っ張られながら、リアンが返事をする。

「告白、しよう」

「ひょふはふぅ?」

「そうよ。告白」

「あら、急にどうしたの?」

 リアンの頰を伸ばしながら、マカが「どういう心境の変化かしら?」と漏らした。

「シルキーにババァの私を押し付けるのは忍びないなって。それに……」

 イーヴィンは、シルキーが少しでも寂しくないようにする方法を思いついていた。
 それを実行するには、若くてピチピチしているうちじゃないと間に合わない。
 いつ完成するか分からない薬を待つより、よほど建設的である。

 思いついた名案に、イーヴィンはうんうんと頷いた。
 そして身勝手にも、リアンにこう告げる。

「決行は明後日。もしも出来なかった場合は、罰ゲームだから覚悟しなさい?」

「え、オレも?」

 女主人公であるイーヴィンが頑張るのだ。
 男主人公であるリアンが頑張らないでどうする。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

処理中です...