勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、溜息を零す

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「ようこそ――ガリウス様にリア。
 お待ち申し上げておりましたわ」

 ガラス張り天蓋の大広間。
 夜の帳が下りた漆黒の闇。
 仄かな星明かりが微かに陰影を浮かび上がらせる、そんな淡いモノクロームが映し出す残影の中―― 
 入室した姿を認めたのだろう。
 中央に佇む影が俺達を捉え、優雅に一礼をする。
 声を聞くまでもない。
 暗視スキル持ちの俺の眼には、肌も露わな薄絹のヴェールを纏ったフィーの裸身が視えている。
 豊満な肢体を申し訳なさそうに隠すその姿。
 見ようによっては情欲を駆り立てる扇情的との印象を受けるかもしれない。
 しかしそれは間違いであると断言できる。
 神事に臨むフィーのその厳かな表情。
 隔絶した美を讃えたその貌は決して疚しさを見る者に感じさせない。
 むしろ人の領域を逸脱しているかのような畏れすら感じるだろう。
 これが初めてではない俺達は彼女を囲むように要所へ動く。
 既に定位置にいて真剣な顔をしているシアに倣い、リアと二人で△を形成。
 それを見届けたフィーはその場に跪き祈りを捧げ始める。
 星読みの間。
 それは実在する神と対話し恩寵を賜る場である。
 疑似的に神の領域に近付けた場を形成し、然るべき時間と資格のある者なら神秘を意図的に宿らせることが可能となる。
 依り代になるのは無論フィーだ。
 教団でも片手に余る者しか出来ないこの最高難度の祭事を、聖女であるフィーは苦も無く執り行う事が出来る。
 才能ですらない。
 いかに神の恩寵を授かったか。
 その露骨な愛の差がここでは露呈される。
 俺は溜息を零すと盗賊ギルドの使いから貰ったばかり情報を手にする。
 今は儀式に専念しなくてはならない。

「刻限になりました。
 それでは【検索の儀】を始めましょう――」

 衣擦れの音と共にフィーが厳かに告げる。
 次の瞬間、フィーの身体が金色の光に包まれる。
 このトランス状態に入った時より彼女という個は消え、大いなる存在と直結。
 ありとあらゆる質問へと応じる事が可能となる。
 ただ曖昧な質問それだけでは漠然とした答えしか返ってこない。
 また検索に掛けられる数と時間も限度がある。
 そこで俺達はその範囲を狭める為に情報を調べてきたのだ。
 生きた検索機と化したフィーなら正答を導いてくれる。
 俺達は結界であり力の循環を意味する正三角形の位置から彼女へ言霊を投げる。
 時間も質問回数も限られている。
 まずは俺からだ。

「戦士ガリウスが問う――
 精霊の住まいしこの都市に潜む脅威、此(そ)は何(なん)ぞ」
「此は迷宮なり。
 数多の命を飲み込む混沌の魔窟なり」
「賢者ミザリアが問う――  
 ではこの世界の理に縛られぬ脅威の輩、此は何ぞ」
「此は魔神なり。
 異界より悪しき情念を以て侵攻する禍々しき者共なり」
「勇者アレクシアが問う――
 さすればその件の輩、此は何処にいて何を為すものぞ」
「此は鏡像。
 全てにおいて偽りを為すもの。
 瑠璃色の仮面を纏う邪悪の化身なり。
 汝、我が寵愛を受けし者――困難に立ち向かう者達よ。
 彼の邪悪なるものは既に――」

 正鵠に迫る、核心の答えがフィーの口から導かれようとしたその時――
 ガシャン! ガシャン!
 やっぱりというかお約束というか。
 耳をつんざくような破砕音と共に――
 天井のガラスを打ち壊し、何者かが襲撃を掛けてくるのだった。



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