乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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九章 三年目なつの月

104 なつの月14日、告白の練習①

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 リアンに『互いの想い人に告白しよう』と宣言した翌日、イーヴィンは動物小屋にいた。
 目の前には、放牧の合図である笛の音を今か今かと待つウシとウマたち。
 しかし、動物たちには悪いが、イーヴィンにはやることがあった。

 ドキドキする胸を落ち着けるように、イーヴィンは深呼吸を繰り返す。
 ウシのマツダサンの前に立ち、ぎゅっと強く目を瞑って、手を差し出しながら一言。

「シルキーのことが、好きです。どうか、恋人にしてください!」

「……ンモゥ」

 愛情度マックスのマツダサンは、黒い目を優しげにすがめてひと鳴きした。
 前世で見た、お見合い番組を参考にしてみたのだが、どうもしっくりこない。「これじゃないな」と呟いて、今度はウシのオオタサンの前で跪いた。
 まるで騎士が姫君に忠誠を誓うような体勢に、オオタサンはフンスと鼻息を荒くする。

「シルキー、愛しています。私と、結婚してくれませんか?」

「モォォォォ」

 カッコつけた物言いに、オオタサンはお気に召したようだ。細い尻尾をブンブン振って、嬉しそうである。
 嬉しさのあまりベロベロと舐めようとしてくるオオタサンから逃げながら、やっぱりイーヴィンは納得がいかない。
 モアに借りっぱなしの恋愛小説を参考にしてみたのだが、筋肉ムキムキの青年が言うセリフは、彼女には少々違和感があった。

「毎朝、私のためにスープを作ってください……うーん、違うな」

「ブモゥ」

 ウシのカワダサンが、もう作ってるでしょと不満げに鳴く。

「だよねぇ。もう作ってるから、これは微妙だよねぇ」

 眉根を寄せて考え込んでも、なかなか妙案は思いつかない。
 そのうち、世の男性はこんなにもプロポーズに頭を悩ませているんだなぁと明後日の方向に思考が飛んでいく。
 ウマのイチゴウと練習を続けるも、やっぱり納得のいく告白が見つからなかった。

「あぁもう。ロマンチックにやろうとするのがいけないのかな?もういっそ、そのまんま伝えるべき?」

 カワダサンとイチゴウが、じゃあやってみてと鼻を鳴らす。
 彼らの応援を受けて、イーヴィンはウマのニゴウに向き合った。
 彼女のしなやかな首に腕を回し、ぎゅっと抱きつく。胸も首もシルキーよりもだいぶ逞しいが、まぁ練習だし良いだろう。

「シルキー、抱いてちょうだい。あなたが寂しくないように、たくさん子供を産んであげるから!」

 動物小屋にいる全ての動物が、イーヴィンに抗議するように一斉に鳴いた。いや、もしかしたら泣いていたのかもしれない。
 年頃のお嬢さんが「抱いてちょうだい」とは、明け透けすぎである。先程まで入っていた好きだの愛してるはどこへいった。

 だが、これこそがイーヴィンの思いついた名案だった。
 たとえイーヴィンが死んじゃっても、子供たちがいれば。代わりにはならないだろうけど、少なくとも絶望するほど寂しくはないはずだ。
 幸いなことに、イーヴィンの家系は多産である。現に、彼女には五人も弟がいた。

「ブルルルゥ」

 ニゴウが、ダメ出しをするように不満げに鳴く。

「コッコッコッコックルゥゥー!」

 ニワトリのカワダサンが、嫁はおかしいと異議を唱えるように鳴く。
 ニワトリまでも不満げに鳴くものだから、イーヴィンは挫けそうだ。どうすればいいのよと頭を抱えてーーどうしてニワトリの声がするんだと顔を上げる。

 ここは、動物小屋だ。動物小屋はウシとウマの寝床で、ニワトリにはニワトリ小屋がある。だからここにニワトリがいるはずがない。
 おかしいなと振り向いたイーヴィンは、目に入ってきた光景に泣きたくなった。

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