勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、思考が停止

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「何ともまあ――貴族社会は難しいものだ。
 本当に災難だったな、ガリウス」
「まったくだ」

 直接事情を話した俺に対しスコットは同情を含めた視線を返し首肯する。
 皆を交えたあの会談の後――
 俺達はイシュガルド子爵への挨拶と承諾もそこそこに開拓村まで緊急転移した。
 何故ならじっとしていれば、第二第三のルリが現れないとも限らないからだ。
 この事に関しては俺の見通しが完全に甘かったと言わざるを得ない。
 賢皇リヴィウスの覚えが良く、戦場で名声を馳せた俺を目当てに言い寄ってくる貴族の子女はこれからもきっと増えるだろう。
 ルリはどちらかといえば紳士(淑女?)的なアプローチだったからまだいいが、中には既成事実を築くべく下着姿の娘を寝室に潜り込ませてくる輩もいる世界だ。
 警備の固いいつもの上級騎士宿舎とは違うので、そういった押し掛け騒動へ用心を払うに越した事はないに違いない。
 幸いスコットら村の住人へは魔導具を用いた魔導伝報を事前に打っておいたので問題はない。
 村外れにある森林内に用意してもらった小屋へ、夜逃げよろしく転移(と)ぶ俺達。
 以前にも述べたが長距離転移は若干のズレが生じやすく危険だ。
 しかしリアと術式補助に回ったノスティマ(ラナ)の転移構成は完璧で、寸毫の狂いなく小屋内部へと転移出来た。
 まったく頼りになる仲間である。
 そんな俺達を迎えてくれたのは村長にして今や領主代行代官であるスコットだ。
 携帯型魔導照明に照らされた読み掛けの書類を放り出すやいなや、自ら案内役を買って出てくれたのだ。
 使いの者を出してもいいのに自らがわざわざ出向き応じる。
 この男のこういうところは幾つになっても敵わないな~と思う。

「――と、まあこんな感じだった訳だ」
「やはり面倒なものだな、貴族の付き合いは。
 私も隣合う領地の方々へは挨拶回りで伺ったがね――皆一癖も二癖もあったよ。
 幸いお前さんの名声もあるから煩い事は言われなかったが」
「そういうこと(雑事)には、じゃんじゃん俺の名を利用してくれ。
 ……あまり実感がないんだがなぁ」
「おやおや。
 お前さんの名声は、今や飛ぶ鳥を落とす勢いなんだぞ?」
「そうは言っても中身が伴わないからな。
 それに名声なんて時が過ぎれば忘れ去られるものだろう?
 虎や獅子と違って毛皮になって残る訳じゃあるまいし。
 だったら鮮度の良い内に精々上手く扱ってやってくれ、って感じだな」
「はは。確かにガリウスらしい」
「ところで――なんでスコットが迎えに来たんだ?
 別に迎えが来なくとも勝手に赴くのに」
「いや――お前さんらが当惑するんじゃないかと思ってな」
「当惑?」
「そう……しばらく顔を出さなかったろう?
 だから驚くのさ、その変容振りに」
「変容って……そんな開拓村ごときで大袈裟な」
「ほら、その認識が既に誤っている」
「え?」
「ここはもう開拓村NO:12という名称じゃない。
 王都の英雄ガリウスが治める男爵領――否、もうすぐ子爵領か?
 その本邸がある箇所だぞ?
 さらにこの最果ての地域の流通を司る動脈でもある。
 ならばどうなるか――その結果がこれだよ」

 この男にしては珍しい悪戯めいた顔で、夜闇の深い森を抜けた瞬間に魔導照明の光量を最大にする。

「お、おっさん……ここって!?」
「きゃうん!?」
「ん。言葉が出ない」
「実に見事でござるな」
「確かに凄まじいものだ」
「こ、こんなに発展してしまうなんて……」

 直接ここに訪れた事の無いラナ以外のメンバーがぽか~んとした貌を浮かべる。
 だってそれはそうだろうよ。
 かつて疎らに点在していた村の住居は、区画整備された石畳に沿って理路整然とした威容を誇り、休むことなく稼働している巨大な風車を囲んでいる。
 中心部には露店と思しき店構えが数多くあるだけでなく、夜遅いというのに未だに開店している酒場もある。
 村の周囲を轟々と広い堀が巡り、川には輸送用の船が幾艘も停泊している。
 何より極めつけは小高い丘の上に建造されている見慣れない邸宅だ。
 三階建てのそれは堅牢でありながら華美な装いを兼ねた豪奢な建物である。
 小生意気にも庭園を備えているだけでなく、館の主の性格を反映したかのように畑や果樹園まで兼ね備えている。
 脇にある大きな石蔵は緊急時の住民避難所兼備蓄庫なのだろう。
 それにしたって――変わり過ぎだ。
 単純に家の個数を家族込みでカウントすると千人は超えている計算になる。
 これはもう【村】の規模ではない。
 間違いなく【町】の規模に匹敵する。
 恐らく急造魔導建築などに長けた土妖精らの力を借りてはいるのだろう。
 しかし僅か数か月程度でここまで発展させるなんて……
 俺達の知る開拓村の姿とかけ離れた姿に頭がついていかずフリーズする。
 そんな俺達をしてやったり、とばかりに誇らしげな笑みを浮かべるだけでなく、スコットは大袈裟に手を広げ上品な一礼と共に迎えの口上を述べる。

「ようこそ、領主様に婚約者様方。
 猫神の祝福を受けし最果ての地――ノーザン領へ」




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