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おっさん、完勝する
しおりを挟む「有翼一体に竜頭一体!
――計二体の襲撃だ!」
「体色は有翼黒に竜頭が緑!
各自に鉤爪と尻尾あり!」
「目視確認――【鑑定(アナライズ)】終了。
有翼悪魔ザルバードと竜頭悪魔ラグナカングと判明!
突風攻撃とブレスに注意!」
「「了解!」」
突然の襲撃にも慌てる事無く――俺達は瞬く間に臨戦態勢を整える。
動体視力に優れた俺が視たままの情報を宣言。
シアがその補足を行い、複合型鑑定スキル持ちのリアが襲撃者の正体を判明――
丸裸に仕立て上げる。
この辺の連携は手慣れたもので、指示を出さずとも最早阿吽の呼吸で行える。
本来の流れならこの後、フィーの祝祷による法術サポートが入るのだが……
生憎と未だトランス状態の為それは叶わない。
だが支援がない事を嘆いても仕方あるまい。
むしろ無防備な姿を晒すフィーが神と直結しているこの結界内ではダメージを受けないという状況に感謝しなくては。
意識を切り替えた俺は突如闇夜から舞い降りた二体の悪魔の動向を窺う。
おそらくこの街に潜む十三魔将――魔神と契約を結んだ配下に違いない。
奴等魔神はそういうところが本当に狡猾なのかあるいはポリシーがないのか――
同じ異界の輩同士、たまに手を組んでくるのだ。
まあこの琺輪世界に破滅を齎す為なら、奴等は何でもしてくるだろう。
それが故に教会だけでなく――この世界に生きる、ありとあらゆる存在から敵視されるのだから。
けどこの協力関係自体は今まで大きな問題になってはいなかった。
何故なら、哀しい事に所詮は異なる思考形態同士――
時間が経つと勝手に仲間割れに発展し自壊していくからだ。
ただ――使い捨ての場合はそうはいかない。
争う間もなくピンポイントで戦力を投入し叩き付ける。
強力な手駒を喪う覚悟さえ厭まなければ実に効果的だ。
精霊都市に潜む魔神の正体は知らないが――
中々に嫌らしい一手を打ってくるといえる。
おそらくここで星読み――神託を邪魔すれば時間が稼げると判断したのだろう。
幸いなことに、教会を霊的にも物理的にも護る防御障壁はどこであろうとかなりのものなので、奴等悪魔も青息吐息状態だ。
侵入を果たす為、持てる力のかなりを削がれているに違いない。
ならば先手必勝――速攻を仕掛けるのみ。
目線でシアとやり取りした俺は有翼悪魔ザルバードへ駆ける。
シアは勿論もう一方の敵、竜頭悪魔ラグナカングへ向かう。
迫る俺に対し背中に生えた翼をはためかせ収束させるザルバード。
リアが指摘した、お得意の突風攻撃だ。
油断すれば身体ごと持っていく風速の前には踏ん張りなど何も意味を為さない。
間近に迫った戦士を跳ね除けるには最良の手段だろう。
しかし唯一、俺相手には悪手だった。
「こんなこともあろうかと」
左手を突き出しスキルを発動させた俺。
身体目掛けて叩き付けられるように吹き荒れる突風、そのものを収納していく。
何の付属効果もない突風など、収納スキルの前にはそよ風に等しい。
無論たまに毒を混ぜたりする輩がいるので慢心は禁物だが。
自慢の突風が効かない事に驚いたのだろう。
覆面のように表情の乏しい顔が見開かれる。
慌てて回避に移ろうとするが――遅い。
その時には既に【高速詠唱】スキルで準備を終えたリアの魔術が発動していた。
「雷撃の霞網【ライトニングバインド】!」
身を焦がす雷が細かい網となりザルバードを捕らえ、その場に引き留める。
動けば電撃によるショックと刃型電網による斬撃の二重奏。
高位魔術師の得意とする束縛系魔術だ。
勿論この隙を黙って逃すほど俺は甘くない。
「魔現刃――【裂空】!」
室内の為、炎系の魔現刃は延焼の恐れがあり使えない。
なので意趣返しとばかりに切断力特化の風刃を発動。
動けないザルバードを一刀両断する。
少し離れてラグナカングを相手にするシアはもっと酷かった。
ブレスを吐こうとした瞬間を狙った氷結の【魔法剣】の顕現。
斬撃と魔力属性を兼ねた【魔法剣】は固有の魔力抵抗を打ち破りやすい。
更に俺とは桁違いのその出力により、魔力抵抗に優れた悪魔であるラグナカングは一瞬にして氷像となる。
そこへ間髪入れず襲い掛かるリアの魔力弾。
この二連撃の前にさすがの悪魔も形無しだ。
木っ端微塵に砕け散り消滅していく。
反撃の余地すら残さない――
不意打ちを物ともしない俺達の、完全勝利だった。
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